第122話 裕夏さんと未亜さん

 昨日寮の部屋に着いたのは午後11時40分。

 本日の集合が午前3時30分。

 何か色々問題は無いのだろうかと思う。

 それでも先生引率だと通ってしまうのが学校というものだ。


 先生はあの小さな外車では無く、国産の長い7人乗りの車で現れた。

 厳密には先生ともう1人だ。

 2人とも車から降りてきて挨拶する。


「うちの同居人で、昨日食べたマゴチを提供してくれた人よ」

「どうも柾です」

 短い髪のボーイッシュな感じの、でも多分女の人だ。


「初めまして、そしてお久しぶり」

 ん?

 何か変だと思って横を見る。


「ひょっとして、裕夏お姉さん?」

 これは美洋さんだ。


 そして未亜さんは無言。

 知らないという感じでは無い。

 未亜さん、何か睨みつけているような感じ。

 明らかに何かあるような気がする。


「そう呼ばれるのは久しぶりだ。美洋も未亜も大きくなったな」

 やはり知り合いか。

 でも2人の態度が違いすぎる。


 美洋さんは素直に懐かしいという感じ。

 未亜さんは……何かありそうな感じとしか言い様が無い。

 美洋さんの手前黙っているという感じだけれども。


「さあ、話は後。乗った乗った。朝市なんて早いもの勝ちだ。遅ければその分獲物が無くなる」

 そんな訳で車に乗車。

 身体の大きさの関係で先に3列目。

 未亜さんと彩香さん、そしてクーラーボックスを入れて。

 そして2列目が川俣先輩、僕、美洋さんだ。


 ふっと気を抜いたせいで真ん中になってしまった。

 いつもの車より狭いので両側くっついている状態。

 これはなかなか……

 触れあっている部分が柔らかくて心なしか熱く感じるのは気のせいか。

 2人は全く気にしていないようだけれども。


「裕夏お姉さんは今はどうしているんですか」

「もう裕夏でいいよ。あるいは柾で。今は普通に会社員。家は先生と同居中だ」

 この人と美洋さん、未亜さんの関係も気になるし。

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