第102話 残念ながら無事到着

 正規の前後に戻ったところ。

 やっぱり艇の挙動が安定した。

 漕がなくても艇が回らない。

 重量バランスの差は大きいようだ。


 急カーブや激しい瀬もいくつかある。

 でもいい感じにすーっと降りてきた。

 後の津々井先輩もうまいのだろう。

 最小限の動きで姿勢を保っている感じだ。


 気分的には本当にあっという間。

 ゴールの橋下まで辿り着いてしまった。

 勢いよく岸に乗り上げて、そして艇を降りる。

 正直もっと遊んでいたいくらいだ。

 まあ明日もあるけれど。


「お疲れ様」

 小暮先生の声。

 すでにマイクロバスは到着していた。

 なのでカヌーを下りて取り敢えず河原の処まで引っ張り上げる。

 あと津々井先輩と2人で女性陣のみの艇も手伝って引っ張り上げた。


「空気を抜くのは一息ついてからでいいですよ。疲れたでしょう」

 カヌーを引っ張り上げて、そう言われて。


 始めて自分が結構疲れていた事に気づいた。

 日焼けもしているし。

 今の川下りの興奮状態で気づかなかったようだ。


 でも女性陣はそうでもない感じ。

 全員座り込むとかそういう感じ。

 彩香さんに至っては河原でべたっとうつ伏せに倒れている。

「ああ、日差しが温かいです」

 川の水で体温を奪われ、余計に疲れたのだろう。


「着替えも積んでありますから女性から着替えて下さいな。男性陣はカヤックの空気を抜いた後で」

 というので。

 女性陣が着替えている間に先生2人と津々井先輩とで空気を抜く。

 1人が空気孔を開いた状態で押さえて、もう1人が丸めていく感じ。


 ここでもやっぱり先生2人は手慣れている。

 1人1艇ずつなのにこっちより遙かに作業が早い。


「邪道ですけれど、その辺の割り箸くらいの木の枝を空気孔に斜めに挿して空気が出る状態に固定するんですよ。本気で空気を抜く時はポンプを使いますけれど、バスで運ぶ分にはその状態で丸める程度で大丈夫です」


 ということで、僕らが2人で1艇を丸める間に先生2人で3艇畳んでしまった。

 ついでにパドルも全部分割。

 脱いだライフジャケットやヘルメットも集めて載せる。

 回りの荷物も載せ忘れが無いか確認。


 その後僕と津々井先輩が着替えて。

 マイクロバスに乗ってテントの場所へ。

 僕は途中まで景色を見ていたのだけれど。

 いつの間にか意識を失って眠りの中へ……

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