第062話『ゆえに 3』
「……銀髪ガキに魔王に
テントから現れたソルベガと付き人の女は俺たち三人に悲哀の視線と嘲笑を送る。
だが今更こんな卑劣な挑発をされても俺たちの意思が揺らぐことは無い。
このまま即戦闘に入るのも吝かではないが、まずはコイツが兄、晃である事の確認。そして態々次元を越えてまで母さんに接触した理由を聞き出したいどころだが―――――――
「……メイヤ。
「―――――了解です」
どうやら相手は好戦的なようで――――――。これは武力行使で勝らなければいけなくなったな。
ソルベガの付き人のメイヤという女は胸元から一本の小刀を取り出す。―――――谷間からスルッと納刀された刀が出てくるシーンはかなりエロかった。もう一度言う。 エロかった。
……と、冗談をかましている間に、メイヤは一瞬にしてティアの懐に移動し、むき出しの刃をティアに――――――――
「……『
「う"っ――――――?!」
その刹那。
呪文詠唱と共にメイヤの小刀の一撃を受けたのは同様の『小刀』。
その武器の持ち主は紛れも無く禍々しい紅色のオーラを身に纏ったセルベリアだった。
魔法補正で異常なまでに発達した身体能力を以て、セルベリアはティアを庇うように瞬きすら許されない速さで座標移動をしていた。
――――そしてぶつかり合う剣戟で圧倒的力を有したのは、言うまでもなく俺たちの
雷鳴の一撃を彷彿させる小刀の斬撃を受け切れず、メイヤは一瞬にして遠く離れた木に直撃し、意識を失っていた。
……改めて言うが、異世界転生者よりチートしてるよ
「おいおい……。メイヤの小刀は神器だぞ……?! それをいとも容易く普通の小刀で―――――。 流石はディルソードを退いただけあるな」
――――仲間が一瞬にして敗れたことを目のあたりにしたソルベガは少々驚くものの、それでも尚俺たちを嘲笑っていた。それよりも、
「なぁ、セルベリア。その小刀はなんだ? 初めて見たが」
「……む? この武器は『
は? 何その武器?
もうそれ転生補正で貰える
「呑気におしゃべりしている場合じゃないですよ?!ミレアちゃんッセルベリアちゃん!!」
「あ、ああ。……そうだな」
ティアの呼び声により、再びソルベガに視線を移す。
……どうやら一瞬、目を離していた間に何かをおっぱじめようとしていた。
「……いいだろう。 俺一人でもお前らを蹴散らすことはできるならな……」
求めてもいない悪役セリフに死亡フラグをばら撒くソルベガ。……素直にツッコミたいところだが、それは無理そうだ。
ソルベガはセルベリアも使用する
―――なんかコレ、かなりマジで危険な匂いしかしないんですが……?
「……あのソルベガという奴、何を考えておる――――?? 転生者という魔力量を利用し、"この国を滅ぼしかねない一撃"を放とうとしておるぞ……?!」
え? 『国を滅ぼしかねない一撃』?
ははっ。
―――――空耳だよね?
「……あれは終焉魔法『
え?『終焉魔法』?
ははっ、ティアまで…………
――――具体的な名称まで聞いてしまった今、空耳じゃ済ませられないよな……。
「……な、なぁセルベリア。あの攻撃さ、軽くドカーンと相殺できたりしない??」
「うむ。無理じゃ」
俺の質問に即答したセルベリアはその場で次元転送魔法の魔法陣を描き始める――――――って逃げるのかよっ?!
……だが、そうしている間にもソルベガの剣の力は上昇していく。たしかに、逃げる他ないような雰囲気ではあるが―――――――
「……俺には故郷を見捨るなんてできねぇよ―――――――!!」
いつの間にか勝手に足が動いていた。――――向かう先は勿論『ソルベガ』の元だった。
この絶体絶命の危機の中、勇気を振り絞って立ち向かおうとする自分の姿勢を褒めてやりたい。だけどさ……??
「(……走ったはいいけど、アレどう止めるんだ?!)」
かなり今更なことを考える。
今の俺には高火力の魔法を放てる力がある。だがそれだけでは到底敵いそうにもないソルベガの強大な魔力。
そんなお涙頂戴したいこの状況下の中。自然と左腕に装着された銀色のブレスレット『聖拳』に目がいく。
―――――そうだよ……!!
俺には立派な『神器』がある。今は姿形を変えていたせいか、存在すら忘れていたのだが。
その存在に気づいた途端、『……これならいけるかも』と謎の確信が俺の脳裏を駆け巡った。
『
きっとその力がこの最悪な状況を打開してくれるだろうと信じ、俺は叫んだ。
「………『真・
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