第148話 次善の方策

 結局海底を泳いでいる魚を含めて。

 僕の腕では捕まえるのは無理だった。

 というか文明先輩はどういう腕をしているのだろう。

 あの一覧表の『勝負勘はピカイチ』というのが良くわかった。


 そして。

「そろそろ本気でおかずを捕まえないと、昼食が醤油御飯とか味噌御飯ですよ」

 小暮先生がはっぱをかける。


 確かに太陽がだいぶ上に来ている。

 もうお昼も近い。

 仕方ない、銛は諦めよう。

 という事で銛を所有者に返す。


「やっぱり難しいですね、これ」

「慣れだよ慣れ」


 文明先輩はそう言って、持っていた袋を見せてくれた。

 僕が逃がしたのと同じくらいのベラ、掌よりちょい大きいタカノハダイ、イトヒキハゼが入っている。


「この銛でも何とか工夫すれば獲れるけれどな。斜め上から銛の下1本に力がかかるようにゴム伸ばして当てれば」


 わかった。

 理解した。

 これはもう、文明先輩の特技だ。

 真似は無理。


 そんな訳で僕は未亜さんに声をかける。


「どう、案配は」

「駄目駄目なのですよ」

 と未亜さん。


「そろそろ別の手を考えないとまずいのです。昼飯が具無しみそ汁と御飯なのです」


「いや、具になる貝は彩香さんとそこそこ数採ってきたけれど」


「なら野草でも頑張って探すのです。という事で、美洋は……」

 姿が見えない。


「そう言えば泳ぎすぎてバテて、家の中で休んでいるのでした」

 確かに駄目駄目だ。


「あと、彩香さんはどこだろう」

「さっき岩場に行くと言ってたのです。貝とかを追加するそうなのです」


「なら取り敢えずこっちは野草かな」

「そうなのですね」


 そういう事で。

 未亜さんと陸に上がり、サンダルに履き替えて砂浜の上部へ。

 探すまでも無くツルナが生えていた。


「取り敢えず昼はこれで誤魔化すのですよ」

「そうだな」

 それが確実だろう。

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