第78話 夜の空、地上の暗闇、人々は何を見るか?
「待たせたな。」
「別に良いわよ。」
ソーマとシアンに何があったかを推察していたアルテナは、
その夜、バーントをパプル家の屋敷の、建物の外に呼び出していた。
「それで、聞きたいこと……とは? 」
無表情ながら呼び出されたことに関して興味のあったバーント、
「……ソーマの首と腹についた痣。」
「―― っ」
そんなバーントの目が見開いて驚く動きに、
アルテナは確信を得て、
「知らないとは言わせないわ。あの時の動きを見ればね。」
そう たたみかけて追及した。
バーントはアルテナの様子に少し言うべきか迷っていたようだったが、
「すまない。」
頭を下げて、そう答えた。
「それで、ソーマに何があったの? 」
「実は―― 」
アルテナは、バーントから聞いた出来事に、
「あんたやジョンに落ち度があるのはわかった。
けど、ソーマを襲った連中が、あんなバラバラになってたなんてね……」
なんとも言えない表情で、そう呟いていた。
「……」
話し終えたバーントもなんとも言えない表情でうつむき、
「私はこれ以上、あんたに問い詰めたりしないわよ。」
目を伏せる彼に、
「ソーマのこと、守ろうとしてくれてるのも見たからね。」
アルテナはそう声を掛けて、屋敷の建物内へと戻っていった。
「……、……、……」
バーントは、しばらくその場所に立ちつくしたままであった。
*
アルテナがバーントと話をしていた頃、
マルゼダは、街の南の出入り口のところで一人立ちつくしていた。
ただ夜風に当たっていた。
―― わけではなく、彼の隣に足音もなく忍び寄る影があった。
「よく街中で生きていたわね。マルゼダ。」
「街の中か外か、どっちにいたんだ? セロー。」
影の―― 声の主に彼はそう返し、
「外よ。ちょうどこちらへ来ようとしていた頃だったかしらね。」
「そりゃちょうど良かったな。」
「そんなに怒らないでよ。」
マルゼダの言葉に彼女、セローはなだめるように声を上げた。
「怒ってはないさ。」
マルゼダは声の方には顔を向けないまま、
「こういう時、何もできなかったって思ってしまうのが嫌なんだ。」
空を見上げて、ため息を吐いた。
遠い夜空には雲一つなく、月のまわりに星々が
ノースァーマの街で、本当なら見れたであろう地上の煌めきは、
街の南側にしかなく、街のほどんどが暗闇に覆われていた。
悲しみに暮れる声や、やりきれない怒りの声、理不尽に絶望する声。
「オレに、戦う以外に何ができる? 」
マルゼダの言葉に、セローは返す言葉が思い当たらなかった。
*
「おれに……何ができた? ……おれは……」
立ちつくしたままのバーントは、地面を見つめていた。
「守ると……言ったのにおれは……」
両手を、両腕を見る。
その両腕の上に今、彼はいない。
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