愛を乞う人
ああたしかに私は愛されていた
母に。 もしかしたら父にも。
だが母は私を殺そうとした。
父も同じく。
だがそれでも私は私の取り巻く世界を愛そうと努力し続けた。
しかしそれも限界が来た。
私は私であるというだけで愛してくれる存在を信じることはもはやできない。
私は足掻く。 足掻いた。
肉欲で繫ぎ止めるような愛し方をしようとも思ったが、それは常人には到底不可能であり、とてもそこまでの熱を維持することはできなかった。
けれども愛を乞おう。 私はそれでも愛を求むのだ。
しかし愛は。無償の愛は決して手に入ることは出来ないだろう。
だから私は何者かになりたいと願った。
なにかを成し遂げたのならば私を愛してくれる人もいるのではないかと。
それが私が蠢く理由となるのだ。
しかし最近ではそれもまた不毛だと気づいた。
わたしには何もない。
わたしは空っぽ。
わたしは穴の空いた壺。
わたしは。
わたしは。
わたしは…?
いまはそれの行き着く先だけに興味がある。
心の中で寒々と吹く風だけが私を私たらしめている。
ああ愛しい人よ。 愛しき人よ。
君は何処へ?
それとも有りはしないのかと一人、夜空に立ち尽くす。
答えはきっとこの虚無で満ちた心の中に。
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