9 約束の【チカバの街】
第195話 ようやく見えたチカバの街
カラパスの村を出て数日、
森の中を抜けたり、野道を歩き続けたり、
旅の道中は色々あったんだけど、
「ほら、見えてきたよソーマ君。」
おれが押す荷車の上に乗って座っているジョンが前方を指差して、
「あれがチカバの街さ。」
四方を石壁に囲まれた街に向かって、そう言った。
*
チカバの街は、アルテナが購入した地図では左上に記され、
北には山々が、東にはソーマ達が通ってきた村やノースァーマの街が、
西は遠方に海があり、南へ
だが、オーソバの街へ行くには、
今ではドゥチラナカの街を経由するのが早く、
他の街と比べると、少し古臭くて見劣りするのが正直な所であった。
ただ、このチカバの街の近辺では農業の研究が進んでおり、
見渡す一面に整備された田畑の美しさが、それを見る人の目を奪っていた。
*
「わぁ、
ロスティも その美しさに目を奪われた一人であった。
カラパスの村で生まれ、カラパスの村で育ち、
子供の頃には村の周囲で遊んだことのある程度で、
別の村や街へや行くこともなかったロスティ。
そんな彼女にとって、数日の旅路は正直
長距離の移動、制限された食事、排泄に整容、就寝。
いずれの時も初めてが多く、また、危険に気を付けなければいけない。
初めて
そんな色々ある辛さも、街に近づいたという
目の前の風景の
(それにしても……)
ロスティは、自分が乗っている荷車を押しているソーマの背中を見た。
腕、足、腰に鎧を着け、
茶色の
その
ロスティは ソーマの着ている上衣が、
元々は
そして彼が愛用している
(一番 背が低い その体のどこにこんな
カラパスの村から目の前のチカバの街まで、
適度に交代はしていても ずっと荷車を押し続けていた。
ロスティも試しに荷車を押してみたが、
すぐに汗だくに なってしまい、以降、荷車を押すことは なかった。
(背は低い、鼻も低い、
ロスティは同じ荷台に乗っているジョンに視線を向け、
彼が
(なんだかんだで、好かれてるのよね……)
視線をジョンから荷車の近くで歩く、
アルテナ、シアン、ミザリー、バーント、ヴィラック、
そして もう一台の荷車を押しているマルゼダへ移していた。
(街に着いたら、それからどうするのかな? )
ロスティは再びソーマの背中へ視線を向け、
前を向いてチカバの街を見つめていた。
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