第180話 愚者の進行
カラパス村の儀式の日、
一日中続いた お祭りも終わりを迎え、
おれとアルテナとシアンさんは、
独り暮らしのロスティさんを家へ送っていた。
その途中、そろそろ彼女の家へと着く道中で、
おれたちは複数の村人に待ち構えられていた。
この閉鎖的な村の中で、
消去法で彼らが村人だ って思ってるだけなんだけど……
お互い灯りになる物を持たず、けど 向こうは武器を持っている。
祭りの日で外に出ないからって、
今日に限って アルテナも剣を持ってきていないし……
「だ、誰ですか!! 」
ロスティさんが緊張した様子ながらも、
おれたちをかばうように前に出ていた。
ロスティさんも彼らが村の人達だって思ってるし、
それに彼女は、村の人達に人気があって――
「ひっ!? 」
―― でも、走り寄ってきた人影たちが、
それぞれ手に持っている槍や剣の切っ先を
彼女の顔に向け、ロスティさんは短く悲鳴を上げた。
「そ、ソーマさんっ……」
それを見て怖くなったのか、
シアンさんが抱き着いてきて、
「アルテナ。」
「だめ、囲まれてる……いつの間に……」
アルテナの返事に、おれも周囲に目を向けて、
おれ達は彼らに包囲されたことを知った。
「ついてこい。」
ロスティさんに槍を向けている一人が、
何かに妨げられて くぐもったような声で言った。
暗くて よくわからない人影だけど、
じっと見てると、顔に仮面か何かをつけていた。
恐らく、包囲している連中全員が そうなんだろう……
先頭を歩く連中が何かボソボソと言い合ったかと思うと、
それで奴らが、いろんな動物の顔の仮面をつけていること、
首から下はローブ……じゃないな、フード部分がないから、
大きめのポンチョを
この世界の人達は、色んな髪色をしているから、
それで こいつらが誰かがわかるかな? と思ったんだけど、
暗くて髪色がわかりにくいし、そもそも の話、
村の知り合いなんて ほとんどいないから、誰か わからない……
でも、こいつらが顔を隠したり、喋ろうとしないのは、
それでも ロスティさんに見破られるのを避けたいから なのかな?
くそっ、ロスティさんを人質に取られた形になってるし、
おれも みんなも、奴らに刃物を向けられて、
何か遭ったら すぐ刺されそうな状態になったし……
おれ達は このままの状態で、
奴らに どこかへと連れられていくしかなかった……
*
ソーマ達が謎の集団に捕まり、
どこかへと連れ去られている頃――
既に家に戻り、ソーマ達の帰りを待ちながら、
ジョン達は居間で
「あれ? バーントは どこに行ったんだい? 」
バーントの姿が見えないことに気づいた。
「お腹の中の物を出しに行ったのでは? 」
ソーマ達を出迎えれるように立ったまま、
入り口通路前で控えているミザリーは、
ジョンの言葉に 軽い気持ちで そう返していた。
「かなりソーマ達のことを心配していたようだったけど、
まさか 彼らを迎えに行ったわけじゃないよな。」
だらしなく机に突っ伏しながら
椅子に座っているマルゼダは、軽口を叩いて笑っていた。
「まさか……少し時間が かかり過ぎると思うけどね……」
「アルテナさんやシアンさんもいるんだし……」
ジョンとミザリーは芽生え始めた不安を消そうと喋り、
「バーントの奴は どうせ、
ヤギの肉を食い過ぎたのが 今になって響いたんだろうよ。」
マルゼダも軽く笑い飛ばしながらも、
バーントが早く帰ってくることを待ち望んでいた。
「……はぁ……」
ヴィラックは、ソーマが寝ていた位置で横になり、
大きく鼻で空気を吸って、
ため息のように口から吐いていた。
*
マルゼダの予想通り、そのまさか であった。
バーントは念のために 一振りの剣を
ソーマ達を迎えに、教会へと歩いて向かっていた。
(やはり、不安だ……)
予感にも似た不安を消しきれなかったバーントは、
ジョン達に内緒で家を抜け出したのであった。
すでに暗くなっている夜道を、
(シアンの魔法は 本当に便利だな。)
合流すれば、
バーントは判断していた。
バーントが歩いて教会そばまで来た時、
(まだ送ってる最中なのか? )
時間が過ぎ、未だに姿の見せないソーマ達に、
バーントの抱えた不安が さらに強まっていた。
しばらくは周辺をウロウロと歩きまわりながら、
ソーマ達が来るのを待っていたバーントは、
遠くにポツンと一つの火の灯りが見えて、
(ソーマ達かもしれないのに おれは……)
そう思いながらも、今まで冒険者として戦ってきた体は、
物陰から様子を
抱えた不安の強さから、ある種の予感がしていたから、
暗い夜道を歩き、その暗さに目を慣らしていたバーント。
(なんてことだ……)
そのバーントの目には、
謎の集団に囲まれて歩くソーマ達の姿が映っていた。
ソーマ達は、縛られたりは していない。
だが、いつでも攻撃できるように刃物を向けられていた。
どうすれば良いのかの判断がつかなかった。
バーントが歯がゆい思いで様子を見ていると、
(……教会の中に? )
ゾロゾロと中に入って行くのを見届けた。
その最中――
(ソーマ……っ!? )
バーントは、ソーマと目が合った気がした。
ソーマの目は不安や悲しみや涙に彩られることなく、
助かるための手段を探すための焦りや強さを秘めていた。
その目と合って、バーントは自分の行動を決め、
急ぎ 教会から離れたのであった。
ジョン達に救援を要請するために――
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