嘘をつくことにはもう飽き飽きなんだ。

嘘をつくことにはもう飽き飽きなんだ。


けれど昨日も今日もきっと明日も嘘をつくだろう。


また自分の悪癖に辟易してる。


でもしょうがないじゃないか。


この世は生きるには辛く、死ぬには僅かに緩い。


それの繰り返しだ。


その中で俺は悪意と軽蔑を浴びせられている。


状況は変えようとした。 幾度も。


でもあいつらには無駄だった。


何気ない一言を悪意に、思いやりを思いきり蹴り上げてあいつらは俺を嘲笑うんだ。


それも慣れた。


俺や周りの奴らには理解されることのない誠意を持つことは諦めた。


だから俺は嘘をつく。


険悪感を隠すことをせず、言葉では敬語で当たり障りなくを信条に。


やがてこの悪意の泥から抜けでることを夢見て。


今日もため息をつくように諛うことを強制された疲れでベッドの上に倒れこむ。





嘘をつくことにはもう飽きたんだ。


けれど昨日も今日もきっと明日も嘘をつくだろう。


また自分の悪癖に辟易してる。


でもしょうがないじゃないか。


誰かと触れ合う為には俺には何かが欠けている。



紡ぐ言葉は慎重に、誠実にみせつつ狡猾に。


反応は実験体を見るように見極める。


嫌われるような事態を生む地雷を巧みに避ける。


時には酒の力を借りて彼女を騙せ。


確実にでも誠実に。


それで得られるプライベートな時間を油断なく乗り切り、別れた後に疲労の息を漏らす。


性交の喜びは刹那の間。 成功した後の綻ぶ心の痛みに胸を抑える。


月明かり。 暗い心の内から漏れる風の音を聞いて下を向いてまた息を深く吐く。





嘘をつくことにはもう飽きたんだ。


けれど昨日も今日もきっと明日も嘘をつくだろう。


また自分の悪癖に辟易してる。


でもしょうがないじゃないか。


束の間の不道徳が無ければ憤りと心の傷で眠ることも出来ない。


茶色い便に満つる甘くドロリとした幸福の欠片


現実に望むべきもないその喜びを求めて税込1100円を消費する。


それを流し込めば片道1時間で幸せが世界に満ちてくる。


それは悪意による怒りも欠けた心の隙間に吹く孤独の風からも守ってくれる。


ただトロトロとした感覚と、微睡むような幸福に抱かれて穏やかに寝ることができる。


やっと、やっと、眠ることが出来るのだ。


どうしようもない悪癖だけれど今だけは許せる。 許してほしい。


明日になれば生きていくためにウソをついていくことだろう。


その悪辣に満ちた世界を生き抜く為に。


けれどいつかはそこから抜け出したいとは思ってる。


切実に。


真剣に。


だって嘘をつくことにはもう飽き飽きなんだ。



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