第070話『ふたりで 4』
「おぉ……。これぞ奇跡の技じゃ……!!」
「今ここに、神が舞い降りたぞっ――――!!」
暫くして。
様々な便宜と弁解を重ね、ハイテンション男が敵ではないことを理解する。
そして男の名は『ベルちゃん』。
略称だが、まぁ呼名があるだけやりやすい。
そのベルちゃんは今、"灰色の魔法陣"を全壊した村を囲むように展開させる。最高位光魔法らしいが、全くその通りだった。
魔法陣展開が済むと同時にベルちゃんが指を鳴らすと、そこは以前見た光景、村が完全に元通りになっていた。
……俺、瞬きしていはずだがいつ再生させたんだ??
それにしても指ならして魔法発動させるってなんか魔王っぽいよね。まぁ、俺の仲間にセルベリアという魔王がいるけどね。
「今の魔法はなんだ?」
「あぁ。 "再生魔法"だ。他人の記憶を頂き、むらを元に戻した次第だ。今回は死者は出なかったが、死者は再生出来ん。 あれは『死』という衝動により、別次元に魂が移ってしまうので再生魔法は成立しないんだ」
なんか難しいこと話してるけど、一体この人は何者なんだ? 妙にハイテンションだし、強いし、真面目だし、厳ついし。この世界に来てから一番すごいものを見ている気がした。
……それにしても。
「セルベリアはどこいったんだろう……?」
「ん? セルベリアか? あいつなら今、騒動を起こした魔族たちの殲滅にあたっている。 思ったより遠くまで勢力が分散しているようだな」
「なるほどな。流石セルベリ――――――って何でアンタがセルベリア知ってんだ?!?!」
再生した村の資材等を整理する村の人たちをベルちゃんと共に並列しながら眺めていたが、なんか今、さらりとすごい発言しなかった?!?!
……それにしてもこのベルちゃん、ただならぬ魔力量の持ち主だった。あの魔力探知とかよく分からん魔法で察知したとかか………? いやそれでもGPSのマップ見たく、その位置の店舗名が分かるみたいな妙に便利そうな昨日は無い気が――――――――
「あ、言ってなかったっけ? オレはセルベリアのパピーの"ベルゼファウスト"だ。 いつも娘がお世話になっててマジ感謝ッ」
………え。
ラップ口調で感謝を告げるセルベリアの父ベルちゃん。
……待って。それって前魔王ってことだよね?!?! なんで普通に村人の労働を温かい目で見ちゃってんの?! 魔王が善人なのは知っていたが、ここまで堂々としてていいのッ?!
「それにしてもジャパンの岩盤浴は最高だったな。はっはっは」
「え?! 日本語読めるのかよっ」
微妙な表情を浮かべていた俺に気を使ったのか、Tシャツに書かれた『岩盤浴』の話を愉快に振ってくれた。
………やべぇ。ここが異世界という実感が湧いてこなくなってきた。もう何か、夢のワンダーランド的な? もう滅茶苦茶だよこの世界。
「あっ、?! みれあッ!! それにお父様も一緒のようじゃな」
「あ、帰ってきた―――――ってなに? その荷物?! 見るからに魔族の方たちだよね?!」
黒蝶の羽を羽ばたかせ、セルベリアが帰ってきたと思いきや、飛んだ大荷物を持ってきたぞ。
「お父様、ミネルバ、ギュスタ、ガルダラ、ティリシド、ミサリー、ドゥネルト、ボラル、クルセイダ、ディバレ、ガルダラ、ダンダレオ、ネドゥーマ、トリトルルガの計10人の魔族がこの騒動の主犯です」
「ほうほう。ミネルバ、ギュスタ、ガルダラ、ティリシド、ミサリー、ドゥネルト、ボラル、クルセイダ、ディバレ、ガルダラ、ダンダレオ、ネドゥーマ、トリトルルガか。 全員オレの部下だった奴だな。 ご苦労セルベリア。因みに13人だ。 算数の勉強はしないとな」
すっげー、色んな名前が出てきたが。
クラスメイトの名前を覚えるようなものかもしれないが、俺には到底覚えられそうにない濃い13名の名だった。。。
「……あの、ミレアさん」
そんな濃い名前を持つ魔族の頬を一人ずつ叩き、事情聴取を開始する親子を白い目で眺めていると、背後から親しみのある声が掛かる。声の主はティアの父だった。
俺がティアのお父さんに向き直すと同時に、ティアのお母さんも神妙な表情で近づいてきた。言いたいことは分かっている。
「……ティアとは一時的に別れているだけです。それよりもこちらの事情を話すついでに今この世界で何が起きているのかを教えて欲しいです」
「……そうか。 ミレアさんはいい子だから大丈夫だとは思っていたが………母さん、お茶の準備を」
「分かったわ。 じゃあミレアちゃん、行きましょうか」
手招きと共に、俺は一人、再びティアの両親の家にお邪魔することにした。
……セルベリアとベルちゃんは、
「おら吐けやボラル。
「ひ、ひいっ?! は、話しますからそれだけはっ!! 初回限定版なんですあれっ!!」
おいボラル。
それ俺にやらせろ。
……って、俺が釣られてどうするっ。
対してセルベリアは、
「ディバレよ。 お主はこのようなことをする奴とは思っておらんかった……。我は決めたぞ。お主が反省するまで説教をするとッ―――――!!」
「……事情は全てお話致します。しかし―――――ププッ。 その『
あいつも日本語が読めるらしいが、あれだと一向にお説教は終わらなそうだな。
……こんなヤツらに付き合っていたら流石の俺でも精神が持たない。
俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます