おとり捜査は順調に進行中、とりあえず警告はしておこうか・吉原のテーマパーク化を更に推し進めよう

 さて、俺がおとり捜査要員兼用心棒として雇った浪人の男たちの中でも、妻子のないものは喜々として水茶屋へ出撃していった。


 妻子があるものはその視線が気になるものもいたようだが、結局は出かけていった者も居た。


 もっとも妻の尻に敷かれてるものはなかなか行けないようではあるな。


 まあ、その気持ちはわかるぜ。


「ああ、お前さんたちは俺の用心棒として鉄砲洲や深川の水茶屋に俺と一緒に一緒に来てくれ」


「ん、お前さんは何をするんだ?」


「一応、水茶屋に吉原以外での売春宿の違法営業はやめて素直に吉原に来てくれると有り難いって伝えておかないとな」


「ああ、了解だ。

 俺達は後ろでにらみを効かせておけばいいんだな」


「そうしてくれると助かるぜ」


 浪人はなんだかんだで苗字帯刀が許されてるからな、流石に槍持って歩くようなことは許されないとしても打刀と脇差しの二刀をもってるのは心強い。


 町奴の長脇差は許可されてるギリギリの長さまで伸ばして二尺(おおよそ60センチメートル)未満だが大小の打刀の大刀の方はニ尺三寸(おおよそ70センチメートル)と10センチほど長いわけでこの10センチほどの差は実戦では大きな差だ。


 だから旗本奴と争った町奴は大変だったみたいだぜ。


 俺は浪人を引き連れて船で鉄砲洲へ向かう。


 鉄砲洲は大川の河口にある州で21世紀だと築地のあたりになるな。


 名前の由来は鉄砲のような形をしていたからとも、鉄砲の試射を行う場所だったからともいわれてる。


 江戸時代は荷揚の港や漁港としてとても栄えてる場所だ。


 俺は鉄砲洲や深川の茶屋へ赴いて、俺が町奉行へ陳情を行い、茶屋のほうから吉原に引っ越したいと申し入れてきたら受け入れるとしたこと、納得しなければ問答無用でお奉行様へと引っ捕らえて差し出すことについての許可をえたことを伝えた。


「はあ、そういわれましてもね」


 訝しげな表情でそう答える茶屋の主人などは状況をよくわかっていないようだな。


 まあ、湯屋が200件もの建物を潰されたと行っても、結局経営者を捕まえて処罰したりはほとんどしないわけだから、幕府も甘いよな。


「まあ、吉原に来たくなったらいつでも来てくれ。

 お前さんたちの見世くらいは用意しておくからな」


「はあ、わかりました」


 まあ、水茶屋の主人たちの反応はだいたい同じような感じだった。


 21世紀でもたまに風俗店に警察官が来たりする、ホテル型ヘルスの受付は箱型ヘルスの受付に準じて24時には完全に受付終了していないといけないし、箱型ヘルスやソープランドも24時までには客が残っていてはいけないのだが、ちょっと受付の時間を伸ばしてとか客を残してなどとやっているときにガタイのいいスーツ姿の二人組なんかが来たらアウトだ。


 警察官はだいたいそう言う感じなんだよな、二人組で行動するのは一人で行動すると何か有ったときに対処できない可能性があっても、二人組なら二人同時に無力化されることは日本ではほとんどありえないからだな。


 そもそも店もそういう危ないことをしなきゃいいんだが、目先の売り上げにつられてやったりするんだ。で結局一ヶ月間の営業停止になって泣きを見たりするんだが、リーマンショック以降売り上げがガクッと落ちた上に店が増えすぎて利益の食い合いになっていたから仕方ないとも言える。


「まあ、警告はしたしこれからは証拠があがったらどんどん奉行所へ連行するとしようか」


 まあ、物的証拠になるようなものが手に入るまで少し時間もかかるだろうけどな。


 鉄砲洲や深川だけでも水茶屋は50件ほどあるみたいだし。


 俺は今雇っている浪人にも伝手があれば一緒に働いてくれるやつを紹介してもらい最終的には50人ほどまで数を増やした。


 まあ、これくらいいれば十分だろうな。


 それとは別に吉原の観光地化を進めるために進めようとしていることがある。


 1つは温泉、正確には温かい温泉ではないが関東では日本全国でも珍しい黒湯と呼ばれる温泉がある。


 南関東には南関東ガス田があって、それによる事故も多いのだが黒湯はこの天然ガスのもとになる「腐植質」とよばれる大昔の海藻や流れ着いた落ち葉など、それが水にまじり黒湯となって湧出している。


 こういう植物性の成分が由来の温泉はモール泉と呼ばれてる。


 黒湯の含有物質は「メタけい酸」及び「重炭酸ソーダ」で弱アルカリ性の黒湯は皮膚の表面を軟化させ、肌の角質を溶かし余分な皮脂や分泌物を乳化して洗い流しお肌をつるつるのすべすべにする効果がある。


 黒湯は天然油成分が含まれることが多いので、保温・保湿効果もあり、皮膚疾患にも効果がある。


 そして体が温まり湯冷めしにくいらしい。


 その為黒湯は美人の湯、美肌の湯と呼ばれ、女性にとても人気だ。


 ちなみに飲用はできないぜ。


 黒湯の温泉が多いのは大田区の蒲田のあたりなのだが南は横須賀から北は浅草・東には千葉の養老渓谷などにも黒湯が湧出する場所があり関東では割りと珍しくない。


「上手く黒湯が湧き出してくれるといいんだがな」


 黒湯は源泉が極めて浅い場所にある場合もあって、浅草の蛇骨湯もその例に当たるらしい。


 美人の湯が湧けば女性客も増えるだろうし、露天風呂なんてのも悪くねえよな。


 あともう一つ考えてるのは木と縄を組み合わせて作った施設で遊ぶいわゆるフィールドアスレチック施設。


 江戸の街はようやっと広小路はできたが体を動かして遊べる場所は少ないからな。


 男の子なんかが遊ぶのにはああいった施設が有ったほうがいいと思うんだ。


 丈夫な縄や木材があれば作れるはずだから21世紀の電気を使う遊園地のようなものと違ってこの時代でも作れると思う。


 木材は木曽屋から買えばいいだろうし、作るのは大工ならなんとかなるんじゃねえかな。

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