第七話. 独立の目的、ゴールを考える。 〜独立の時〜

 友人デザイナー。“イ”としておこう(イロハニの“イ”)。


 出身の専門学校が同じだった。在学中に彼を知ることはなかった。卒業後、私が転職をした時、OBとして母校である専門学校授業に出た。その場で、“イ”に初めて会った。目つき、顔つきから只者でないデザイナーの匂い。私は積極的に自分から、知り合いを増やしていくタイプではない。ないが、“イ”に対しては、なぜだか関係をつないでおきたいと、直感的に感じたのだ。


 授業合間の休憩時間。喫煙所にいた(私は吸わない)“イ”に声をかけ、しばらく、デザインの話をする。表現に対する考え。業界に対する考え。異次元過ぎた。よくわからない言葉が飛び出す。


 ちなみに “イ”は、私より年下。国内外のデザイン賞を穫りまくっている実力者。もちろん、デザインも素敵。しかし、とっても謙虚。常に自分に厳しく、デザインと向き合っているのだ。話の中で、すでに独立していることがわかった。


  *


私 : 私も独立を考えているんですよ。


イ : ほう、いつ独立する予定ですか。


私 :(目力、ハンパないな…)

   ん〜…早くて、来年の今頃を考えています。


イ : その気持ちは、今の気持ちですよね?


私 : そ、そうです。


イ : そしたら、一年後に独立するのも、

   今、独立するのも変わらないですよ。


  *


 善は急げ、独立急げ。気持ちが固まっているのなら、早ければ、早いほどいい。という考えのようだ。成功者の発言には説得力がある!「アノ人がやっちゃえばいいじゃん! って言ったからやったんですわ」そう言えるし! 理由づけや後押しの力、つえぇなぁ〜!


 まぁいい。私はむしろ、誰かから、そう言われることを待っていたのかもしれない。自分の人生を左右する時。力強いアドバイスをくれる人と出会う嗅覚も、時には必要だろう。チャラついた出会いを求め、BBQなんかにいってる場合じゃないのである。誘われないだけである。


 そこからは本当に早かった。1週間後には、会社に辞める旨を切り出した。引き継ぎなどもあり、実際に辞めたのは3ヶ月後だったが、頭ん中は独立モード。助走期間にもなった。


 晴れて、独立。フリーランス。通常、独立時には、仕事をいただくコネやパイプを築いた上、辞めていく人が多いと思う。しかし、私はそのパイプが0だった。あえて0にしといた、でも言おうか。1つ言えるのは、「何を目的として、独立するか」だ。そう、独立自体が目的ではない。


 私の場合は、「はじめて、デザインを取り入れる人」を増やし、デザインをより身近に感じていただく。これが目的。つまり、「はじめて」なんだから、0から築く必要があったのだ。(ちなみに独立当初、私に興味あるクライアントなんかいなかったのが、本当の正解)


  *


 でもね、そう都合良く、仕事の依頼などきませんよね。ビックリ。おいおい、サクセスストーリーはどこにあるんだってことで、「より具体的に、自分のやりたい仕事」を書き出す。そんで、仕事をオーダーする依頼側に立ち、「どうすれば、仕事を頼みたくなるか」という気持ちを考えました。


◎ 自分のやりたい仕事:

01. 「個の想い・熱意を形づくるデザイン」をやりたい。

02. 「ロゴ・VI・ブランディング・ショップツール」をデザインしたい。


◎ どうすれば、仕事を頼みたくなるか:

01. 今までの事例・実績が多い。→ 安心感につながり、依頼したくなる。

02. 自分のやりたいデザインと、その理由をちゃんと伝える。 → 共感して、依頼したくなる。


  *


 整理したら、上記。独立直後は仕事がなく、お金も心配で、代理店依頼の組物メインの仕事をやっていたんですよ。仕事は代理店が持ってきてくれる。私は下請け。エンドクライアントと私が会うことはない。イコール、「個の想い・熱意を直接、汲み取ること」ができない。


 こういった仕事を続けていても、また同じような仕事が増えるだけ。いつまで経っても、本来の目的、ゴールに辿り着くことはない。少しずつ、ゴールに向かっているのではない。そもそも、走っている方向が違うのだ。まさに負のスパイラル。無間地獄。


 この状況。独立しても、前職と変わらんじゃあないか! 単純な気づき。代理店仕事をバッサリ切った。私の時間をこれでもかと裂いてきた、エロサイトのお気に入りも全て消した。これには、相当な勇気が必要だった……褒めてほしい。


 気持ちと頭を切り替え、クリーンになったPC。まずはWebサイトにて、自分のやりたいデザインと、その理由をちゃんと伝える。「はじめて、デザインを取り入れる人」の立場から、共感できる内容にした。なんで言い切れるの? 自身が色々「はじめて」だから、気持ちわかるんじゃい!


 ……するとですよ。「やりたい仕事」がポツポツと舞い込んできたのです。

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