第65話 あとは乗るだけですけれど
そんな訳で整備し直して。
先輩に指定された90psiという目盛りまで空気を入れて。
サドルの高さも足がぎりぎりつく位にして。
チェーンは取り敢えず注油のみで大丈夫とのことだ。
乗ってみると思った以上に走り出しが軽い。
ブレーキ確認後、6段あるギアを最高速にしてみる。
なかなか速い。
携帯電話のGPS読みで楽々30キロ出せる。
「これは今まで乗っていた自転車と違う感じなのです」
未亜さんも確かめながらそんな事を言っている。
「美野里先輩からの受け売りだけれどさ。普通の自転車でも空気圧上げてサドルをぎりぎりまで上げればかなり快適になる筈なんだと。
ただこの自転車は前ギアを55Tという大きいギアに交換してあって、ちょっとだけ速度も出るようになっている。変速ギア数が少ないのと自転車本体がやや重いのを除けば高い自転車と遜色ない筈だってさ」
「本体は7000円以下。なのにあのギア部分だけで1200円余計にかけてますからね。でも美野里さんがそこは譲らなかったんです。あとはブレーキレバーも剛性が高い金属製に変更して」
なるほど。
普通の安物ではなくちょっと手を加えてある訳か。
「ただ美野里先輩自身の自転車は11段変速で、なおかつ本体アルミ製で軽かったな。元々8速だったのを11速に変更して、元の値段と改造費あわせて15万超えという代物だったけれど」
まあそれはともかく。
残りの問題は彩香さんの自転車練習だ。
今は両足がつく高さにして、取り敢えずまたがっている状態。
坂を利用して真っ直ぐ2メートル進んで止まっては出来る。
でもまだこぐのは怖い模様。
「どうする。走りながら後ろを支えようか」
「うーん、ちょっと待って下さい」
彩香さんは色々考えながら試している模様。
坂を引っ張り上げて、上からこがずに下りてみたり。
今度はこごうとしてバランス崩し賭けてブレーキで止まったり。
はじめて自転車に乗ったにしてはいい調子なのだろう。
でも皆でおでかけまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
ふと。
未亜さんがにやりと笑う。
いつも笑った感じの目が一層細くなって。
そして。
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