第204話 帰路は順調です

 朝。

 何となく皆、早朝明るくなった頃に起き出してくる。

 名残惜しいがこれでこの島ともお別れだ。


 適当に散歩したり、食事を作ったりして。

 最後の朝食は焼き魚定食刺身付き。

 食べた後、遂に帰投開始。

 家を上に浮かせる。


「家を置いていた場所、草の色が変わっているけれど大丈夫だよね」

「今日明日で色も元に戻ると思いますよ」

 なんてやりとりの後、家が動き出す。


「風の向きがいいから2時間ちょっとで到着かな」

「なら急いで荷造りをするのです」

 という訳で。

 冷蔵庫まででお土産の山分けが開始された。


「基本半分ずつでいいよな」

 と朗人先輩が言う。


「でも深草の方が人数少ないですから」

 そう僕が遠慮したのだけれど。


「加工に携わったのは深草の方が多いと思う。何せうちの連中、料理をしないから」

「それは残念ながら事実なのです。だから半分ずつが正解だと思うのです」


 朗人先輩と佳奈美先輩からそういう回答が返ってきた。

 という訳で基本は半分ずつ。


 何せ元々700リットルある巨大冷凍冷蔵庫の満載近い量がある。

 自然、荷物もえらい事に。


「箱は3個は作らないと持ち上げることが出来ないぞ。あと、緑マークのタッパーは全部回収」


 そして干物も深草持ち帰り分はラップできっちりくるむ。

「干物は酸化しますからね。きっちり包むか冷凍するかしたほうがいいです」


 サクの冷凍、丸魚の冷凍と冷蔵、味噌漬けの冷凍と冷蔵、南蛮漬け冷蔵、上げた小魚冷凍と冷蔵、干物各種の冷凍と冷蔵、七橋先生お土産用冷蔵……

 それぞれ冷凍と冷蔵の箱を2個ずつ作って。

 更に冷凍の箱は彩香さんの魔法でマイナス60度まで急冷して。

 お土産用段ボールが何とか完成した。


「これ持ち上げると腰に来ますよ」


「ある程度以上運ぶのは台車が必要だな。今日は先生の車に入れて貰って、彩香に氷柱でも作って貰って中に入れておくか」


「日陰に車を停めて、ブルーシートで覆いでも被せておきましょう。色が濃いから放っておくとあの車、すぐに暑くなるんです。


 なんて話しているうちに。


「伊豆半島が見える。もうあと30分以下」

 なんて声が聞こえてくる。

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