第185話 燻製づくり野生編
家の直ぐ外、大広間から見える小石中心の浜辺に集合した。
草津先生が宣言する。
「これから燻製づくり、野生編を開始します。
本来は煙を出す木をきちんと選んで、専用のチップを買ってきてやるものです。
このように適当な木材を使う場合。
まずは出来るだけ乾燥したものを刻んで使用して下さい。
そして松とか杉とか針葉樹は基本的に使わない事。油分が多くて炎があがったり、上手く出来ても恐ろしい味になったりします。罰ゲームでも食べたくありません。まああの時は他の条件も色々あったのかもしれないですけれどね。西欧ではチーズのスモークに松は最適とか言われているようですし。
あと防腐剤を塗った材木なんてのも当然駄目。死にそうな味になります。
広葉樹系統の、それも加工されていない自然な枯れ木を探しましょう。
それが一番無難ですね。
果樹園等が多い場所で、選定した木があったりした場合は極力そういう物、それもしっかり乾燥したものをもらって使って下さい。果樹の木はだいたい大きく外れないです。あくまで経験談ですけれど。
それではまずは実験に、昨日作ってほど良く乾いたソウダカツオを使ってみます」
ソウダカツオのサクを蒸して切って冷蔵庫で乾かしたものを5枚程網に載せる。
「最初はこのチップで大丈夫かどうかを見たいので少なめに。多分樫系統の木なので大丈夫だと思いますけれど」
そしてガスコンロを準備する。
ガスコンロはボンベ部分とコンロ部分が離れているタイプだ。
「ここで、ボンベ部分は必ず熱がかからないところに置いて下さい。間違って中に入れると爆発の恐れがあります」
そして小さい鉄製の鍋にチップを入れる。
「この鍋、昔は100円ショップで売っていたんですよ。100円スキレットと言って、結構その筋の人には好まれたんです。ちなみに私はあと10個くらい買ってストックしてあります。これにチップを入れ、火がつかないよう蓋をして、コンロにかけます。火は最初強火で、煙が出たら中火にします」
ちょっとおいたら煙が出てきた。
先生は火を調整して。
そしてコンロの上に段ボール製燻製器を載せる。
「今回は怪しい燻材なので10分で様子を見ます。味の方向に問題が無ければ本格的にやってみましょう」
という事で。
10分間は部屋の中に入って様子見。
燻製機の上から順調に煙が出ているのが見える。
「ところで恐ろしい味ってどんな味なのですか」
未亜さんが質問。
先生方2人は顔を見合わせた。
「松ヤニとタールの混じった薬っぽい味かな」
「何か正露丸等の薬品が混じっているのではと思いましたね」
「ウッドデッキ用らしい防腐剤入りっぽい材木とどっちがマシだっけ」
「どっちもネズミすら食べないと思います。そういう意味では保存食に最適ですね」
「保存しても食べられないですけれど」
うん、何となく伝わった。
人間が食べられる味では無いということだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます