第99話 艇長に挑戦

 右側にぎゅっと曲がって。

 見えにくい岩の上にちょっと乗ってしまって。

 あわてて2人で漕いで脱出したところで。


 右側の河原部分に前のカヌーががっと突っ込む。

 他の2艘も見える。

 ここで休憩のようだ。


「どうでした。ここまでで」


「楽しかったけれど、ちょい腕がしんどいですよ」

 これは流山先輩だ。


 僕の方はそれほどでもない。

 なにせ僕は主にブレーキ役。

 津々井先輩もカーブを抜ける時しか漕いでいないと思う。

 真面目に漕ぐと前の艇に追いつきそうだったし。

 それでも充分楽しいけれど。


「ここでちょうど3分の1くらい。結構早いですね。水が程良く多くて流れがいい感じです。皆さん体調はどうですか。ここなら車で戻れますよ」


「そんな、勿体ないのです」

 流山先輩がそう言う意見に同感だ。

 これは楽しすぎる。


「さて、ここから1区間約30分、前後を交代してみましょう。

 カーブ3箇所、そのうち最初の1箇所が一番難しいかな。基本は内側べったりで通過です。あとこの区間には浅い場所があります。姿勢を崩す前に全力で漕いで勢いで脱出して下さい。


 前が重い分操作性が悪くなりますよ。後の人はよく考えて前に指示を出して下さい。前の高校生は後の中学生の指示に従う事。いいですね」


 えっ。

 確かに後に乗って自分で艇をコントロールしたいと思ったけれど。

 いきなりか。

 それも最初に難しいところが来るとはなかなか。

 でも面白そうだ。


「大丈夫でしょうか」

 彩香さんがちょっと自信無げに言う。


「大丈夫、自信を持って私に指示して下さいね」

 そう先生が言って。


「じゃあ宜しくな」

 と津々井先輩が前に乗る。

 スタートだ。

 栗原さんと先生の艇を先頭に流れに入っていく。

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