2話 いざマッスルワールドへ!


「クッ……なんだこの世界は……」


 目を開くと、賑やかな街並みが広がっていた。道沿いにはカラフルな店が並び、やたらとマッチョな男達がスマイルを振りまいている。


 町を歩いている人達は男女問わず露出の多い服装で、筋肉を見せびらかしている。


「まさか……文字通りマッチョだらけの世界とは……」


 オレは清楚で可憐な少女が好きなのに、この世界の女子はダイナマイトボディばかりだ。


 ぴったりとしたTシャツに、爽やかな笑顔。そして、やたらと大きい胸に、健康的な足。


 エロい! まぶしいくらいエロい!


 しかし、オレが本当に好きなのは筋肉美女じゃないんだっ! 守ってあげたくなるような可愛い少女だっ!


 ……この世界にはいないんじゃないか!? オレの好きな清楚で可愛い美少女は!?


「……あの、大丈夫ですか?」


「えっ」


 振り向くと、そこには究極の美少女がいた。


 シャンプーの香りがしそうなサラサラの黒髪。下から覗き込んでくる大きな目。小さな鼻に潤った唇。


 年齢は中学生くらいか。体は細身だけど、肌は健康的だ。この世界には珍しいノースリーブのワンピースを着ている。


 なんだこの子は!? オレが今まで出会ってきたどの美少女達とも違うぞ! 何かが違う!


 本能的に「美少女ぉぉおおおおおお!」と叫びたくなるような、魅力が溢れてる感じだ!


「あの、具合が悪そうですよ? よかったら、店の中で休んでいかれてはどうでしょう?」


「具合が悪そうに見える? オレが?」


 オレは健康だけには自信があった。


 顔はぽっちゃりしてるし、肌は常に油分が浸透してる。さらに、コレステロールや脂肪といった栄養をたっぷり摂取してる。学食のおばちゃんも「たくさん食べて健康だねぇ」と、毎回ごはんを特盛りにしてくれるほどだった。


