第219話 振り向くな!

 寝るのが遅かったせいで朝も遅い。

 それでも7時には起きて、リビングでニュースをぼーっと見ていると。


「おはようなのだ」

 亜里砂さんが起きてきた。


「おはよう」

 と返事をかけて、そして慌てて向こうを向く。


「亜里砂さん、せめてもうちょっとちゃんと服を着て下さい」


 パンツにタンクトップは無いだろう。

 パンツと言ってもズボンのことでは無い、この場合は。

 タンクトップの下もブラしていないの明らかだ。

 布地に突起部分見えている。


「ここは私の家だから問題は無いのだ。大体中学1年でそんなに男女差がある訳でもないのだ」


 きっとそれは正論だけれども、同年代の男子のことも考えて欲しい。

 僅かな男女差こそが重要かつまずいのだ。


「彩香さん、起きているなら何とか言って下さい」

「遅くまで色々話をしたので多分なかなか起きないのだ」


 つまりこの状況で放置は確定と。

 仕方ない。

 目を逸らしたまま過ごすとしよう。

 ならば。


「何なら朝御飯、作りましょうか」

「彩香が起きたらやりたいと言っていたのだ。だから料理は待っているのだ」

 キッチン部分に逃げる案、失敗だ。


「諦めるのだ。水着だと思えば大した事は無いのだ」


「水着じゃ無いでしょうが」

 とは言わない。

 言わなくても亜里砂さんは充分わかっている。


 だから諦めてパソコンを起動。

 ニュースサイトでも見ることにする。


「今日はどんな予定ですか」

「彩香が都会っぽい街を未体験らしいのだ。だからこの辺りのショッピングモールとかを歩き回るのだ」


 なるほど。


「確かに楽しいかもしれませんね」

「施設内を歩く分にはクーラーが効いているから涼しいのだ」


 なるほど、そう言われればそうだな。


「取り敢えず今日はキングズスクエア方面を目指して、桜本町から戻ってくるのだ。明日は逆に縦浜駅方向を攻めるのだ」


 なるほど。

 という事は。


「縦浜駅はここから近いんですか」

「12分程度なのだ。でも途中からビルの中に入るので、その辺は快適なのだ」

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