第050話『とうぼう 3 side︰セルベリア』
取り敢えず狙われやすいみれあとてぃあの避難は済んだ。
それにしても先程のみれあの
何せ、
「……(異世界転生者であり、尚神獣に選ばれし者とはな……。ぜいたくなやつめ)」
幸い……というか、これもあのソルベガという奴が仕掛けたのか、この客船に我等以外の乗客はいないのである。
不自然だとは思っていたが、計画的犯行だったとはな………。
「……邪魔、です………。 僕は、ソルベガ様のために―――――」
「――――ッ。 ゲスなやつめ。 これでは服従ではなく生気を失くしたただの殺戮兵器ではないか………ッ」
ディルソードは剣を構え、突撃を行う。 ……型こそは完璧じゃが、見切れぬほどの速さでは――――――
「――――なぬっ??」
部屋から出るように
――――しかし、それは思い込みであり、我の頬から血が滴る。
「(………あの楽園剣とやら、斬撃の軌道を曲げられるようじゃな)」
セルベリアはディルソードと睨みながら、傷口をなぞるように指を当て、傷口を塞ぐ。この程度の傷、動作も無いわい。…………さて、どう出るか。
一先ずみれあとてぃあが向かった船上と逆方向の通路に誘導するため、初級魔法『
勿論、初級魔法だけあり、威力は弱いもの、連続して繰り出せるためそれなりにダメージが入るのじゃが、、、、。
頭部、胴部、脚部と狙撃地点を変えるが、全て正確に剣を振られ攻撃が入るどころかこちらの魔力無駄遣い状態と化していた。
じゃが、注意を引き付けていられる時点で、我らが有利には変わりない。
そして背後に迫る扉を蹴り開け、船上へと出る。―――――ここからが重要なのじゃ。
……取り敢えずバカ正直に我を追い、
「―――――第二階梯蹂躙魔法『
我とディルソードを囲むように八つの頂点となる箇所に赤い魔法陣が構築される。そして頂点を繋ぐように赤黒い
………どういう効果だって?
それはディルソードを見ればいちもくりょーぜんじゃよ。
「ゥ――――――あ"ぁぁぁぁぁあ―――――!!」
ディルソードが踠き苦しみ跪く。
………頭も抱えたくなるであろう、なんせこの空間に入ったものは皆、我に魔力を吸収されていくのじゃからな。
いくら魔力が底知れぬからと言っても減るものは減る。 そして魔力が減れば身体に影響が現れる。 どの種族でも共通することじゃ。
「すまぬなディルソードよ。 お主を殺すのは正直容易い。 ………しかしみれあとてぃあがそれを望んでないのじゃよ。 だから目が覚めるまで苦しめ」
弱音を吐くとかなりの賭けであった。
異世界転生者の魔力が『無限』であればこの魔法は通じなかったであろう。
―――――地面に倒れ込むディルソードであったが、楽園剣に宿る神獣までも抑え込むことは叶わぬ。
「………仕方ない。 こい、
神獣フェンリルッ!! 魔王直々にフリスビーでもして遊んでやろう……」
『………ガルゥゥゥゥ―――――』
幻影として現れたフェンリルに向け、我は手に持つ大鎌を思い切りぶん投げる。
………しかし、鎌はフェンリルの
『フルルゥゥゥ―――――ガルゥゥ!!』
フェンリルも所詮犬。
宙を舞う物体があればそれに食いつくだけじゃ。
「(………ガサゴソ)」
……さて、ディルソードが目を覚ますまでの間、我はてぃあから貸してもらった『ふぁっしょんざっし』とヤラを読んで女とやらを磨いておくかの。結構前に借りたのじゃが、読めていなかったからな。
「………うーむ。女を磨くって何じゃろな? 我、歯磨きなら毎日しておるぞ? ―――ぐぬぅ、ようわからん」
ページを捲りめくる。しかし我には到底理解できないものばかりじゃった。
唸り声、興奮しながら遠吠えをあげる犬の鳴き声の中、我は女を磨いていた。
♢
「ちょ―――――あの―――」
「……女を磨くにはまずは恋愛を沢山しなければならぬ……? はんっ、そんなのただの『しりがる』ではないか? 第一魔王が恋愛など聞いたことないわっ」
空が夕焼けに色に染まる間までこの本を読んでいたが、改めて全く意味がわからぬ。 まずこの『しぶやぎゃる』という言葉の意味がわからん。
因みに魔族の子孫繁栄は基本的に親となる族の生き血を
人工受精ならぬ"魔工受血"じゃな。
「―――あ、あのぉ。 もう正気を取り戻――――」
「たしかに好いたもの同士で婚約を結ぶ魔族もいるがな――――ふむふむ」
――――と、読み耽っている間に『観測者の
「………と、目を覚ましているじゃないか? なら早く声をかけてくれぬか?」
「―――――い、いやぁ? ずっと声掛けてたんですが――――」
先程より顔色が良くなったディルソードだったが、思ったより顔を顰めていた。 ………かなり魔力を取られたようじゃな………。
ま、これでようやく話し合いができそうじゃ。
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