第157話 まだ明るさが残っています

 3人ともアジだった。

 大きさはまあまあ。

 サビキサイズよりは大きいかなというところだ。


「これで明日朝は大丈夫だな。最低1人半身はある」

 なんて事を言いつつ、再びエサを詰めて左へ行き、投げる。


 そして今度は残った2人が同時に当たった。

「これはなかなか厳しい引き、なのですよ」


 2人ともかなり戦っている。

 頑張っているのだが巻けない時もドラグが出ている時もある。

 これは大物だな。


 仕掛けや糸そのものはかなり太めだと先輩が言っていた。

 だからそう簡単に切れることはないと思うけれど。

 波の勢いも使ってなんとか引き上げたのは、アジより2回りは大きい魚だった。


 でも、

「思ったより小さいのです」

「もっと大きいかと思いましたけれど」

 2人とも欲張りなことを言っている。


「うーん、ブリとかカンパチの子供だな。どっちか私じゃ区別がつかない。

 アジもそうだが群れが通ったんだろう。普通、青物は夜にはかからないから」

 先輩の見立てはそんな感じだ。


「それにしても昼間といい、いつもの場所より大きいのが釣れますね」


「それだけ魚がスレていないんだろ。魚そのものはいつもの場所にもそこそこ同じ程度にいるしな。シュノーケリングで見た限りは」


「でもこのサイズはなかなか釣れないのですよね」

 なんて言いながら処理してまた投げて。


 しばらくまた釣れないまま持ち場を左右に1周して。

「あと2周くらいかな。時間的に」

 と言った時に。

 彩香さんの竿がいきなり引っ張りこまれた。


「ん、何これ」

 彩香さん、必死に抵抗しているがリールがギーギー鳴って糸が引っ張られている。


「どう、さっきより大きいですか」

「全然引きが違います。巻けません」


「まあ落ち着け、この辺はひっかかる岩場も少ない。糸も太い。向こうが疲れるまで待てば大丈夫だ」


 そして僕の竿にもヒット。

 ただしそこまで強烈じゃない。

 普通の感覚では大物なんだけれど。


 適当に戦いつつも寄せると茶色い模様がある形は魚らしい魚。

 先輩曰く。

「メバル、結構いいサイズだ。関東でこれくらいが釣れると泣いちゃうな」

 ただ絶対的な大きさはそれほどでもない。

 最初のアジ程度。


 そしてやっと、彩香さんが魚を寄せた。

「フエフキダイの一種だな。これは美味いぞ」

 との事だ。

 僕の釣った魚より2回りは大きい。

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