なんて良い人達だ

1/19  ダム→カトマンズ 


 バスを調べるために早朝に起きる。宿を出てバスのところにいくが、誰もいない。どの店も閉まっている、はやく起きすぎた。宿に戻ろうとするが、入り口がオートロックで閉まっていて中に入れない。寒い中、散歩して時間をつぶすことにする。


 昨日は暗くてわからなかったけど、とても景色が良い。チベットの乾燥した大地に比べて、木々が生い茂って緑豊かな谷だ。昨日で大麻を吸いきってしまったのが悔やまれる。小さな食堂が開いているので、朝食をいただく。最後の中華は熱々の肉まんとおかゆ、最高に胃にしみる


 太陽は昇り、再びバスを見に行くと一人の女性がいる。たしょう言葉が通じるので、カトマンズ行のこのバスに乗れないかと聞くと、大丈夫らしい。すぐに出発するので荷物を取りに行く。簡単にバスが見つかってよかった。


 チェックアウトしてバスに戻ると、別の女性がたっている。バスのことを説明すると、どうやらバスの持ち主らしく、今日は運行しないと言われる。えっ! 話が違うよ! そのかわり、15分ぐらい歩くと国境に着くと教えてくれる。よし! 近いなら歩いていこう! 坂道を下り、ボーダーへ向かう。


 15分もかからずに国境へ着く。まだあいていないので、イスに座って待つ。職員達が各自の場所につき、仕事がはじまる。おそるおそるパスポートを差しだす。パーミットがないから、ぶじに出られるかな? 質問を幾度もされ、なんか嫌がらせをうけているみたいだ。何を言っているかわからないので、適当に返事をしていると、一人の職員にあきれられる。「ステューピッド!」なんて言葉をはくんだ! うん○公安め、けど、そのおかげで相手にされず、スタンプをもらい手続きがすむ。


 軽ワゴンに乗り、ネパールのイミグレへ向かう。急な坂道を車は降りていく。小さな川があり、緑豊かな景色だ。昨日までは緑のない景色だったので、すごいギャップ感じる。冬からあっという間に春を迎えてしまったかのようだ。中国元をネパールルピーに換えてもらい、両替をすませる。


 10分ほどでイミグレに到着する。橋を渡ると、一気に人種が変わる。すごい変化だ。イミグレで30ドルを支払いあっさり入国する。やったー! ついにネパールだ!


 青の迷彩服を着た、ライフルを持ている人がたくさんいる。一見は物騒にみえるけど、笑顔で、「ジャパニーズ?」と、気軽に声をかけてくれる。話しかけることはほとんどない冷たい人民と違い、とてもフレンドリーだ。人種が変わると、こんなにも態度が変わるものなのか? 人民がどこの国でも嫌われるのはわかる気がする。


 歩いていると、日本語をしゃべれるネパール人が話しかけてくる。いきなりメールアドレスを交換してと言われたので、素直に交換する。言葉が通じるってすばらしい! カトマンズ行のバス乗り場を教えてもらい、ついでにミルクティーをおごってもらう。カトマンズに着いたら電話してくれと言われるが、フレンドリーすぎて逆にあやしい。せっかくだけど電話しないと思う。その男と別れ、カトマンズ行のバスに乗りこむ。


 緑豊かで気温は暖かい。時計の針をネパール時間に合わせるとまだ9時前、ちょっと得した気分だ。バスからの眺めはすばらしく、見ていてまったくあきない。人々はみな、中国に比べると親切だ。それにたいていの人は英語がしゃべれる。


 途中、武装した警察がバスの中を調べる。検問が何度もあり、“マオイスト”さがしは大変そうだ。ネパール人はみな外に出され、持ち物検査をしてからバスに戻る。毎回だから面倒くさそう。自分は、日本人だと警察に言うと、笑顔で答えてくれる。日本人には驚くほど友好的だ。


 バスを乗りかえて、カトマンズへ向かう。パンパンにつまったバスだけど、かっこいいネパールヒップホップが車内に流れている。移動手段がはっきりしているので楽だ。それで移動費は安いとくるから、文句無しだ。


 カトマンズに着いたら、すぐにインドビザの申請に行こうと思っていたが、検問と渋滞にはまり、遅い時間にカトマンズに到着する。タメルという場所に行きたいので、近くにいた人に聞く。地元のネパール人がタメルに行くので、一緒のタクシーに乗る。友達が日本語レストランを経営しているらしいので、ついでに教えてもらう。


 タメルに到着し、さっそく宿探しをすると、すぐに一泊125ルピーの安い宿を見つける。部屋は汚いけど、まあいいだろう。


 荷物を置き、通りに出ると、外国人向けの店がずらっと並んでいる。CDショップにレストラン、たくさんの看板が通りをかざり、カオサンに似た雰囲気を持っている。どこもお香の香りがただよう、良い街だ。


 歩いていると一人のネパール人が「ハッパ?」と話しかけてくる。はい! 待ってました! “もの”を見せてもらうと、ハシシを持っている。10グラムあるらしく、プッシャーはどれくらい欲しいか聞いてくる。そりゃー全部欲しい、けど試してみないと。3グラムぐらいを300ルピーで売ってもらう。安いので、つい気を許してしまいそうになる。けど相場を知らなきゃ。


 吸う道具がないので、巻紙の置いてある場所を教えてもらう。ついでにチラム(吸引道具)もないかと聞くと、小さな土焼きの店に案内してくれる。小さなチラムが二つで10ルピー。安い! こんなに安く手に入るとは思ってもみなかった。正しい吸い方をプッシャーに聞くと、チラムの中の石として、落ちている土焼きのかけらを削って作ってくれる。親切だ!

 

 ホテルに戻り、ペグメールを終えてからさっそくチラムを試す。カトマンズで吸うハシシ、最高に楽しい瞬間だ。我慢の生活を続けてきたので、がっつり肺に入れる。うーん、煙の量は思ったよりもすくないが、どっしり決まる。これはいい! 大麻よりもしぶくて深みのある味だ。そして“ねた”もちの良さ、ハシシはいいな。


 暇になり、通りに出る。なにか食べ物屋がないか探すが、ほとんどの店は閉まっている。通りかかったサンドイッチ屋に呼びとめられ、うまそうなので買うことにする。


 具沢山で味は最高にうまい。チベットからきたので、よりおいしく感じる。ボリューム満点のツナサンドを食べながら通りをはいかいするが、閉店時間がはやいからか、人もまばらだ。すっかりとばされて宿の場所を忘れてしまい、何も考えずに歩いていると、夕方のプッシャーに会う。


 ホテルの場所を教えてもらい、一緒に歩いていると、別の“ねた”を見せてくれる。バンブーと言うらしく、暗くてよく見えないが臭いはきつく、ガチガチでそうとう良さそう。けど、高いので買うのはあきらめる。すると、しつこく売ってくるのであやしく感じてしまう。


 部屋でもう一服して、はやいけど眠ることにする。


 つらかったチベットの果てに辿り着いたカトマンズは、やさしく感じてしまう。英語を話せるフレンドリーなネパール人が多い。“カミ”に“×”といろいろ手に入りそうだ。インドに行く前にリフレッシュしよう。

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