全てに意味があるなんて過剰過ぎる

全てに意味があると思うなんて過剰すぎるだろう


 それでも無いと言い切るには寂しすぎる。


 だから旅に出よう。


 近所の店。 川原に。 すれ違う人々に挨拶を。 少しの恥ずかしさと優しさで。


 


 意志を持って生きようとなんて言う事はできない。 


 世界はひどく安定していて、人の心はあまりにも多様すぎる。


 けれど明日はどうなってるの? と考えて生きるのは辛すぎる。


 人の心の波間。 それで流されながらも少しずつ受け流し、漂う不安定さを楽しもうと思うんだ。


  


 後ろを見ずに歩くなんて嫌だ。


 前だけを。 ただ前だけを。 急かされるように、追い立てられるように。 


 してきたこと、見てきた今までを考えないなんて背中を向けて進むようなものだ。


 置き忘れてきた何かを見つけることもある。 満ちた月だけでは気づかないことだってあるのだから。


  


 ただ幸せを。 そんなことは望まない。


 手痛い失敗とぶつかり合いに傷つき悩む続け、頭を抱えながら。


 それを経てもなお。 それでもと諦めず手を伸ばすことを求めよう。


 涙と共に飲み込んだそれを噛み締めてからこそ終りの幸福を味わうことができるはず。




 私達は全てに意味があると考える。


 私達は意志を強く持って生きる。


 私達は後ろを振り返らずに進む。


 そうして幸せだけを求める。


 私達は人間です。 だからそうして生きるのは不可能なのです。


 そして同時にそれらを求めずに生きていくこともまた不可能なのです。


 悲しくも愚かしくも、そしてちょっぴり可愛げのあるそんな弱い存在。


 だからこそ私達は互いに求め、愛することが出来るのですから。

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