第150話 夕食のために頑張ります

 そんな訳で。

 午後は本気の釣りだ。


 場所は北側の岩場の先。

 ここは岩場もあれば深い場所もあるという感じ。

 釣りにはもってこいだろう。


 本当は港の桟橋みたいなのがあれば楽なのだが、贅沢を言ってはいけない。

 ここは無人島なのだ。


 そんな訳でまずは貝の中身をエサにつけ、仕掛けを気分良く遠投。

 このおもりと僕の腕では30メートルも届かないけれど。

 それでも30メートル先深さ5メートル以上にはそこそこの大物もいた筈だ。

 大物があれば食卓が潤う。


 そして竿もう1つは彩香さん担当。

 この仕掛けは二浦での釣りでお馴染みスキンサビキだ。

 これを岩場から深めの処に落として上下させ、小魚を狙おうというもの。


 小魚でも数釣れれば戦力になる。

 昼も先生方がどうやって捕ったか不明だが小魚を数匹捕まえて揚げていた。

 あれはあれで抑えとしてなかなか有効と見た。


 とやっていると。

「え、何で」

 いきなり彩香さんの竿がビクビク上下している。


「釣れている。浜へ上げるぞ」


 何せ足場がイマイチだ。

 そんな訳で仕掛けが全部海上に出るまで上げて、上げたまま浜へ。

 10センチ程度の銀色の、ちょっと頭が大きくて不格好な小魚が3匹ついていた。


「これ食べられるのかな」

「食べられなくてもエサにしたり色々出来るだろうから捕っておこう」


 という訳でバケツに入れて、また岩場に戻って。


 またかかる。

 砂浜へ。

 その繰り返し。


 そして。

 僕の仕掛けのウキがすっと消えた。

 慌てて竿に手をやり巻く。

 結構重い。

 いい感じ。


 糸を切られないよう岩場から岩の無い方へ誘導しつつ。

 リールを巻いて引っ張る。

 波を利用して一気に砂浜へ引き上げ。

 お、お、お!

 これは立派な黒鯛様だ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る