二人で

第067話『ふたりで 1』

「たっだいまーっ――――て。いでっ?!」

「ただいまなのだッ―――――お?! あイタっ?!」



ソルベガの仲間が作り出した魔法陣に乗ると同時に意識が真っ白になり、俺たちは妙に見慣れた森の中・・・・・・で尻もちをついていた。……行きもそうだったが、きちんと二本足で着地させて頂きたいところだ。…………それにしても。



「……この森って俺がこの世界に来た時の場所なんだが……」

「……おかしいのじゃ。 次元転送魔法は魔法陣を軸として空間を行き来しているはずなのに、なぜ我らがいる場所に魔法陣は存在しないのだ?」



ふと足元を見るがたしかに魔法陣は存在しない。



「……なぁセルベリア。ソルベガたちが使った次元転送魔法と俺らが使った次元転送魔法は別物なわけだから、座標点はランダム〜的なやつじゃないのか?」

「うむ。たしかに我が使った次元転送とそるべがが使った次元転送は別じゃ。ただ、違う点を挙げるとするなら発動の際、魔力を使うか否かの問題だけであって効果的には同じなはずなんじゃが………」



この謎には流石のセルベリアも顎に手を当て、考え込んでしまう。………って、考え込む以前に次元転送を行ったソルベガに聞けば早い話じゃないか―――――――


そう思った時。

俺とセルベリアは目が合う。

………額には汗を滲ませている。きっと俺も同じだろう。―――――それもそうだ。



「「……ソルベガそるべがメイヤめいやティアてぃあは………?」」









♢







 


「……あ、あれ……?」



――――ティアです。

今、私は状況の把握に手こずっています。何故なら、次元転送魔法を発動させ、無事転送されたのはミレアちゃんとセルベリアちゃんだけで、私とソルベガさん、メイヤさんは未だ、田舎の田んぼに囲まれた場所に佇んでいたからです。



「………そ、ソルベガ様……? これはもしかして―――――」

「……あぁ、察しの通りだ。シルシアの奴がやらかしやがった……」



メイヤさんが不安げにソルベガさんに言葉を投げかけると、呆れ果て頭を抱えてしまいました。


……"シルシア"さんというのは次元転送魔法を扱うお仲間さんのことでしょうか。



「……す、すみません。どういった理由なんですか?」

「……ん、あぁ。家の仲間がどう言ったわけか次元転送魔法の魔法陣を書き換えやがった……。 だから転送人数も変わり、後二人の転送座標点も変わっているはずだ。 ……気まぐれにも程があるぞアイツ」



……た、たしかにどう言ったわけ何でしょうね。あと気まぐれで魔法陣を書き換えられてしまうとは、ソルベガさんって案外慕われてなかったのかな……?



「……で、どうするんですか? 先程使った魔法陣は消えてしまいましたし」



私たちの足元には既に魔法陣は消えてなくなっていました。次元転送魔法の魔法陣は行き来の二回次元移動を行うと効力が無くなり、魔法陣が消滅してしまうことは魔王城でレギオスさんから奪い取―――――頂いた禁忌魔導書に記載されていたので知っていましたが、失敗した例については一切の記載が無かったので少し不安なのですが、、、、



「……そうだな。きっと次元転送に不備があったことをキルシアが気づいている頃だろう。 きっと待っていれば魔法陣をこちらに構築してくれるだろうな」

「――――しかし、軽く見積もっても1週間は掛かるかと」



どうやら問題はなさそうなので安心しましたが"1週間"、ですか。


私は問題ないのですが、どうもあの二人だけで行動する姿が想像出来ません。……いえ、想像出来ないというよりはその先が滅びしかないと言いますか、なんかやらかしてしまうというか………。


そんな複雑な気持ちで葛藤していると、ソルベガさんが面倒臭そうに頭をポリポリとかき、



「……しゃーねぇーな。 おいアンタ――――ティアとか言ったよな?」

「は、はいっ。ティアです」



急に声をかけられたので覚束無い返答に。


ソルベガさんは少々複雑な表情を浮かべていました。……それはとても私に何かを伝えたいのにうまく言い出せないという表情でした。



「……礼二―――いや今はミレアだっけか。 盗み聞きしたようでわりぃんだが、どっか行きたい場所があったんだろ? 一週間近くあるんだから行ってみたらどうだ?」

「……そうですね。 私たちは暫くこの村で滞在していますので、そうした方がよろしいかと」


「……ソルベガさん、メイヤさん」



信じられませんでした。

さっきまで敵として戦っていた方々がこんなにも優しくて温かい方だったなんて………。 ですが、ミレアちゃんやセルベリアちゃんと離れてしまっている今、私はそのようなことに時間を割いてしまっても―――――――



「……『時間は有効的に使え』。 それが礼二ミレアの口癖だったかな。 ……ったく、これだから社畜は脳が堅い―――――――」

「ふふっ。ニートだったソルベガ様と比べ物にならないぐらいにしっかりしていた方なんですね」

「……なっ?! お、俺だってコンビニでバイトぐらい――――――」


「………ふ、ふふっ」



そんな二人の私に対する気遣いの会話につい笑を零してしまいました。

……そうですね、今はどうこうしてもミレアちゃんやセルベリアちゃんを追うことはできないのですから。


……それにきっとソルベガさんの言う通り、この場にミレアちゃんがいたらきっとそう私に声を掛けてくれたと思います。………だから私はこの時間を使って今から母の元に――――――



「うっし。 じゃ、ちょっくら行ってくるか――――――!!」


「「………え?」」



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