今日は死ぬには良い日だ。
今日は死ぬには良い日だ。
多少発見が遅れても腐らずにその身体を残しているくらいには涼しい。
まあせいぜい敷き布団がカラフルに湿らされるくらいだ。
冷たすぎてカチカチに凍りつくこともないだろう。
いくら死後硬直で固まるとはいえ寒さで凍ってしまったら友人達に『ガリガリ君』という渾名をつけられてしまうことは想像に難くない。
さすがに人生最後に呼ばれる言葉がそれでは悲しすぎるのではないだろうか?
さて無駄話を楽しんでいたらそろそろ薬が効いてきたようだ。
徐々に力が落ちていくのを感じる。
腕をひょいっとあげるだけでなんと疲れることだろうか。
着々と死に向かっている。
そして徐々に身体が重くなっていく。
それはこの世からあの世へと少しづつ転送されはじめているからなのだと想像する。
『私』という人格は一つ一つのバラバラなデータへと変化してあの世へと転送され、そして彼の地で再構成されていく。
だから身体を動かすことが億劫になっていくのだろう。
服用した薬は胃を通り、体内へと巡りそして浸透していくことで、『私』という存在を『在る』から『在った』という過去形に変換してくれている。
それももう終わりに近いようだ。
眠い。
ただ眠い。
自然と瞼が閉じられ、暗闇の世界で私と言う意識はその瞬間に途切れた。
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