化学物質の夜

 歩くだけで幸せで痛い。


 尾てい骨から幸せの波が身体いっぱいに広がっていく。


 これで二度と味わうことのできない幸福を見送りながら私はここに記録している。


 これからは望むべくも無い歓喜に快楽 知ってしまったら満足できるかしら?


 不安と不満が生まれ それらをスポイルする幸せケミカルな泡


 炭酸飲料のような身体 幸福感は飽和状態 頭も惚ける 科学物質の絶頂


 塗りつぶされる幸 


二度とでてこない幸せの黄色 


全ての欲を超越する垂涎の一時を夜が明けるまで楽しもう


 今宵はパーティ 一人でただハッピーハッピー


 食べることも寝ることも忘却の彼方 いずれたどり着く 終わりの果て



 喜びも怒りも悲しみも楽しみさえも


 ケミカル物質の結果


 知ってしまった果ての果て


 それでも愚か人は満月のような瞳を見開いて歓喜の叫びを歌う


 泡沫の快楽と喜びを噛み締め


 喜びの涙も伝う


 その夜は決して忘れられないけれど思い出してはいけない転落と退廃の喝采 


 壊れたタガ だが 壊れても構わない


 思える 非人の時


 つまらなき世を面白く


 思えた人生最高の夜は


 時計の針が二周するまで続く


 

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