あやかし話をもうひとつ

作者 片瀬智子

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★★★ Excellent!!!

『あやかし話をもうひとつ』、なるほど!
読み終わった後にそう思ってしまう仕掛けがありました。

不思議なお話を買い取るという、これまた不思議なお店が舞台の物語。

そこで話されるいくつかの奇妙な体験談により読者は完全に非日常的な感覚へと導かれます。そして、その先で待っているラスト。
予想もしていなかった結末に驚くこと間違いなしです!

★★★ Excellent!!!

あやかし話を書い取るという始まりからまず怪しい匂いがプンプンします。なんのために……というのは読んでのお楽しみです。そして待ち受ける結末。これも読んでのお楽しみ。

やはり作者の巧みな筆力が際立っています。物語の中に引き込まれるような感覚。読んでいるうちに、気付けば自分が落ち着いてゆったりしている。作者の持ち味である文章から滲み出る優しさや、心を暖めてくれる雰囲気で読者の心を鷲掴みしてきます。これって中々出来ないはずです。

短いながらも、ギュッと凝縮されたショートストーリー。是非手に取ってください。

★★★ Excellent!!!

非常に興味深く拝読させていただきました。
病弱で、寝たきり生活の語り手『僕』……学校に行かず家業の店番をかろうじて手伝うことで生計を立てているようですが、何かワケアリめいた導入部に興味津々です。

そんな彼のもとに押しかけつつアルバイトの店番もこなす幼馴染、華子。
『僕』の看病をしつつ、接客もして……よく出来た子です。『僕』の病気を治すためには、不思議なあやかし話をお客から買い取らないといけないとか言い始めたときは、一体この子の思考回路はどうなっているんだと思ったものですが(笑)、この世界がオカルトであると認識したとき、実に妥当な設定であると合点がいきます。

世界の説明、設定の描写。
大半を台詞で済ませてしまっている点はともかく、それをきっかけにさまざまな『不思議な話』が店に持ち込まれます。
それぞれのお話が非常に面白く、ちょっと怖くて、ちょっと奇妙で、ちょっと楽しみ。

実際に体験者から仕入れたエピソードというのも、背筋がゾクゾクしました。

中でも、同じ道をぐるぐる……というお話は、脳科学的に言うと、何かに気を取られると他の感覚が散漫になり錯覚・誤認をもたらす、というメカニズムで説明できるものの、もしも本当に何かのチカラが働いていたとしたら……? と考えると、非常に興味深いです。
山というのも、古来よりアヤカシが登場するお約束の場。

最後に『僕』と華子が迎えた結末も、実に綺麗にまとまっていました。
題名も素晴らしい。『もうひとつ』、と追加して迫り来る感覚。最大のあやかしとは何のことだったのか……そこに本作の仕掛けが隠されています。