「え、だって、そんなに痩せちゃってますよ! 顔色も悪いですし」


「ハッハッハ、そんなわけないだろう。何を言ってるんだきみは……」


 そう言って、自分のほっぺたを元気にペチペチ叩いたオレは、生まれて初めて、自分に頬骨があることを知った。


「え……?」


 店のガラス窓を見て気づく。


 オレはげっそりとやせ細り、実年齢は変わらないものの、まるで武道の達人のような、初老じみた顔つきになっていた。


「ええぇえええええええええ! 痩せてるぅうううううううううううう! っていうか、ちょっと渋くてカッコイイじゃんんかぁああああッ!」


 人生で一度もイケメンなどと呼ばれたことのないオレにとっては、痩せただけのこの顔も充分にイケメンだ。なんで痩せたのかは知らないけど、これは嬉しい。


「いいから早く店に入ってください! ……自分でカッコイイとか、重傷ですよ……」


 少女の最後の言葉はよく聞き取れなかったが、オレを心配してくれるその表情はめちゃくちゃ健気で可愛かった。


「じゃあ、お言葉に甘えて、休ませてもらおっかなぁ! 金持ってないけどいい?」


「クスッ、大丈夫ですよ。具合が悪い人からお金なんて取りませんから」


「ありがとう! 君は天使だ! いや、筋肉畑に咲く一輪の花だ!」


 オレは言語能力をもう少しレベルアップさせておくべきだっと後悔しながら、少女に先導されて店の中に入った。


 そこはカフェテリアのようだった。中には色黒マッチョなオッサンや、色白マッチョなオッサンや、ただひたすらにマッチョなオッサン達が、仲良さげに談笑している。


「やぁ! そこのボーイ! ずいぶんと元気がなさそうじゃないかぁ! さては筋トレをさぼってるな?」


「いや、サボるどころか、筋トレなんて生まれてこのかた一度もしたことないぞ」


「「「ハッハッハ」」」


 なぜかオレの一言が、オッサン達に大ウケした。中でもダンベルを枕にしてそうな超絶マッチョなオッサンは、テーブルを叩きながら大爆笑している。


 いや、テーブルがミシミシ言ってるぞ。


「ティフシー、君のボーイフレンドに君の得意なアレを作ってあげてくれ!」


「はーい」


「え、おごってくれるの!? サンキュー! オッサン、いい人だな!」


「フッ、いいってことさ! 君は見るからにたんぱく質が足りてないようだからな! 彼女のとっておきを飲んで元気を出すといい!」


「そうさ、彼女のとっておきはすごい効くんだ。疲労した体がよみがえるはずさ!」


「ラッキー! 美味しい異世界ドリンク楽しみだーっ!」


 ちょうどのどが乾いてたところだ。飲み物なのになぜか「たんぱく質」という単語が聞こえたのは気になるけど、たぶん大丈夫だろう。何よりティフシーとかいうあの可愛い子の手作りジュースだ。たぶん、ほっぺたが落ちるほど美味しいだろう。ほっぺたはもう落ちてるけど。


「はーい、お待たせー!」


「サンキュー! いっただっきま……」


 オレは彼女から受け取ったタンブラーを見て、自分の目を疑った。


 それは、あまりにも濃くて気色の悪い、紫色だった。上にはラテアートのような感じで、緑色の斑点が散らしてあるのだが、その斑点が紫色に滲み、地獄のようなおぞましい色合いになっている。


 それはけっしてポップなパープル&グリーンではなく、前衛的な画家が死ぬ間際に書いたダイイングメッセージと言われた方がしっくりくるほどだ。


「あの、ティフシー? これってちなみに……何?」


「見ての通り、プロテインドリンクですよ!」


 世界中が元気になるような、エネルギーに満ちた笑顔で言うティフシー。


 この子に悪意がないことはわかった。だからこそ逃げ場がない……!


「そ、そっかぁ……プロテインドリンクかぁ……初めて飲むなぁ……いただきます」


 粘度の高い液体が、頬の内側から舌の裏側まで、余すことなく、この世の地獄を伝えてくれた。


「ぐぼぇっ……」


 オレは猛烈な吐き気を堪えながら、悪魔のような液体を飲み込む。よくある魔女がグツグツ煮てる鍋の中身は、おそらくこれに近い味だろう。


「あの、そういえば、お名前なんて言うんですか?」


「ぐぉ……ごべ……ば」


「え、ゴディバさんですか?」


 違う。オレはそんな高級チョコレートみたいな名前じゃない。


「ズ……ダァアア」


「え、ひょっとして外国の方ですか?」


「素(す)……蓋(ぶた)……」


「あ、素蓋さんなんですね」


 ティフシーはオレに顔を急接近させると、太陽が無くなっても生きていけそうなほど明るい笑顔でたずねてきた。


「素蓋さん、元気になりましたか?」


「ゴホッ……グヘァ……ガッハ……」


 のどに粘着質な刺激を受けているオレは、生まれて初めてするタイプの咳を繰り返しながら、首を横に振る。


 おそらく、今オレは人生でトップ3に入るくらい体調が悪い。たぶん、死の七メートル手前くらいだ。


「そんなっ、プロテインを飲んでも治らないなんて!」


 プロテインて万能薬だっけ? 違うよね? ボディビルダーとかが飲むやつだよね?


