第014話『まおうのいえで 3』
前提として頭を下げる程度で魔王の座を降りられることはまず無い。
なら解決策は一つさ。
謝罪という建前で魔王城に侵入し、魔王軍とやらをぶっ倒して言う事聞かせるまでだ。
♢
またもや他人の事情に首を突っ込むことになるが、それも今更だ。
担ぐ聖剣を眺める。
………せっかくこんなブツを持っているんだ。『英雄』的なことをしてみたいわけよ。
――――というわけでセルベリアの案内のもと、魔王城に到着致しました。
不気味な長廊下を歩いている中、暇を持て余すのも何なので他愛ない話を少々。
「なぁ。みれあはなぜ男口調なのじゃ?」
「ん? そりゃ決まってるだろ。 萌え声のやつが男口調。 さらに萌えるからだろ?」
「いや、我には理解できん………」
「わ、私は可愛いと思っていますよ?!」
何故かセルベリアは引き気味、ティアは逆に食いついてきた。
…………人によっては抵抗があったり、人気があったりするのか。
まぁ、正直なところ約40年間男として生きていた俺が急に乙女口調を扱えないだけの理由なんだけどね。
よって続行と。
「ついたぞ。 ここが
―――――キンキーンッ!!
『うぐぁぁぁぁぁあ!!』
―――――ゴゴゴォォォ……!!
『きゃぁぁぁぁ!!』
扉から聞こえる剣戟と魔法効果音に悲鳴。………………い、いや。これはツッコムべきだろ?!
「なぁ? もしかしなくとも絶賛最終決戦中なのでは?」
「うむ。 われの忠実なるバカ――――っと、しつげんだ。部下のレギオスじゃ」
今こいつ馬鹿とか口走ったなおい。
………それは置いといて。
「魔王不在で最終決戦なんかおっぱじめて大丈夫なのか?」
「あんしんしろ。 レギオスは我よりつよい」
「…………あぁ。それはそれで魔王の威厳ないな」
魔王より強い部下って………。
システムバグにも程があるぞそれ。確かにそれを売りにするゲームもあるが、大抵クソゲーと罵られるであろう。
しかしセルベリア自体が弱そうなのは否めない。
「あ、終わったみたいですよ?」
ティアがそう言うと同時に黒鋼の大扉が開き、ボロボロになった勇者やその仲間達が上の空で出てくる。
その逞しき一行に俺たちは敬意を評して敬礼する。
この人たちも辛いな。本物の魔王様が今目の前で敬礼して讃えられていることに気づかないのだから。
何だか見ていて可哀想になったため、敬礼を解き、無意識に合掌していた。
「ま。客も帰ったことだし、中入るか」
「………うぅ。レギオスにおこられるぅぅ」
ビビる魔王、可愛い。
そうして俺たちは大扉に足を踏み入れたと同時に凄まじい騒音を立て、扉が閉まる。………これで逃げ場無しか。
暗闇の空間に次々と灯火が付くと、玉座前に立つメイド服姿の人物が目に入る。…………あれがセルベリアが言っていたレギオスって奴か?
そして一歩一歩近づいていくと、レギオスが口を開き――――――
「おつむが足りないクソ
「れ、レギオスっ。 我じゃ、セルベリアじゃっ」
「――――――えっ? 魔王様?」
おいおい。
なんだよあのセリフ。勇者が来る度に喋るのか? 案外大変なんだな魔王職って。
――――クールな無表情で玉座から下に続く階段を降り、俺たちの前にやってくる。………… すると俺たちの存在に気づいた途端、クールな視線が殺気溢れる視線へと変わる。
その威圧により、ティアが軽く悲鳴をあげ、俺の背後へ隠れる。怖いよな。
うん、俺も怖い。
「魔王様。 この者達は―――――」
「みれあとてぃあか? 家出した我を匿ってくれたおんじんじゃ。 刃を下げよ」
「――――――承知致しました」
レギオスは右足を持ち上げ、踵から剥き出しになった刃をしまう。
………うっそ、俺たち殺されかけてたの?! おっかねぇな。
これが世にいう『バトルメイド』か。
どうしよう。
『自分、主人公補正あるから魔王の手先なんて楽勝でしょ』とか思っていたはずなのに自信がなくなってきた…………。
「立ち話も何ですので別室でお茶は如何でしょうか? 魔王様の家出についても追求しておきたいので」
「う、うぅ……(チラチラ)」
や、やめろ。俺に助けを求めるな。
だって今頭下げたら絶対飛ばされるからッ!! 可愛い幼女の首が無残にも飛んじゃうからッ!!
♢
――――といわけで俺とティアは玉座奥の部屋に案内されたんだが、、、、
「…………なんで和室?」
「すみません。私の趣味です」
レギオスは律儀にお茶を点て、人数分のお茶を用意してくれる。
魔王城に和室………。
もうこれよくわかんねぇわ。
頂いたお茶を座布団の上で飲む。……うわ苦っ。
「………それで、魔王様。 お戻りになったという事は
「…………ぐ、ぐぬぬ」
レギオスは子を見るような目でセルベリアを睨みつける。親と子みたいだ。
立場逆転である。
―――――と思ったが、セルベリアは座布団からシュッと立ち上がり、レギオスを睨む。非常に可愛らしい。
そう思いながら俺とティアは笑顔満開でセルベリアを見ていると、こちらを指し始め―――――――
「我はまおうをやめるのだっ!! そしてみれあとてぃあのなかまになるのじゃ!!」
「…………はい?」
「「…………(ゴブッ?!)」」
あまりに死亡フラグな不意打ちに俺たちはお茶を吹き出してしまう。
これから戦争が始まる気がしました。
頼むからグロテスクな描写が入るのだけは勘弁して欲しいところだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます