第193話 漁獲の多くは保存用行きです

 本日は深草がすだて漁の番。

 よって獲れた魚を捌くのも深草うちの皆さんだ。


「スズキや黒鯛が大漁なのですけれど、これも干物や保存食に出来るのですか」


「そこそこ持つ魚だからサクにして冷凍でもいいのですけれどね。何なら干物にして燻製までしてから冷凍保存してみましょうか」


 そんな訳で。

 普通に魚を捌く組と、チャレンジングな準備をする組とに別れる。

 彩香さんと美洋さんがチャレンジ組に志願した。

 だから僕と未亜さん、そして川俣先輩は普通に捌く組。


 この合宿で何度も魚を捌いているので、もうかなり慣れてきた。

 ウロコ取って洗って内臓取ってと、何か機械的に手が動く。


「ここまで獲れると昆布締めとかもしたいよな。用意してくれば良かった」

 なんて先輩が言って。


「待てよ、味噌漬けとかなら出来るよな」

 なんて自問自答した後。


「よし決めた。半分は西京味噌風味と行こう!」

 なんて提案をしてくる。


「それならどうすればいいですか」


「3枚なり5枚なりにおろすところまでは同じ」

 そう言うので取り敢えず未亜さんと魚をおろしまくって。


「この大漁だと4分の1を刺身用に取っておけばいいだろう。残りは西京味噌につけて、4分の1は合宿で食べて残りは冷凍といくか」


 なんて言いながら。

 先輩が味噌と味醂、蕎麦つゆを目分量で混ぜている。


「本当は白味噌を使うんだけどな。用意していないから普通の味噌で代用。その分ちょっと味醂多めでゆるめに解くと」


 うん、色々と疑問が。


「毎回不思議なんですけれど、何で先輩がインド風だけで無く欧州風とか和風のレシピを色々知っているんですか」


「昨年1年の活動実績があるからな。それに料理は好きだし」


 そんな事を言いながら、大型タッパーに味噌、キッチンペーパー、魚という感じで敷き詰めていく。


「キッチンペーパーより習字用の半紙とかの方が雰囲気なんだけれどな。まあちょっとくっつくがこれでいいや」


「何で直接魚に味噌を付けないんですか」


「砂糖入り味噌なんてすぐ焦げるからな。この方が後で便利だし上品な味になる」」


「これは何日かこのまま置いておくんですか」


「5日以内に食べるなら冷蔵庫にそのまま、それ以上先なら冷凍庫に直行。1日目から食べられて3日目が一番美味しい。4日目以降は固くなる。経験談だけどさ」


 そんな感じで巨大タッパー3個分作って。

 1つは冷蔵、2個は冷凍庫へ入れておく。


「これは焼いて食べるのですか」


「本当はな。でも邪道だけれど、皮部分だけ焼いてあとはそのまま生で食べるのも有りだ。ただ素直に焼いた方が西京味噌風の場合は美味しいかな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る