共同家幻想

 あなたは家なんてただの木と鉄の集合体でしかないと言うけれど。


 それでも私達は家を欲しがる。 皮膚すら焦がしてしまうような夏の日差しを僅かに避けるために、冬の震える風から身を守るため


 私達は私達だけの家が欲しいのです。 他の人に期待して集合して生活するなんてウンザリするわ。


 幻想なんて言う人もいるけれど、幻想すら持たないで生きていけば根無し草のその日暮らしの哀れさを考えてただ怯えてしまう。


 ただそれでもその中身がみすぼらしく、穴だらけであることを良いことだとは思えないの。


 汚らしく、薄汚れていてこのままじゃ病気になってしまっていても家さえあればいいとやせ我慢できるほどに愛せるほど私達は夢想家ではいられない。


 住むところはもちろん大事だけれど、それでも傾き、壁紙が剥がれて柱でさえ腐り始めているその様を言葉で誤魔化してるだけなんてそれこそ幻を見てるのと変わらないと思うの。


 だって私達には住む家に愛着があって、それゆえにこの場所で長く幸せに住みたいとおもっているのだから。

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