 ティフシーはポンと手を叩くと、オレの手を握った。


 思ったより握力が強くて驚いたが、手はやわらかくて温かい。ティフシーのぬくもりと一緒に、オレの体内にエネルギーが注入されてくるかのようだ。


 そんな癒し系聖女のようなティフシーは、大きな瞳でオレを見つめる。


「素蓋さん! 店にトレーニング器具があるので、よかったら使っていってください! 元気がないときは、トレーニングですよ!」


「……へ!?」


 オレはティフシーの言った言葉をまったく理解できなかった。『三×五=メソポタミア文明ですよね?』と言われたような感じだ。


「ちょっと待って、ティフシー!? 元気がないのにトレーニングっておかしくない!?」


「何言ってるんですかぁ! トレーニングは健康にいいんですよ! ほら、こっち来てください!」


「ちょっと待っ!」


 思ったよりも力の強いティフシーに引っ張られて、オレは店の奥へ連れて行かれた。


 というか、ティフシーの手を握っていたかったということもあり、オレは抵抗しなかった。


 そして奥の部屋に入ると、そこには一人の美女がいた。


 黒髪のロングヘア。ぷっくりした唇。そして引き締まった抜群のプロポーション。


 黒のパンツに白のワイシャツというフォーマルな服装だが、ヘタに肌を露出させている街中のマッスル女子達よりも、スタイルの良さがずば抜けて綺麗に見える。


 そして、何よりも二つ開けたボタンと、その下にある巨大な胸!


 まるで太陽を二つ持っているかのような、圧倒的なエネルギー! 引き締まった体から、母性とエロスが飛び出したような二つの丸みに、オレは思わずアホみたいに口を開いた。


「誰?」


「こちらは店のオーナーのシュリカさんです。シュリカさん、こちらは素蓋さんです。具合が悪そうでしたので、こちらでトレーニングをしてもらうことにしました!」


 具合が悪いのにトレーニングって、おかしいでしょ! と、このシュリカさんという美女が突っ込んでくれることを祈ったのだが、残念ながらシュリカさんの言葉は違った。


「ティフシー、その前にプロテインは飲ませたの?」


「はい、ちゃんと飲んでいたきましたよ!」


「そう。それでも治らないなんて大変ね」


 シュリカさんは蠱惑的な笑みを浮かべ、オレの肩にトンと手を置いた。


「好きなだけ使っていいわ。たっぷり汗流していってね、素蓋くん」


 いや、おかしいだろぉおおおおおおおおお!


 この世界の治療法は、プロテイン+トレーニングなのか!? 本当の病人だったら絶対悪化するぞ!


「素蓋さん、まずはバーベルから初めてみましょうか?」


「嫌だよ! オレはトレーニングなんてしたくない! みんなにチヤホヤされながら、まったり過ごしたいんだっ!」


「大丈夫ですよ! 慣れてないならお手本を見せますから!」


「いや、お手本なんか見せられてもやらないよっ!」


「そんなこと言わないで、一緒にステキな筋肉作りましょうよ!」


 ティフシーはオレの手を握って、キラキラしたまなざしを向けてきた。


 長い睫に上目遣いの可愛さと、ギュッと握ってくる両手の絶妙な力強さに、『まぁ、この子がそこまで言うならいいかな』と思いかけた。


 いや、でもダメだダメだダメだ!


 思い出せオレ。運動会や体育や体力測定でしてきた数々の失敗を!


 オレにあんな鉄の塊を持てるわけがない! 目の前のサッカーボールを蹴ったら股間に跳ね返ってくるような運動音痴だぞオレは!


 こんなマッチョ御用達のトレーニングなんてしたら、命に関わる!


「ティフシー。実はオレ、鉄アレルギーなんだ!」


「グリップ部分はコーティングしてあるので大丈夫ですよ」


 ぐっ! と親指を立ててウインクしてくるティフシー。めちゃくちゃ可愛い。でも、『マックグリスさーん』と、さっきのゴツいおっさんを呼ぶのは止めてほしいな!


「なんだい? ボーイ&ガール。おじさんに筋肉の相談かい?」


「はい。そうなんです! マックグリスさん、素蓋さんにバーベルトレーニングのお手本を見せてあげてくれませんか?」


「はっはっは、ティフシーの頼みなら、お安いご用だよ! いつも美味しいプロテインドリンクを作ってもらってるからね!」


 味覚大丈夫かこの人?

 

 色白マッチョのマックグリスは、スポーツバックからグローブとタオル、スポーツドリンクにゴムのチューブ、着替えのTシャツに腹に巻き付けるベルトなどを取り出した。かなり本格的だ。


 なんでこんなもん持ち歩いてるんだよ……。


「マックグリスさんは、ボディビルダー育成学校のライセンスを持ってるすごい方なんですよ! ベンチプレスも二百キロ持ち上げられるんです!」


「はっはっは、その通り! 僕に任せてくれれば安心ってわけさ!」


 そういって、オレの肩をズバシンッッッ! と叩いてくるマックグリス。危うく肩が外れるところだったぞ!


