波乱万丈“ワット・プー”

11/21  inパクセー 


 朝早く起き、すぐに出かけられる準備をする。今日は久しぶりの遺跡めぐり、“ワット・プー”という寺の遺跡へ行く予定だ。外に出てヌードルを食べるが12000キップ(10000キップは約1ドル)と高い。ぼったくり? それとも本当の値段? とにかく高い。


 トゥクトゥクをつかまえて南バスターミナルまで連れていってもらう。すぐに市場みたいな場所で降ろされ、トラックを改造したソンテウに乗らされる。礼を言い、1ドル支払う。五分後にバスターミナルではなく近くの市場だと気がつく。やられた、1ドルも払ってしまった。


 “ワット・プー”に行くにはカンパサークという町に行かなきゃならない、ぶじに着くのだろうか? 1ドルでそこまでつれていってくれるらしいが、次々とトラックに人と物が乗せられる。野菜に冷蔵庫、鶏までいる。ほとんど身動きの取れない状態で発進する。ラオス人だらけで心配になる。


 走ること一時間、メコン川の岸に到着する。今まで見たメコン川の中で一番の大きさだ。対岸がかすんでいる。川なのに砂浜があり、砂は白く、きれいでさらさらしている。島という言葉もしっくりくる。車ごと船に乗せられ、4台の車が乗り込み船は出発する。甲板に出たかったが、車内の奥に押しこまれて出られない。景色が見られないのが非常に残念だ。


 10分ぐらいで対岸に到り着く。急な砂の斜面を勢いよく車はのぼり、再び陸路を移動する。カンパサークらしき町にたどり着くが、降りていいのかわからない。ぶりっているので怖気ついてしまい、聞くに聞けない。町の中心部から離れ、「どうなるのかな」と思っていると、急に降ろされる。


 民家の前で人が二人たっている。トラックの乗務員に1ドル支払ったあと、男二人組みに“ワット・プー”の行き方を聞くと、トゥクトゥクでつれていってくれるらしい。値段は6ドル、片道で5ドルと言われる。高い! 10キロもない道で5ドルはばかげている。歩くことにして、途中に通りかかる車に乗せてもらう作戦にする。


 歩くこと5分、とにかく暑い! たまーに車が通るがとまってくれない。道が正しいのか心配だ。この暑さ、ぶりっていて目がしばしばする。


 30分ぐらい経つと乗ってきたソンテウに似た車がやってくる。立ち止まり、ジェスチャーをすると車は停まる。どうやら“ワット・プー”まで乗せてくれるらしい。やったー! ここまできたら値段は聞かずに乗り込む。


 走ること15分、“ワット・プー”の入り口で降ろされる。値段は5000キップだ。安い! 本当に助かった! 入り口で3ドル支払い、ちょうどよくトゥクトゥクがいたので遺跡までただで乗せてもらう。1軒のレストランがあり、人はまあまあいる。やっとたどり着いた。鼻炎症状なので体力が通常の二分の一しかないみたいだ。腹ごしらえでチキンライス風のチャーハンを食べる。まわりには日本人がいて懐かしく感じる。

 

 メシを食べ終わると元気が出る。さっそく見学へ向かう。石の階段をひたすら上へ上がると、こわれかけの寺院がある。正直言ってたいしたことはないが、がけの下にあり、景色が良い。自然と融合していてふり返ると壮大な景色がひろがる。遠くにメコン川が流れていて、まわりは緑だらけだ。がけを途中まで上り、腰を下ろして一服入れる。うーん、気持ちいい! やっぱり遺跡での一服は最高だ。


 景色をみながらジャンベを叩き、帰ることにする。簡単に帰れるだろうと思っていたが、甘かった! 入り口にいるトゥクトゥクに聞くと、3ドルでカンパサークへ連れて行ってくれるらしいが、戻ろうとするトゥクトゥクがいない。待機しているトゥクトゥクは白人にチャーターされて動かない。「どうしよう?」と思い、その場で待っていると、遺跡まで送ってくれたトゥクトゥクをチャーターしている、白人のおばちゃんがやってきて、乗っていきなさいとジェスチャーする。しかし、ラオス人運転手はいまいちな態度を示している。


