第226話 明日が来る前に

「何かそれだとさ、僕みたいな一般人は何の能力も無くて悲しいな」


「実際はそう簡単でも無いのだ。余分な能力はその分色々負担になる事も多いのだ。悠は日本みたいな寛容で緩い世界に生きているから気づかないのだ」

 そう亜里砂さんは言う。


 確かにそうだな。

 さっき安全じゃないとか考えたのを思い出した。

 日本が寛容で緩い社会かどうかは別として。


「ただ、私自身は割とお気楽に生きて来れたから問題は無かったのだ」


 そうなのか。

 表層思考だだ見えなんて結構大変だと思うけれど。


「私の場合、この魔法は遺伝なのだ。母にそれなりに注意されて育ったし、再婚した父は元々そういう偏見がまるで無い人間だったのだ。

 それに決して使い勝手がいい魔法や能力ばかりでも無いのだ。結局、勉強が出来るとかスポーツが得意だとかの方が便利だし汎用性があるのだ」


 夢も希望も無いような事を亜里砂さんは言う。

 でもそれが現実なんだろうな。

 それもわかる。


「まあその辺は別として、明日は縦浜駅方向を中心に攻めるのだ。そしてちょっと今日は悠に負担をかけたから、明日は場所を変えて適宜スマホで連絡を取るのだ。東急ハンドとかヨドガワカメラとか、悠が時間を潰せるスポットも色々あるのだ」


 あ、それはいいなと思って気づく。


「でもそれだと彩香さんのスマホが使えない。それ、僕のスマホからデザリングかけているから」


「わかったのだ。私のスマホでデザリングかけて繋いでおくのだ」

 それなら心配無いか。


「えー。悠君、別行動なの」

 彩香さんはちょっと不安そう。


「悠は悠で見たい場所が色々違うはずなのだ。大丈夫、3時間区切りくらいで合流すればいいのだ」


 亜里砂さんありがとう。

 時速200メートルの時、相当疲れたのを気にしてくれているのかな。

 とりあえずありがたい。


「そんな訳で、悠は悠なりに明日の計画をたてておいた方がいいのだ。明日も10時にここを出て歩いて行く予定なのだ」


 という事で。

 取り敢えずスマホで簡単に調べる。

 うん、土地勘無いからよくわからない。

 取り敢えず東急ハンドに行って、後は考えよう。

 というところで。


「それではそろそろ眠いので寝るのだ」

 という訳で就寝時間。

 そして僕はカーテンも壁紙もベッドカバーも布団カバーも女の子仕様の部屋で。

 またしても眠れない夜を迎える。

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