生い立ち

@ofpi1425

第1話

桜が咲く季節。ハルは高校に入学した。

春にしては冬のように寒かった。


「ねぇ~ ハルぅ」


呼んだのは小学時代からの親友、愛子だ。


「あ"?、愛子か・・・」


なんか素っ気ない。

それもそのはず、この寒さで入学式というつまらない行事を行う体育館に行かなければならないと思ったはるは億劫になっていた。


「何その反応。めっちゃ酷いんだけど!」


少し怒り気味の愛子。


「ごめ~ん。寒くてさ。許して」


そう言うはるを渋々許す。

いや、ハルに甘く許してしまうのが愛子なのだ。

体育館に行く途中、ハルは見てしまった。あのカッコイイ横顔を・・・


「・・・ル?・・・ル?・・・ハ~ル?」


何回愛子に呼ばれても気が付かずあのカッコイイ横顔に見とれていた。


「はっはいっ!」


思った以上にデカイ声。

みんながハルを見ている。

ハルは顔が真っ赤になっていた。


『やっべ~。顔真っ赤だよ。どうしよう。めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど』


下を見ながらこう心で嘆く。

体育館に着き、一層寒い中、校長先生の長いお話が始まった。


『なんだよ、こんな話要らねぇよ。さみぃよ。早く終わってくれ!』


と、思っていた矢先にハルは近くにいたカッコイイ横顔が目に付いた。


『うー・・・んー・・・ヤバイ・・・やっぱこのまま話続けて』


下を向くハル。顔が赤くなっていく。

カッコイイ横顔が後ろを向いた。

前から見ても顔はカッコよかった。


「え・・・ヤバっ。チョータイプ」


ボソッと呟いてしまった。

皆、校長先生の話を聞いていないで雑談してる人ばかりだったものの、こんな言葉を発してしまって恥ずかしく思うハル。

校長先生の話も終わり、色々やった後入学式が終わった。


「ハル~。教室帰ろ」


愛子が来てしまい、カッコイイ横顔の人が見えなくなってしまった。


『あ~ぁ。せっかく顔見えたのに愛子のせいで・・・まぁいっか。でもなぁ教室違うし・・・』


などと思いながらも愛子と教室に戻った。

教室に戻ると、部活などの決め事をやった。

ハルと愛子は決まって帰宅部に入った。

学校も終わり帰宅時間になった。

帰る途中あのカッコイイ横顔がいた。

「ねぇ あの人かっこよくない?」

愛子が言う。

ハルは、強気になるか本音を言うか悩んだ。


「え?いや・・・別に」


悩んだ末、強気を選んだ。

この時本音を言っておけば名前やら何やら知れたはずなのに・・・


「そう?じゃ名前とか教えなくていいよね」


愛子は、ハルが一目惚れしたのを知った上で言っている。


「なんで名前とか知ってんの?」


ちょっと怒っている。いや名前を知っている愛子に嫉妬をしていた。


「かっこよかったから3組の志織に聞いてみた」


ニヤニヤと小バカにする愛子。

愛子は特に、カッコイイとも思っていない。

酷いにも程がある。

家に帰り、ハルは志織にメールをしてみた。


[ねぇ 3組のイケメンて噂されてる人の名前って何て言うの?]


打って送らないか悩んだが送ってみた。


【ティロリン♪】愛子からだ。


『なんだ愛子か・・・今はシカメでいいや』


【ティロリン♪】今度は志織からだ。


[う~んとねぇ、柴山明人くんだよ]


何の疑いもなく送ってきてくれた。と、思いたい。


[ありがとう。じゃまたねぇ]


【ティロリン♪】


[ねぇ メール見てる?]


[ごめん。送るの忘れてた。つーか見てない]


【ティロリン♪】


[え~。じゃもっかい送るね。今度てゆーか明日なんだけど3組のイケメンて噂されてる人とかと遊ぶんだけど、ハルも来る?]


『もっ もちろん行っきまーす』


これは、いいチャンスだとハルは思った。


[うん。行く~]


愛子だけには明人君に好意を抱いていることを知られたくない。


【ティロリン♪】


[じゃ決まりね。てゆーか本当に行く気あるの?]


