第189話 違い
シアンの笑顔を見て、内心
(改めて、出会った時からの事を思い出すと、
ソーマが魔族だろうと、いや、だからこそ 守らないと。)
その思いが強くなり、
ソーマとの約束を守ろうと、改めて誓っていた。
その一方で、
(それにしても、ソーマは……
時々、驚くような行動を見せるんだよな……
身の危険を考えないような……)
今までのことを語る内に、
そんなことも バーントは考えていたのであった。
*
バーントがシアンに、
ソーマとの出会いを語り始めていた頃――
ソーマとアルテナの待つ家へと帰る途中の、
ミザリー、ジョン、マルゼダ、ヴィラックの四人は
並んで歩いており、
「ジョン様。」
ミザリーが、隣を歩くジョンに小声で話しかけていた。
「ソーマ様って、その……」
ジョンにだけ聞こえるよう話すミザリーに、
「彼が何者だとしても、ボク達と『同じ』だろう? 」
同じようにジョンも、
共に歩くマルゼダやヴィラックに聞こえないように、
小声で返していた。
「……そうですね。私達と『同じ』ですね。」
ちょっと時間が かかったものの、
意図を理解したミザリーは口元に笑みを浮かべていた。
(私が黒魔導教団の人間であることを明かしていない ように、
ソーマ様が魔族であろうと、どこから来ようとも同じ事……)
内心を悟られないように、
ミザリーは一歩後ろから ジョンの後をついて歩いていた。
*
バーントとシアンが別行動を始めた時、
(ソーマ君ではなく バーントと話を……か。)
ジョンは、シアンが何について話そうとしているのか、
なんとなく察しがついていた。
(まぁ、無理も ないか……)
ジョン自身も、フローマ達に
魔物以上の脅威を、理屈抜きで感じていた。
まるで肌が凍りつき、
心臓を手で握られているような恐怖を感じながら、
それでもジョンが、
他の者たちに比べて平静を保っていられるのは、
(ボク達も、もはや 魔族と呼ばれる側になってしまった。)
そう思ったからであった。
ミザリーがソーマの事で話しかけてきた時、
「彼が何者だとしても、ボク達と『同じ』だろう? 」
と、ジョンは言い返したのには――
左目が赤くなったジョン。
耳の形が長く尖った形に変わったミザリー。
黒い魔力を体から放出できるヴィラック。
(他の者たちから見れば、ボク達も、ソーマ君と『同じ』だから。)
であった。
返事に満足したミザリーが一歩遅れて歩くのを、
ジョンは目で追い、視線を前を向け直して歩き続けているが、
かつて、パプル家の屋敷の敷地内で、
衛兵士のシェンナがソーマを殺そうとした時の、
――あの黒い煙に巻き込まれたこいつらは 魔族になったっ!!
その声が、思い起こされていた。
また ジョンは、ソーマとアルテナの待つ家へと帰る途中、
(ヤギの魔物を相手にしていた時、ボクもミザリーも……)
今まで使えなかった
使えるようになっていたことについて考えていた。
技術も知恵もない。ただ、肉体の持つ
ヤギの魔物を殺したジョン。
今まで通用しなかった矢に魔力を
深い傷を負わせたミザリー。
(ヴィラックは今 どうなっているのか わからないが……)
ソーマは
今回、フローマ達に
剣や槍などの攻撃は素通りし、
けれども、彼らを掴んで拘束するほどの
ジョンはアルテナから聞いていた。
(幽霊という存在を、ボクは初めて見た……)
幽霊を信じていないわけではないが、
今までジョンは見たこともなく、
(まるで魔力や魔法のようじゃないか……)
ふと、そんなことを考えていた。
*
ジョンやミザリー、ヴィラックと一緒に歩きながら、
マルゼダは、浮かない表情をして、
(ソーマやジョン達は魔族なんだろうがな……)
ちらりと 三人の様子に視線を走らせた。
――あの黒い煙に巻き込まれたこいつらは 魔族になったっ!!
――人を魔族に変えてしまうような
パプル家の屋敷の敷地内で、
ソーマを殺そうとした衛兵士のシェンナの言葉を思い出し、
(あの時、おれもディールたちも、あの黒い煙を吸ったはずだ……)
剣で刺されたソーマの体から黒い
屋敷の外へ逃げながらも黒い煙を吸ってしまったこと、
その場に居続けていたジョン達に 外見に変化が出たことを思い出し、
(もしかして、気が付いていないだけで、
オレも どこか変わってしまってるんじゃないのか? )
その不安で、青白い顔色に たらりと冷や汗が
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