第66話 カミングアウトしがいのない奴
「彩香さん、努力は認めるけれど今回はちょっとチートを使わないですか。その方が楽しいし、ずるいとは誰も思わないと思うのですよ」
彩香さんの表情が一瞬固まる。
「何故それを。それも、今」
「ちなみに悠君には昨夜、私が狐火を使える事を話しましたよ。実際に狐火を発生させてみて。狐火そのものはちょっと怖いそうですが、それ以外は特に抵抗はないそうです」
今度は彩香さんだけでなく美洋さんまで固まる。
「未亜、まだ早いって……」
「もっと仲良くなった後に悲しい思いをする、それよりはいっそ早いうちにと判断しました。ちょうど昨夜眠れない様子でしたので。
今まで気づかれなかったのでわかるとおり、それでどうなるという事はありませんでしたよ。少なくとも私と悠君の場合は」
「スパルタだな、未亜は」
「合理的と言って下さい」
その返事に川俣先輩がにやりとする。
「なら私が先輩として次いかせて貰おうか。
私こと川俣音子は猫又だ、正確には猫的な能力を持つ人間というべきだけれどな。別に猫が長年生きて妖怪に進化した訳じゃ無い。そういう種族っていうことだ。なお元々の生まれはトルコのイスタンブール。
ちなみに普通の人間と違うのは、
○ 瞬発力だけは並じゃ無い事と
○ 暗いところでも目が見える
事かな。
ある程度人を騙くらかす能力があるのは獣系の能力を持っている人間共通。
弱点としては
○ 長時間耐久的な運動は得意じゃない事と
○ 気を抜くとともかく眠い
というあたりかな。
というカミングアウトをした処で、悠の反応がどうか知りたい」
そう言われても…、
「反応と言われても困りますね。せいぜいなるほどなあとか、納得したなあ位です。先輩の場合は。何せそのまま過ぎて」
正直な僕の感想だ。
「感想それだけか、悲しいな」
「だってそのままじゃないですか。いつも寝ていて夜目がきいて、瞬発力あるけど時重力無いと言っていて」
川俣先輩の生態そのままだ。
カミングアウト関係ない。
「だとさ。カミングアウトしがいのない奴だ」
そう言いつつも先輩の目は笑っている。
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