 乗るとチケット売り場のそばにある建物で降ろされる。トゥクトゥクは戻っていき、おばちゃんは建物で展示品を見学する。自分も中に入って見てみるがすぐに飽きる。


 外に出てトゥクトゥクを待っていると、一台のトゥクトゥクがやってくる。博物館の前でとまっているので、カンパサークまでを聞くと、3ドルで乗せてくれるらしい。2ドル半まで値切って乗せてもらう。しかし、ぶじにたどり着くまでは安心できない。トゥクトゥクをチャーターしている女性が戻り出発する。


 女性を途中で降ろし、船着場に到着する。2ドル半を支払う。残りの待ち金は10000キップだけ。足りない場合は、貯金箱である、腹に巻いてあるポーチからださなきゃいけないが、それは避けたい。船に乗り込み値段を聞くと5000キップ。お金を支払い対岸へ移動する。


 「ここまでくればパクセー行きのバスがあるだろう」と思っていたが、さらに甘かった! パクセー行きのバス、ソンテウを探すがどこにもみあたらない。「いくらでも払うから乗せてくれ!」ぐらいの心持だが見つからない。一人でメコン川の砂浜でぽつんと座る。日は暮れはじめている。まずい! しかたなく、歩いてつかまえる作戦にでる。


 歩くこと30分、バイクに乗った兄ちゃんが、すこしなら乗っけてあげると言ってくる。最後の5000キップを払いT字路まで乗せてもらう。せっかく乗せてもらって悪いが、もうすこし乗っけてくれても良かった。再び歩き始める。

船岸の町からパクセーまで約35キロ、「歩いたら何時間かかるのだろう」と考えながら歩く。思ったよりも車は通らない。たまに通っても停まってはくれない。日はどんどんしずんでいく。景色はすごいきれいだ。


 あいかわらず車は停まってはくれず、日はすっかり沈み真っ暗な夜へ。月が出てないので灯のない道は本当に真っ暗闇だ。星は無数にちらばり、スコータイで遺跡からバイクで帰ったときの景色と似ている。たまに車が通ると光の世界へ、通り過ぎると一瞬で真っ暗闇へ。


 ぶりながら歩いて約二時間、小さな食堂を発見する。店に入ると、中にいたおっさんは驚いたようすだ。ヌードルを食べ、飲み物とおやつを買う。まるで遠足気分だ。再び歩き始める。


 さすがに35キロ歩く覚悟をする。死ぬわけじゃないし、歩けない距離でもない。暗闇がすこし怖いが、とにかく歩き続ける。


 歩き始めてから四時間は経っただろうか、対向車のバイクが通り、あいさつをするとバイクが近づいてくる。パクセーまで乗せてと言うと、途中までなら乗せてくれるらしい。やったー! うしろに乗り、「ショートカットだ!」と喜んでいると、一軒の家に停まる。


 ラオス人が6人おり、パクセーまで歩いていくと言うと、みんな心配してくれる。イスに座り、世間話をして休んでいると、ボスみたいなおっちゃんが登場する。話をしていると途中まで乗せてくれるらしい。やったー! おっちゃんがバイクをだし、おっちゃんバイクにまたがる。ここまで連れてきてくれた兄ちゃんも同行して、バイク二台で道をかっとばす。


 全速力で走ること10分、T字路にさしかかり、近くのGHで降りる。心からお礼を言い、1ドル渡すが受け取らない。握手をしてお別れする。残り7キロ、途中、15キロぐらい歩いたので余裕だ。


 1,2分して後ろを見るとライトが二個ならんでこちらへやってくる。おおおー、さっきの二人だ! おっちゃんは後ろに乗れとジェスチャーしている。かっこいいーーー!


 後ろに乗り、走ること10分、パクセーの近くで降ろしてもらう。最高にお礼を言う。いやー、おっちゃんはいい人だ。


 そこから歩くこと20分、昨日行ったネットカフェがみえてくる。ぶりってめぐちゃんに報告しようとするが、ぶりりすぎて言葉が出てこない。結局、メールは送らずに店をでる。メシを食べようとするがどこも開いていない。とぼとぼと静かな夜の街を歩き、GHへようやく到り着く。帰ってきた! 今日中には帰れないと思っていたので本当にうれしい。


 一服して爆睡する。長い一日だ。

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