第197話 男性陣の悲哀

 夜11時過ぎ。

 やっと一通りの作業が終わった。

 秋津の方もほぼ同時に終了したようだ。


 なお同時に終了したのは偶然では無い。

 10時過ぎから朗人先輩や草津先生が色々手伝って、この時間で終わるように調整していたのだ。

 本気の朗人先輩や草津先生にかかれば、大きいカツオだろうが鯛だろうがささっと難しさを感じさせないくらいスムーズに捌いてしまうから。


「かまぼこを食べてみたいのです」


「あれは明日の朝、冷蔵庫で冷えて馴染んでから食べて下さい」


 そしてこっちもカツオを蒸したりツナ缶風味にしたりサクのまま冷蔵庫へ入れたりが完成した。

 更にアンチョビ予定の魚は塩を振って巨大タッパー2個にぎっちり詰めてある。


「これはどれ位で食べられるのでしょうか」


「このまま1月冷蔵庫で放置し、洗って塩を取ってオリーブオイルに漬け込んで1月ってところですね」


「そんなにかかるんですか」


「本来が長期保存用ですからね」


「やっぱり揚げて南蛮漬けがちょうどいいかな。骨を取らなくてもいいし」

 そんな感じで。


 後片付けが一通り終わった段階で、女性陣は風呂へ。

 そして朗人先輩、文明先輩、僕の3人でキッチン片付け第2弾が始まる。

 これは大広間を構成するうちの1室が干物等用に閉鎖された影響だ。


 狭くなった分、寝るスペースが敷布団が一部重なるぐらいに狭くなった。

 そして寝ていると右も左も女の子。

 運が悪いと抱きつかれたりする。

 この環境では眠れない、と昨日よくわかったからだ。

 そんな訳でキッチンの床までしっかり拭き掃除をして、布団3つを運び込む。


「まあ明日も4時起きだろうし、明後日で合宿終わりだしな」


「その分夏休みの食糧調達に必死な人もいますけれど」


「うちもだな。奨学金だけだと結構厳しいからさ」


 そういう環境もほぼ同じらしい。

 中学高校ちがうけれど色々と共通している事が多い。

 男性陣が微妙に虐げられているところも、それを女性陣が気づかないところも。

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