第108話 双方による情報交換

「参考までに他はどうなんですか」

 津々井先輩が柏先輩に聞く。


「北岳も1泊2日。朝1時頃に学校出発して、途中市営バスに乗り換える。登りはじめが7時頃かな。登りはなかなにダイナミックかつ急登が続く。休憩をとりつつ昼2時にテント場に到着する感じだな。


 山としては最高。テントを張った場所から朝日が昇るのが見えるし景色はきれいだ。裂いている花も綺麗だし文句ない。


 ただし行きも帰りもとにかく道は長い。あと市営バスの往復2000円ちょいも痛かったな。一般車両は通行禁止の場所を通るから。

 『いい山』というのがどんなところか良くわかる場所だと思う。でも佳奈美は後半の意識がほとんど無かったって言っていたな。うちの合宿の中で多分一番辛い」


 佳奈美とは松戸先輩のことか。

 とすると僕らの活動にはやや早いかな。

 彩香さんが意識を失いそうだ。


「ついでに話すと最後の雪山体験。これは歩くセンスに左右される。行程そのものは文句なく一番楽なんだけれど。何せ歩くのが完全に雪の上。だから慣れないと結構体力を使う。行程そのものは3時間程度なんだけれどな。僕は富士山より歩きは辛かった。

 でも雪山でテントというのは色々楽しいぞ。景色も最高だし。

 確かこの雪山テント泊のために草津先生から大型テントを借りたんだよな、今回も持ってきている緑色の奴。


 とにかく体験としては文句無く楽しい。外はマイナス十度以下なんだけれど、不思議とそんな寒さを感じないしさ。これは色々お勧め」


「本当に寒さを感じないんですか」

 マイナス十度以下なんて僕は想像したくない。


「ああ。不思議だけどさ。寝袋の中に入れていない水のポリタンクは凍る。だからテント内でも0度以下なのは間違いない。でも何故か平気なんだ。」

 これはちょっと試してみたいかな。


「で、深草の方はどんな活動をしているんだい」

 なので僕もこっちの活動をを説明する。


「まだ4月に入部したばかりだから大した活動はしていません。近所のハイキング、先生の自宅でテント泊の練習、自転車、山菜採り、釣り、それらの料理くらいですね。あとハイキングしてインド風炊き込み御飯を食べる会もやりましたけれど」


「釣りはやってみたいな。でも先生が知らないし道具も無いらしいんだ。釣っても料理出来る人がうちにはいないし。あとうちの学校は先生の車の助けがないと何処にも行けない奥地だからさ」


「釣りそのものは簡単な仕掛けでしたよ。小さいので良ければサビキで数釣りも出来ますし。料理も小さいのは頭と内臓取るのも開くのも一度やれば出来ますから。揚げても美味しいし刺身というか酢締めも美味しいし」


「料理はとかくうちのネックなんだ。僕と理奈さんでやっているけれど経験それほど無いし。今度スーパーで魚買ってきて貰って練習しようかな。何せ魚をさばいた事が無いんだ」


「やってみれば案外簡単ですよ」


 そんな感じで情報交換は続く。

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