奇襲

 前回から引き続き戦闘中です。

 ある意味世の中も戦闘中です。

 殺伐とした戦場(現代社会)で彼ら(私達)は何を思うのでしょうか?

 はい、言ってみたかっただけです。

第四話、奇襲始まります。



合衆国side

Aアルファ隊奇襲部隊


Aアルファ隊ニックよりBブラボー隊隊長機へ、現在高度39,400フィートを飛行中。奇襲可能です」


 ニックたちの乗るピジョンはほぼ実用上昇限度である12,000mの上空を飛行している。

 速度は340km/h、真っ直ぐ飛んでいる事すら難しい。

 機関のレバーは完全に奥まで倒されており、燃料はみるみるうちに減っている。


「隊長機より、ちょっと待ってくれ今敵本隊が見えてない。戻ったら指示を出す」


「了解。後5分もすると帰還できるか怪しくなるので早めにお願いします」


 運命の瞬間は刻々と迫っている。




主戦場

 両軍の戦闘機が入り乱れて乱戦の様相を呈している。

 ある機体は敵機を追いかけ旋回し、ある機体は射撃中の敵機へ急降下を仕掛けている。

 共に実力は拮抗しておりお互いジリジリと数が減っている。


 高度の優位を生かしやすいのは壱式艦戦の方と言えよう。

 スパローとは5,000kg以上の重量差があるため、急降下時の加速は壱式艦上戦闘機の方が格段にいいからだ。

 しかし、それ以外の多くの部分でスパローが優れている。

 旋回性能、加速性能、最高速度、上昇力など基本性能は自軍基地の防御が主任務で航続距離を考えなくてよい邀撃ようげき機だからこそ小型の機体に大出力エンジンを積むという方法で極限まで引き上げてある。

 大口径の機関砲で攻撃力も充分だ。

 数の優位で押し潰される機体もいるが、壱式艦戦は木の葉のように逃げるスパローに対してうまく射線を合わせられない。


 一方でスパローもまた、数で劣るため回避機動が大きく制限されている。

 パイロットは皆ベテラン、機体性能も上回っているが、それでも2倍以上の数の差は埋め難い。

 損失機数こそ帝国側の方が多いが、僅かに合衆国の方が劣勢だ。

 このまま続けばスパローは戦術を維持できなくなるので厳しい状況だ。

 戦闘は続く。



帝国side

「鈴木、後ろはどうだ?」


「遥か後方に敵2機っす。特に問題にはなりません」


「よし、なら11時の敵機を誘導する。青木、頼んだぞ」


「了解、中山、後ろはどうだ?」


「問題なし」


「仕掛けます」


 青木隊員が降下しながら新型機を追う。

 それに気がついた新型機は青木隊員機に向かって舵を切りブレイク。

 オーバーシュートした青木隊員機に対して適当に射撃しけん制しながら回避行動をとる。

 敵機が自分の内側に居ることを察しての行動だろう。実際に居たし、しっかり狙って攻撃を開始していれば撃墜できたはずだ。

 逃げているだけではジリ貧だが、高度の回復が簡単な敵は何度も降下射撃が出来る。

 練度の高いパイロットが囮になることで反復攻撃をされ、既に何機かの味方が撃墜さている。


「鈴木、後ろはどうだ?」


「大丈夫です。やっちゃってください」


「よし来た」


 敵機の方向に鋭く曲がりながら急降下を行う。

 重量が大きく、空気抵抗によるエネルギー損失の割合が少ない壱式艦戦はグイグイと加速し、誘導された新型機の正面に迫る。


射撃!


 真正面から機関砲を撃たれた新型機はしかし、敵パイロットの巧みな操縦により致命打を免れた。


「鈴木!」


「はいよー!」


 取り逃した新型機を後ろにいた鈴木が追撃する。

 運悪く風防を貫通した22粍弾がパイロットに直撃し、真っ赤に染まった敵パイロットだったモノは空中に放り出された。


「あちゃー、やっちゃいましたね」


 空中戦でパイロットが撃たれて死ぬのは珍しくないが、風防が汚れるほど近くで死ぬのは珍しい。


「まあ、仕方ないだろう」


「戦いづらいですよ」


「まあ、頑張れ」


 4機の壱式艦戦は高度を回復し終えた班と入れ替わりで主戦場から離脱した。



合衆国side

 二機のスパローが主戦場に戻ってきた。

 後ろを飛ぶ隊長機は無線で指示を出す。

 標的は今まさに自軍機を追い詰めている壱式艦戦ルーク

 ピジョンが急降下を始める、スパローと比べても軽量なピジョンは翼の強度が機体の重さに対して非常に大きく、急降下制限は時速1,000kmにも達する。

 4機のピジョンはほとんど垂直に降下しながらそれぞれの目標機に向かってダイブし、機関砲を放つ。

 敵機がピジョンの急降下に気付き慌てて回避行動をとろうとする。


遅い


 遷音速時特有の振動を感じながらニックは一機を撃墜、そのまま離脱した。

 充分に距離を取り、エアブレーキを展開して減速し、ゆっくりと機首を上げる。

 すでに燃料は限界、ゴーアラウンドすら怪しいので滑走路への侵入も失敗できない。

 途中で会敵すれば間違いなく墜落だ。

 しかし、彼には安心感だけがあった。


Aアルファ隊ニック他三機、基地へ。燃料切れのため帰投する」


「基地から、Aアルファ隊ニック、生きていたか。あいにく帰る場所はもうすぐ無くなりそうだ。ついさっきナタリーが爆撃隊を発見した。ダグラスは敵揚陸艦隊に触接している。今は機密書類を焼いているところだ。オマエの分の白旗も用意してやる。幸い帝国軍の捕虜の待遇はかなり良いらしい」


「そう……ですか」


「……ようやく息子の元に戻れる」


司令官は無線を切った後そう呟いた。


 さて、そろそろあとがき欄に書くこともネタ切れしてきたので普通に書きます。……何を書くのが普通なんだ?

 まあいいや、次回は第五話、邂逅です。

次回もお楽しみに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る