第019話『さつりくきょうかい 3』
「殺戮教会の人達の特徴、ですか」
俺たち3人は殺戮教会の有力情報を知るべく、受付のお姉さんに話を伺う。
「はい。相手の素性が分からなければ貢献などできたものじゃないですからね」
強い視線を送り続け、意思を尊重すると、受付のお姉さんはカウンターの下を漁り始め、一枚の紙を俺たちに見せてくれる。…………ってこれ、この前見た張り紙じゃん。
「まだ小さな子たちにこの情報を教えていいものなのかと考えましたが、皆様はれっきとした魔法士です。 それなら平等に情報を共有するのは当たり前ですよね」
受付のお姉さん、まさかそこまで考えてくれていたとは…………。
ダメだ、前世でこんな優しい女性がいたら絶対合コン誘ってたわ。んで、ほかの男に取られる。
――――うわ、嫌な想像しか浮かんでこないわ。
「我はまほーしカード持っておらんぞ?」
「あ、そうでしたね。 あの、セルベリアちゃんの魔法士カードを発行させていただいても――――――」
セルベリアの魔法士カード発行はティアに任せて、俺はひとり受け取った紙に目を通す。
やっぱり、ただの胡散臭い宗教勧誘だよな。こんなのが手掛かりに―――――――
…………ん? 『宗教勧誘』だと?
俺は改めて上の文から読み進めていく。―――――そしてあることに気づき、口が勝手に開いた。
「…………『ルクセント教会』を占領している―――――と」
俺がそう呟くと、作業をしていた受付のお姉さんがウィンクをする。
感謝の気持ちを込めて俺はにぱっと笑いを返す。
なるほど、緊急クエストの達成条件は要は国を守るという趣旨よりもこのルクセント教会を奪還しろというわけか。
だから皆『早速行動!』ではなく、パーティメンバーで対策を話し合っていたのか。
そうと分かれば俺たちも対策を考えないとな。
♢
セルベリアの魔法士カードが発行されると同時に俺たちはある場所へと向かった。…………そのある場所とは――――――
「………あ、あの。 ミレアちゃん? ここ―――――」
「あぁ。
いきなり敵の敷地に入るの? 馬鹿なの? と、思うかもしれないが、それは大きな勘違いをしている。なぜなら――――――
「隣国の『クルセド王国』の教会だ。 きっとルクセント教会の難民がいるはずだ」
ルクセント教会というのは
つまり、ファンクラブならば祖国に限らず、他国にも存在し、また拠点もあるだろうと踏んだが、どうやら
ここまでの経緯を説明すると、俺とティアをルクセントまで運んでくれた馬車引きのオジサンと接触し、ルクセント教会について話を聞いた。
馬車引きは他国の人を運ぶのが非常に多いため、こういった情報は雑学マスターと命名したいぐらい知り尽くしている。 前世で言うタクシー運転手だ。
そしてルクセント教会について試しに聞いてみると、
『あぁ。 つい最近ルクセント教会の修道服を来た客人を隣国のクルセドに送ったばっかだぜ? なんか避難場所がなんたらとかいってたな』
………と、非常に有力な言質を頂くことができ、早速馬車でクルセド王国にいざ舞い降りたってわけだ。
「みるのじゃ、てぃあッ!!かだんに
「そうですねっ。でもそれはヒガンバナだと思いますよ」
場所は街のほぼ中心に住宅に紛れ、聖堂はあった。 まるで近所の神社感覚に配置されていた。
花壇は整備され、大きく佇む聖堂も傷一つない。…………荒らされた形跡はないな。それらを確認すると、聖堂に続く扉の前に立つ。
さて、中に誰かいるかな………………。
「…………」
「ど、どかしましたか? ミレアちゃん」
「………いやね? 聖堂に入る時ってどうすればいいのかと」
普通のお宅ならばインターホンやノックをするのが基本。………だがいざ聖堂の扉と考えると、どうも気後れする。
………ノックって迷惑じゃないよな? 失礼じゃないよな? トイレのノックだって失礼ではないのだ。 なら行け俺。 これはトイレをノックするのと同じだっ!!
―――――コンコンッ。
まぁノック回数までトイレと同じにする理由は無いのだが、雰囲気を出すために。…………だが返答がない。
すると、ヒガンバナを手にしたセルベリアが俺を軽く嘲笑い、
「なっておらんなぁ。 こういうのは『ひらけごま』と叫ぶのじゃ」
そう言うと、セルベリアは扉に向かって『ひらけごまー!』『ひらけごまー!』と叫び始める。 必死で叫ぶ姿は可愛らしかった。
………アリババじゃあるまいし、そんなふざけた掛け声で応答してくれるわけが――――――――
………と、その時だった。どうやら俺はフラグ建築士のようだった。
勢いよく扉が開くと、俺らの目の前に黒い修道服を見に纏い、見るからに子供向けの
そして幼女シスターは眼帯を手で押え、俺たちに杖を向けながら、
「―――我は白魔術を極めし
「「「…………」」」
聖堂の入口に立ちはだかるのは"厨二病"と呼ばれる病にかかったシスターさんだった。
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