第045話『どれいたいこく 4』

「じゃあ、僕はこれで」



 そうディルソードと言葉を交わし、俺とティアの二人きりになった。

 …………さてと、早速この国の陰謀とやらを調べますか――――――



「ミレアちゃんッ、あれ乗ろうよっ!! ね?」

「………え、?! いや俺それ無理―――――」



 遊園地というレジャー施設に絶賛興奮中のティアに腕を引っ張られ何故かジェットコースターの列に。

 

 ………い、いやね?

 別に楽しむなとは言わない。だけどさぁ………。



「な、なぁティア?? あっちのコーヒーカップにしないか? あの回転、癖になるんだよねぇ?!」

「えーっ、私これがいいですっ!!」



 ………ジェットコースターだけは勘弁してくれよォ………。


 

 過去、親戚の子供と遊園地に行った時だった。 親戚の子供に無理やり乗せられ、事前に食べていたクレープを全て空中にぶちまけてしまった嫌な思い出があるのだ。


 ………そして最悪なことに俺は最前列の席に座っていたせいで、後ろにいた人たちに汚らしいクレープを吐き散らしたことになってしまい、一日は謝罪に周り終わってしまった。


 いわゆるトラウマである。

 もういっそ強引に抜け出してしまえば―――――



「すみませんお客様。 身長制限がありまして………」


「え? あ、あぁそうですか………残念です」

「―――へ? あ、あぁ!! 残念だなっ!!」



 まさかの神が降臨した。

 まさか身長制限に助けられる日が来るとはな………。


(でも150センチ以下は乗れないジェットコースターって大抵の子供たち乗れないんじゃ………)



 考えても仕方ないな。

 結果論が全てなので早速ジェットコースターの列から抜けて別のアトラクションに向かうべし!!



「あ、ミレアちゃん!! 洋服屋さんがありますよ?!」



 お、おおっと来ましたよこれ。

 女の子あるある『洋服屋があればつい入ってしまう』ってやつだなこれ??

 

 ………正直、男心が強い俺は別に洋服屋に行きたくないのだが、



「私たちこれ一着しか持ってませんよね?」

「………うぐっ」



 痛いところをついてくるティア。

 ………たしかにティアも同様、毎日同じ服を来ている今ではあるが、今更ながらであるが不潔な気が………。


 一応選択はしているが、その開いたは基本宿屋のローブ、シグルドさん家にいた時は洋服を貸してもらっていた。


 洋服屋に入るのを断る理由が無くなってしまった。


 まぁ、女の子なんだし、ファッション回なんかもありだよな………??



 ティアの流れに負け、俺たちは本来の目的を忘れかけているのだった。








 ♢








 こう洋服屋に入るのは新鮮だな。前世の頃は全部ネットで済ませていたし、大抵スーツしか来ていなかったからな。



「ねぇミレアちゃん、この帽子似合うと思いますよ?!」

「………と、黒帽子か。 銀髪とは相性抜群だな」



 以外にも俺は楽しんでいた。

 ………これも女の子という性別になったせいだろうか、服が今までより輝いて見える。―――――こりゃ女子がファッションに力入れるわけだ。


 取り敢えずティアに勧められた黒帽子に黒コートを女番長見たく肩にかけ着る。…………やべぇ、めっちゃかっこよくないか俺?!



「やっぱり元は男性ですからね。カワイイ系よりカッコイイ系の方がいいですよね?」

「そうなんだよな〜。 さすがは元アイドル。 ファッションセンスもあるんだな」

「いや、そんなことねぇですから―――こ、コホン。い、いえ。そんなことは無いですよ?」



 ………ん?『ねぇですから』?

 

 今時こんとき、俺は初めてティアの素を見てしまいました。お互い素性を明かした分、気が抜けたのだろう。

 

 まぁすぐ誤魔化したところ、触れて欲しくはなさそうなので聞かなかったことに。


 ―――清楚系だと思っていたティアからまさかあんな荒い言葉が聞けるなんて。それもそれでドキリと来ちゃったなんて思ってしまったことも忘れよう。うん。


 それは置いといて。

 見た目は女の子ではあるが、いい歳したおっさんが可愛らしいスカートを履くのはかなり抵抗がある。 ティアの気使いに感謝である。


 これからはこの格好で過ごすことにしよう。


 早速購入を済ませ、次にティアの洋服だ。………こうして他人の洋服を選ぶというのも女子ならではの経験であり、楽しみな自分がいるが――――――



「ど、どうかなミレアちゃん?」

 

「 」



 試着室から登場するティアを目撃した俺は頭が真っ白、空白になった。

 ………もう、なんというかかける声が見つからないというか――――――、、、、、。



「そ、それって元アイドルの性ってやつか?」

「え? あっ――――――」



 どうやら今気づいたようだ。

 ティアの感覚では私服を選ぶというよりも単に可愛い洋服を選んでいる気分になっていたのだろう。


 ティアはアイドル衣装みたいなピンク色で派手なドレスを身にまとっていた。



「ま、まぁここがネズミーランドだったらコスプレ客も少ないと思うけど………ね?」

「ご、ごめんなさいッ!! 久しぶりのお買い物に舞い上がっちゃっただけですから〜!!」



 ………結局、洋服を購入したのは俺だけとなった。ティアの間た違う一面が見れたので良しとしよう。


 ♢


 それからも、俺たちは幼少期に戻ったかのように遊び尽くし、日はもう沈みかけていた。そして俺たちは今、ホテルの受付で部屋を借りたところだ。



「今日は遊んじまったが、明日からはきちんと調査するんだぞ?」

「………そうですね。今日は遊びすぎましたからね」



 俺も俺でかなり楽しんでいたので強くはいえないが。


 ホテルにあるパジャマに着替え、広いベッドでゴロゴロ転がる俺たち。


 ………なんか外が騒がしいが、もう寝てしまおう。

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