 やっぱり、こんなマッチョのトレーニングなんかに付き合ってたら、命がいくつあっても足りない!


「じゃあ、まずは手始めに、僕の最大重量のスクワットを見せてあげよう」


「いや、お手本でしょ? 適当でいいよ!」


 なんで最初からマックスパワーなんだよ。加減を知らないのか?


「わぁ! マックグリスさんの最大重量が見れるなんて! 素蓋さん、ラッキーですよ!」


 オレの左腕の辺りを掴んで、ぴょんぴょん飛び跳ねるティフシー。野生の小動物みたいな可愛さだ。


 しかも、上下に揺れる胸がポヨンとオレの腕に触れた。


 天使のほっぺたのような感触が腕を伝わって脳まで浸透してくる。たっぷりの弾力と、腕を吸い込みそうな柔らかさ。幸せの感触だ!


「た、たしかにコレはラッキーだぁああああ! イヤッホォォォオオオー! テンションあがってきたぜぇええええええ!」


 もうオレの左腕はティフシーの胸の感触を一生忘れないだろう。


「ハッハッハ! そんなに期待してくれるのかい? それなら特別に、もう一枚重りをプラスして見せよう! これまで試したことのない三百五十キロさッ!」


 なぜか上機嫌なマックグリスは、鉄の棒の左右に、丸い鉄の塊を二つ付け足した。


 そんな鉄の重さなんて心底どうでもいいが、オレの頬はさっきからゆるみっぱなしだ。たぶん好きなアーティストに耳元で歌ってもらっているくらいの幸せなフェイスをしているだろう。


「ハッハッハ、さらにプラスして、四百キロにしようかな!」


 マックグリスは笑顔でそういうと、さらに円盤を追加した。もはや床が抜けないか心配なレベルだ。


 ……これ持てる人間とかいるの? ちょっと興味沸いてきた。


「マックグリスさん、本当に大丈夫ですか?」


「フッ、大丈夫さ! 僕の最高のスクワットを見せてあげよう! 君達のアドレナリンは大放出間違いなしさっ!」


 爽やかな笑顔で言うと、マックグリスは丸い容器から粉をつまみ、大きな手にすり込んだ。そしてグローブと腹ベルトを装着すると、両足を大きく広げて腰を落とし、棒に指を置く。


「こうして持つ位置を測るのさ。最大限のパフォーマンスを発揮するためには、最高のポジションを握る必要があるからね!」


「ふむふむ、なるほど」


 この世界に来るとき記憶力を強化したけど、忘れる能力も強化しておけばよかったな。


 いまの知識は絶対一生使わない。


「そして、小指に力を入れてグリップしたら、体幹に力を入れるんだ。そして全身の筋肉に呼びかけるのさッ!」


 マックグリスは大きく胸を膨らませると、目を見開いて叫んだ。


「プリーズ! ギブミー! パワーッッッッ! マイマッスル! ヘイッ! マイマッスルッ! ギブミー! パワーッッッ! ギブミィイイイイイッッッ! パァアアアアワァアアアアアアアアッッッッッ!」


「おぉっ」


 テレビでしか見たことがないような超重量のバーベルが、マックグリスの膝まで持ち上がった。


 このオッサンほんとに凄いな!


