第233話 まずは慣れた釣りからです

 土曜日。

 朝6時に集合して先生の車に乗って、久しぶりの水戸浜へ。

 ここは近いけれどいかにも田舎の浜という雰囲気でなかなかいい。

『トイレが遠くて綺麗で無いのが唯一かつ最大の欠点』だそうだけれど。


 無事到着してちょうど撤収中の夜釣りの人と入れ替わり、先っぽのテトラ横の一番いい場所をキープ。

 僕はお約束の投げサビキをちょいっと投げ。

 大体いい場所に落ちたかな。


 彩香さんや美洋さんも同じく投げサビキ。

 未亜さんはテトラと境部分をちまちまオキアミ着けた仕掛けで攻めていて。

 先輩は何か不明なエサでちょい投げだ。

 先生は無人島でもやっていたカゴ釣りだ。


 朝、ちょっと日差しが強くなってきたなと思う8時くらいから一気に釣れ始めた。

 サバ、サバ、サバ、サバ……

 まずサビキ組にサバがひたすら当たり出す。


 個人的にはこの20センチくらいの小さいサバは大好物だ。

 これを3枚に下ろして半生くらいのしめ鯖にすると最高。

 小さいから骨を気にせず食べられるし、皮もそのままで大丈夫だ。

 これを寿司みたいに御飯に載せるとたまらない。


 そして先生が黒っぽいやや大型の魚を上げる。

「アイゴと言います。ヒレに毒のあるトゲがあるし扱いを間違えると匂うけれど、本当は美味しい魚なんですよ」

 先生はそう言って、ハサミでトゲを取り内臓を出して、バケツの水で洗ってクーラーボックスへ。


 そして次のフグは流石にリリースして。

 そして次もアイゴ。

「本音は青物来て下さいなんですけれどね」

 と先生はいいながらハサミで処理してやっぱりキープ。


 そして竿に反応が無い先輩が仕掛けを変えた。

 ウキをつけてウキ下も長い仕掛けに変更。

 思い切りよくぶん投げる。


 なお、未亜さんはちまちまと色々釣っている。

 ベラらしいの数種、カサゴっぽいの数種、タカノハダイ……。

「このままでは1人五目はおろか、十目くらいは行きそうなのです」


 そしてサビキ組はお祭りの最後にイワシが混じった後、沈黙の時間に入った。


「こういう時こそ新兵器なんです」

 美洋さんがバックの中からプラスチック製の器具を取り出す。


「これをエサバケツにつけて、ここにアミエビ入れて、仕掛けを通して……」

 なるほど、アミエビを直接針につける為の道具か。


「トリックサビキという方法ですね」

 先生がそう解説。


 美洋さんはその仕掛けを竿の届くぎりぎり遠くに投げずに静かに落として。

 そしてでっかいスプーンのような道具でエサバケツ内の、アミエビ混じりの海水を仕掛け付近に捲き始めた。


「これでエサの匂いにつられて来ないかな」


 積極的に手前に魚を寄せて、アミエビをつけたサビキ仕掛けで釣ろうという考えのようだ。


 そして。

 撒いて様子を見て、撒いて様子を見てを数回繰り返して。

 動きの速い魚群が近くにやってきた。

 上から見ると黒く細い感じにうつる魚だ。

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