第020話『さつりくきょうかい 4』
「………えーっと、ここはルクセント教会―――――」
「戯け、虫螻ッ!! 我と話をしたくば、『器』を示すがいいッ!!」
いや『器』ってなんだよ、茶碗か?
ティアに助けを求めようとするが、俺と同じくポカーンとしていた。うん、今頼れる人材ではないな。
そうなると―――――――
「―――――そんな
「な、なんだと―――――――ひぃぃぃ?!?!」
え? あ、あのセルベリアさん? 何かいきなり口調が大人びたと言うか、魔王らしくなったというか――――――ってうげぇぇぇ?!?!
な、何かセルベリアから闇のオーラが立ち込めているんですが………?!?!
「少々戯言が達者過ぎたな…………初対面にも関わらず、その冒涜極まりない態度は如何なものか………」
「う、うるさいっ!! 我が
…………一見、厨二病な幼女が喧嘩している光景に思うが、そんな可愛いものじゃない。
たしかにこのシスターちゃんは、言葉だけかもしれないが…………。
セルベリアはめっさ
その光景を目のあたりにした俺とティアは顔を合わせる。 どちらも青ざめた顔をしていた。
………それもそうだ。
以前レギオスが『………
―――――だから俺はこの喧嘩を止めなければいけない。この国のために。
……………と、喧嘩の仲裁に入ろうとした瞬間、
「
怒鳴り声と共に眼鏡をかけた修道服の女性がシスターちゃんの頭部を思いっきり殴りつける。
そしてその小さな身体は呆気なく地面に叩きつけられる。
………普通、こういう展開のゲンコツは笑えるものだと思っていたが、全然笑えない。
「ご、ごめんなさいッお母様ッ!!」
「貴方はいつもそうやって誤魔化し、そしてまた繰り返すのですッ!!もう何回目だと思っているのですかッ!!」
地面に叩きつけられ、泣きじゃくるソフィアに蹴りを入れる。何度も、何度も。
この光景に俺とティア、そして先程までピリピリしていたセルベリアまで引いていた。
「あの、お母さん? もうそこまでに―――――」
「――――いいえお気になさらず。 この子にはこうでもしないときかないんですっ」
俺が声をかけるも、辞める気配はなく、ひたすらソフィアの腹に蹴りを入れ続ける。
………これは立派な『虐待』だ。
そんな光景を目の当たりにして、俺はいても立ってもいられなかった。
―――――だから俺は
蹴りを入れようとするお母さんを止めるべく、足を突き出し、暴力を停止させる。
「貴方、他所の家庭の事情に首を―――――――」
「部外者とでも言いたいのですか? 俺含め、小さい子が周りにいる中で暴力を振るう。 正常には見えないですよ」
「―――――ッ」
焦点を見失いかけていたお母さんは過ちに気づいたのだろうか、蹴りをやめ、熱くなった頭を冷やし、こちらへ向き直すと、先程の険悪ムードは解かれていた。
「幼き子から徳を得るとは私もまだまだですね。―――――で、なんの御用でしょうか?」
まだピリピリしているようだが、きっと普段からこういった人なのだろうと理解する。
「大丈夫ですか、ソフィアちゃん?」
俺とお母さんが話していると、ティアは腹を抱え、苦しみを訴えていたソフィアに近寄り、手当をしようと手を当てるが――――――
『パシンっ!!』と、ティアの手を払ってしまう。そして目尻に涙を浮かべながら、
「…………私に構わないでよッ!!」
「あっ、ソフィアちゃんっ?!」
そのまま聖堂奥に走り去ってしまい、ティアもまた、ソフィアを追い、聖堂内へ入っていった。…………暴力を振るわれて精神面が敏感になっている中で話しかけたのが少しマズかったのだろう。
聖堂奥に走り去っていくソフィアをお母さんは哀しい目で見送っていた。
―――――そしてこう呟いていた。
「…………私もソフィアも『アイツら』のせいで変わってしまった」
その呟きは普通なら無視するべきなのだろうが、俺は反応をしてしまった。
………あまりにもつらそうな顔をするお母さんを見て。
「………殺戮教会、ですよね」
「え―――――ッ?! な、何故それをッ」
「我らがここをたずねたのはそれについてじゃからな」
反応から見るに、やはりソフィアとそのお母さんはルクセント王国を拠点にしていたルクセント教会の難民だろう。…………これは良い手がかりになるかもしれない。
そして俺たちが魔法士で有ることを告げると、お母さんは真剣な表情となり、聖堂内へ案内してくれた。
………話が進むのは非常に良いのだが、ソフィアが心配だな。
―――――ティア、上手くやってくれてるといいが。
今回の件に関しては俺とセルベリアが受け持ち、ティアには心に深い溝があるソフィアの対応に当たってもらおう。
約40年間、大人の社畜として働いてきた俺より、幼い頃から村の子と触れ合っていたティアが適任だろう。
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