「そしてここからが本番さ!」


 マックグリスはいい笑顔で言うと、『フンヌァアアアアッッッッ!』とドライヤー並の鼻息をたてながら、さらにバーベルを頭上まで持ち上げた。


 顔は血管が浮き出て真っ赤になっている。白い歯を見せてニカッと笑顔を作っているが、目が血走っていて怖い。


「すごいですッ! すごいですよマックグリスさん! 素蓋さん、見てますか!? すごいですよっ!」


 ティフシーは春の日差しのような明るい声でオレの耳を喜ばせながら、ぐーに握った手を上下させる。


「マックグリスさん、ナイスマッスルですよっ! あとはスクワットするだけですっ! ファイトマッスルーっ!」


 マックグリスは頬の筋肉をぷるぷる震わせながら、バーベルを背中側に回した。


「ふんぬぁああああああああったぁあっ……ぐほぇッ」


「え?」


 その瞬間、急にバランスを崩したマックグリスは、オレたちの方へ転んだ。


 しかもタイミング悪く、バーベルを持ち上げた瞬間だったので、鉄の塊がオレたちの方へ飛んでくる。


「きゃああああああああああああああーっ!」


 思わず興奮してしまいそうなほど可愛い悲鳴をあげるティフシー。この子も女神と同じくらい可愛い声だ。


 異世界の美少女と一緒にペチャンコになって死ぬフラグがビンビンに立っていたが、なぜかオレは妙に落ち着いてた。


「よっと」


 オレはティフシーの前に一歩踏み出すと、バーベルの端の方を掌底で押して軌道を変えた。バーベルはクルッと半回転して、ティフシーから離れる。


 そして、バーベルが床に落下する直前。オレはグリップの部分を握り、ひざを曲げるようにして床にスッと下ろした。


 なんか自然にできたな。


 これがオレの技術(テクニック)かぁ……。


 自分ではあまりすごいという実感がないな。まばたきするくらい簡単だった。


 ……やっぱりこんな地味な能力じゃなくて、パワーを強化しておけばよかったな。


「ふぇっ」


「なっ」


 ティフシーとマックグリスはポカンと口を開けた。そしてたっぷり三秒間固まる。


「えぇええええええええええええええええ!?」


 二人はアゴが外れそうなほど口を開いて絶叫した。


「素蓋さん!? なんですか今のパワーは!? そんな筋肉、一体どこに隠してたんですかっっっ!? すごいビューティフルマッスルですよ!」


「キミのマッスルは素晴らしいじゃないかっ! ハッハッハ! キミは素晴らしいぞ! ナイスマッスルッ! スペシャルでプロフェッショナルなマッスルだッ!」


「ボキャブラリー少ないな!」


 マッスル連呼しすぎだろ。しかも、オレのもやしボディを絶賛するとか、なんのはずかしめだコレは!?


「素蓋さんっ、本当にすごいですよ! そのビューティフルマッスルがあれば、きっとボディビルダーになれますよ!」


「イエスッ! まさにその通りだ素蓋くん。キミほどの筋肉があれば、世界中の憧れの職業『ボディビルダー』になるのも夢じゃないさ!」


「なにこの新手のいじり方!? なりたくないよ! っていうか、ボディビルダーってそんな人気な職業なの!?」


 歌手とか漫画家とか声優とかじゃないのか!?


 二人ともヒーローに出会った子供のように、目をキラキラ輝かせている。


「素蓋さんっ、私は筋肉のある男性って、素敵だと思いますよ!」


 ティフシーは背伸びして、顔を接近させてくる。子犬のような愛くるしさだ。


「素蓋さん、よかったらこれから毎週、私と一緒にトレーニングしませんかっ?」


「いやだ、オレは筋トレなんか興味ないよ!」


「そんなこと言わないで! 一緒に筋トレしましょうよーっ! そしたら毎日、一緒に汗流せますよ?」


「うっ……!」


 こんな異次元の可愛い顔で見つめられたら、断りづらい!


「ねぇ、素蓋さん? とりあえずお試しで、今日泊まっていくのはどうですか?」


「泊まり!?」


「はい、私がシュリカさんに頼んであげますよ!」


 シュリカさんていうのは、さっきのあの美女か!


 異世界で行く当てなんてないし、こんな美女&美少女とひとつ屋根の下に泊まれるなら……! 悪くない! いや、むしろいいんじゃないか!?


「じゃあ、お言葉に甘えて、今日は泊めてもらおうかな!」


「わーいっ! 朝までたっぷり汗流しましょうね! 素蓋さん?」


「お、おーっ!」


 この夜、オレは足腰が立たなくなるまで、ティフシーのトレーニングに付き合わされた。



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