第13話 僕は気がついた

「目的地はうちの部の秘密基地さ。乞うご期待」

 何だろう。

 気になる。


 2枚目も確認してみる。

 載っていたのは時間と日程。

 宿泊場所は空欄になっている。

 これはきっと先輩が消したのだろう。


 予定は、

   9:00  学校出発

  12:00  山頂で食事

  15:30迄 目的地到着

         テント張り、食事準備

  18:00  食事

  20:00頃 就寝

となっている。


「何か楽しそうな感じですね。今からちょっと楽しみになってきました」

 竹川さんは本当に楽しそうに言う。


「でも竹川は本来あっちの本家筋だろ。向こう系統の部に入らなくていいのか」


 川俣先輩の言葉に竹川さんはびくっと身体を震わせる。

「知っているのですか」


「一応は」

 先輩は頷いた。

「1年もこの学校にいれば噂も色々聞こえてくる」


 竹川さんは小さく頷く。

 そしてはっきりした口調で言った。

「いいんです。元々そういう馴れ合いは私は好きじゃ無いです。だからこの学校に来た時、活動関係は一切うちと関係ない処に入るつもりでしたから」

 今までの彼女のふんわりした感じと違う。

 少し厳しさまで含んだ感じに聞こえた。


 この辺りの事情は僕には全く分からない。

 ちなみに栗原さんは何となく理解している感じ。

 先生はわかっているようだけれども。


 先輩は大きく頷いた。

「なら結構。まずはお試し合宿、充分楽しんでくれ」


「あと金曜日、タオルと下着と寝間着代わりの着替えを持ってきて下さいね。キャンプ現場まで私が運んでおきますから」


「詳しくは明日までにパンフを作っておくよ。寮務や学校側への申請は先生がやってくれるから。お代は心配するな。お試しだから昨年までの部費で何とかする。

 という感じで、どうする?お試しだけでもやってみるか?」


 竹川さんは思い切りよく頷く。

 僕は栗原さんとちょっと相談。


「どうする?」

「うん、仲代君がいいと思うなら。私は楽しそうだと思うけれど」

 嘘は言っていない感じだ。

「ならお願いします」

 僕は先生と先輩に向かって頭を下げる。


「わかりました。色々準備しておきますね」

 小暮先生の返答。 

 そんな訳で。

 いきなり合宿に行く事になってしまった。


「うん、楽しみですね。栗原さんだっけ?そう思いませんか」

「そうですね。実はちょっと体力に自信が無いのですけれど」

「大丈夫大丈夫。万が一の場合はすぐ下の道をバスが走っているから」

 そんなやりとりを聞きながら。


 ふと僕は気づいてしまった。

 いや、気づいていたけれど意識してしまった。

 僕以外は先生も部員も全員女子だという事に。

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