第231話 ベジョータ笑うな!
彩香さんを中心にして、両端に僕と亜里砂さんという感じで寝る。
そのちょっと前に亜里砂さんが。
「耐えきれなくなったら一時的に私の部屋を使っていいのだ。ティッシュも用意してあるのだ」
等と余計な親切?を言っていたけれど。
寝てすぐ横が彩香さんというのは合宿でも時々あった。
それでも同じ布団だとまた全く違う訳で。
何せ体温とかもそのまま感じそうだ。
「実は夏合宿終わった後、凄く寂しかったんです。皆と一緒にわいわいやっていたのに、寮の個室に戻って1人暮らしになって。授業が無いから誰とも会わないしで。だからこのお泊まり会、楽しかったし凄く嬉しかったんです」
なんて彩香さんは言っているけれど。
ちょっと動けば触ってしまう位近い距離で、僕は固まっている。
亜里砂さんはこの状況をわかっていて笑っているのかなと思うけれど。
「感じるけれど、彩香は随分悠を信頼しているのだな」
「学校に入って最初からずっとお世話になっているし。ATMでお金を下ろす方法もわからなかったから」
そんな会話も半分くらいしか耳に入らない。
いや、でも始めて同じテントで一緒に寝た時もこんな感じで緊張したな。
だからきっと少しすれば慣れるし静まる。
そう、大丈夫。
そう自分に信じ込ませている時に。
「悠君静かだけれど調子悪いの?」
彩香さんにそう言われてしまった。
「いいや、大丈夫」
無口だったり調子が悪かったりする理由をここで言う訳にはいかない。
亜里砂さんには全部聞こえているだろうけれど。
それでも彩香さんには言えない。
「何なら手を繋いでみようか。こういう時で無いと出来ないし」
彩香さんの手が僕の手に触れる。
一瞬ビクッとして。
そして何気ない感じで手を握り返す。
あくまで何気ない感じで、軽く。
「ワフフフフフ」
「亜里砂、どうしたの?」
亜里砂さんが笑いを堪えきれなかったようだ。
身をよじって笑っているのがベッドの動きでわかる。
さてはベジョータ、僕のこの葛藤を全部読んで楽しんでいるな。
全く!
そしてベジョータが体をよじった関係で、彩香さんがちょっと僕の方に移動。
固まっている僕と思い切りくっつく訳で。
「いや、何でもないのだ、はははははははは……」
ベジョータ、完全に笑いが止まらない様子だ。
勘弁してくれ、色々と。
今僕がかいている汗は冷や汗か脂汗か。
匂わないよな、大丈夫だよな。
彩香さんには色々気づかれていないよな。
ベジョータはまあしょうがないけれど。
そんな色々含めて。
僕の長い長い夜が始まった。
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