いちいちうるさい愛子である。


[あるよ。じゃまた明日ね]


朝になるなり、なぜかウキウキしているハルである。


『きょーは楽しみだぁ』


身支度をし待ち合わせ場所に行く。

ハルはこの時ばかりは女の子らしい格好にした。


「どーしたのハル!?なんかいつもと違う感じだけど」


集まっていた人達皆声を合わせて言った。


「あ"?いつもと同じだけどなにか?」


そんなことを言っていると明人君が来た。


「皆揃ったね。じゃしゅっぱーつ」


ハルと愛子と明人君そしてあと3人いる。

その中の1人が明人君ばかりと話をしている。


「ーーそれでね」


「ごめん。俺さ話したい子いるからまた今度話そう」


そう明人君が言うと、ハルの方へやって来た。


『え なに?なんで明人くんがあたしの所に!?』


「ちーっす。名前何て言うの?」


明人君は恥ずかしいのを隠しつつ明人君なりに頑張る。


「・・・ハルって言います。」


「ハルって言うんだ。今の季節だな」


「・・・はい」


ハルはなぜか敬語になってしまう。


「なんか俺の前だけ敬語ってやだな。タメ口でいいよ」


「え・・・あ・・・うん」


初めて会う明人君を前にして本当にタメ口でいいのか躊躇う。


「なんでそんな素っ気ないの?」


少しションボリする明人君。


「そ そんなことないよ。素っ気なくないから大丈夫だよ」


ハルは焦った。


「よかったー。俺、嫌われてるのかと思った」


『そんなことない。好きです』


今にも口にしそうなハルである。


「俺、好きな子いるんだよね」


『ま まじか・・・ あたしはその相談役って訳ね・・・』


ハルは勝手に変な解釈をしてしまい一気にテンションがダダ落ちになった。


「後で2人だけになれればいいんだけど」


明人君は今のハルの気持ちを考えていない。なぜかって?それはだねぇ・・・


明人君の要望で2人行動をすることになった。明人君とハルは2人になった。その他の人は男女関係なく行動をとっている。


『あ~ぁ なんで明人くんの相談乗らなきゃいけないの~?だったら愛子と行動とりたいよ』


泣きそうになるハルだ。

いつの間にか夕方になっていて、ますます泣きそうになる。


「あの夕日が見えるベンチに座ろうか」


「うん・・・」


ハルは一旦トイレに行くと言い涙を拭う。


「待たせちゃって、ごめんね…」


「目、腫れてるけど大丈夫か?」


そう言い明人君はハルの目を触る。


「うん・・・大丈夫だよ」


『なんでこんなに落ち込んでるんだ?俺なんかしたかな?』


明人君は考える。考えた末、明人君は早い所告白をすることを決意した。


「・・・」


明人君がハルを一目惚れしたことが恥ずかしくなかなか言い出せない。


「明人くん、どうしたの?」


「え・・・いや・・・あの~えへへ」


照れ隠しなのか笑ってごまかす。


『今度こそ言うぞ。俺頑張れ。』


「俺さ、好きな子いるって言ったじゃん?」


『相談始まっちゃったか・・・』


そう思いつつ、うつ向く。ハルは思い切ってなんで相談相手が自分なのか聞いてみることにした。


「ねぇ、明人くん。なんで相談相手が・・・」


「え?あのさ変な風に捉えないで欲しい。俺はお前が相談相手だなんてこれっぽっちも思ってない」


明人君は必死になる。


『ん?どういうこと?』


ハルはなにがなんだかわからなくて首を傾げる。


「お前は鈍感か?ハハハ」


ハルの頭をポンとして笑ってみせる。


「え?なに?あたし、わかんないよ」


「お前面白いな。そんなやつ彼女にできたら楽しいのにな。だから・・・俺と付き合ってほしい」


明人君は頑張って告白した。


「うー。明人くんのバカ。あたしも好きだよ。てか変な事考えさせないでよ」


「いや。お前が勝手に考えてただけだ」


正論を言う明人君。ハルはアホだ。


「俺ら、もう付き合ってるんだよな?ハルって呼んでもいいか?」


「いいよー」


ニコニコしながら嬉しそうに言う。


やがて夜が近づいて皆が集まった。


「今日は楽しかったね〜。さて夜になるので帰ろうか」


解散し、明人君とハルは一緒に帰る。


「あれ?ハルなんで明人くんと一緒にいるの?」


状況が掴めない愛子。


「あぁ。さっき俺が告った」


「!えっ!まじ?じゃあ付き合ったってこと?」


かなりの衝撃だったのかビックリする愛子。


「そうゆーこと〜」


ニカッとしながらハルが言う。


「ハル、明人くん、お幸せにね」


「ありがと〜」


「じゃあ 俺こっちだから、またなハル」


「うん。ばいばい明人くん」


3人とも違う道で帰った。


家に着くなりハルの携帯にメールがくる。


【ティロリン♪】


[今日はありがとな。]


『わーい。明人くんからだぁ』


たかがメールだけで喜び過ぎなハル。


[いいえー。明人くんから告白されてビックリしたけど嬉しかったよ]


明人君と初めてのメール。ハルは5分くらい考えてメールを送った。


【ティロリン♪】


[よかった。ハル泣いてたから俺、心配だったよ。結果アホって事がわかったしな。]


『あたしアホなのかなぁ?』


首を傾げる。


【ティロリン♪】


[ごめん。俺明日テストあるから勉強するわ。俺からメールしといてマジごめん。]


ハルはアホかどうか聞こうとしてた矢先に明人君からメールが来てしまった。


[うん。わかった。じゃあ、またね]


【ティロリン♪】


[おう。またな。]


朝になりボーっと起きるハル。


『今日、学校かぁ。めんどいなぁ。サボろうかな。でも明人くんいるしなぁ。まぁ行くか』


渋々、制服に着替える。


いつもと違う道で登校してみたハル。そこには思いもよらない事が起こっていた。


なんと愛子と明人君が一緒に登校している。


『え?なんで愛子と登校してんの?あたし明人くんと付き合ってるんだよね?』


訳がわからなくなるハル。後で理由を問い詰めようと決心した。


「おい。愛子!テメェなんで明人くんと一緒に登校してたんだよ」


ムカついていたのか、かなりデカい声で言うハル。


「…いや別に…」


目を逸らしながら言う愛子。


「あ"?テメェ、ハッキリ言えや。」


「やっぱりお前とは無理だ。昨日の事は無かったことにしてくれ。

俺、口悪い子は嫌いなんだ。愛子から聞いて試してみた。」


後ろから明人君がやって来てそう言った。


「は?意味わかんないんだけど。お前もお前で最低だな。」


もう、やけになっているハル。泣きながらハルはこう言った。


「…」


「あたし、帰る。」


ハルは沈黙を破り学校を去った。


家に着く。誰もいない家。ムカつきと悲しさがこみ上げる。ハルはカッターを手に取ってみた。


「カチカチカチ」


この音が鳴り響く。


『もう、あたしどうでもいい。切っちゃえ。』


手首を切りまくった。


[ドクドクドク]


血が床に垂れる。やがて、カッターでは物足りなくなり包丁を手に取る。


『今度はこれで…』


[ドクドクドクドクドクドク]


『なんだかクラクラするなぁ…』


ハルは貧血で倒れてしまった。

家に誰かが帰ってきた。


「ハル?ハル?大変。119しなきゃ」


お母さんである。


「救急です。早くして下さい。娘が…娘が…」


[ピーポーピーポー]


タイミングが悪かったのか救急車は遅めに着いた。


「早く病院へ連れて行って下さい。娘をなんとかしてあげて下さい。」


お母さんは必死になる。


「お母さん。落ち着いて下さい。○○病院へ行きます。」


[ピーポーピーポー]


病院へ着くとすぐ輸血をした。


「ハルさん。大丈夫ですか?」


「…」


ハルの応答はない。


ハルは既に亡くなっていた。


もうちょっと救急車が早く来ていれば亡くなることはなかった。


そして今ハルはどこかで10人の人達と一緒に生きている。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生い立ち @ofpi1425

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