アクア・デイズ

作者 スガワラヒロ

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★★★ Excellent!!!

熱帯魚愛好家「アクアリスト」の二人が繰り広げる青春グラフィティ。

アクアリストが趣味の主人公は、行きつけのショップでクラスメイトが熱帯魚を眺めているのを発見する。
興味があるのか聞いてみると、「一人が寂しいから飼いたい」とのこと。
しかし、まったく知識がないので不安は募る。
ヒロインは、主人公に自分を指導してくれないかと頼む。

腐れ縁の友人や、水草のレイアウトにお嬢様に囲まれ、主人公とヒロインは絆を深めていく。
後に、四人は学校からの依頼で、アクアリウムの部活を立ち上げることとなった。

いわゆる「ゆるキャン」や、今年アニメ化する「スーパーカブ」のような、
「おっさん趣味にハマるJK」
ものである。

たいていの趣味系小説は知識・ウンチクに文章が偏りがちだが、本作は決して退屈しない。
必要な知識が進行とともに語られるので、構成が実に丁寧だ。
なので、自然と知恵が頭に入るため、ストレスがない。
専門用語が多いのだが、そこまで頭がパンクしないので、楽しめるかと。

相手の家にお邪魔する、お祭りを二人で回るなどの、ドキドキ百合イベントやハプニングが豊富である。
あまりベタベタせず、本格的な百合とはいい難いが、個人的にはこれくらいの百合がちょうどいい。

★★★ Excellent!!!

日本におけるペット界の雄は間違いなく犬と猫である。温かい体温があって、触れ合えて、おなじ空間で家族のように生活できて、なおかつ餌とトイレの問題もコンビニに売られている商品で簡単に解決できる。これほどペットとしてうってつけの生物もあるまい。
しかし。
変温動物ゆえに体温がなく、そもそも水中にいるので触れることはほぼできず、飼い主とは互いに水槽のガラスで隔てられ、餌はまずコンビニには売られてないし、ウンチもオシッコも垂れ流し、掃除をしようものならだいたい床に水がこぼれる、そういうめんどうな生物――熱帯魚を好き好んで飼いたがる人間も、じつに多く存在する。
熱帯魚の飼育はそれほどにめんどうか? イエス。趣味は、と訊かれて、犬や猫を飼っていますとは、ふつう、言わない。だが、熱帯魚を飼っています、観賞魚飼育です、アクアリウムです、これは回答として成立する。趣味とは例外なくめんどうなものである。お金にならないしめんどうなのに、好き好んでやるから、趣味なのである。つまり、熱帯魚を飼うアクアリウムの維持というものは、「趣味」といえるほど、めんどうなものなのである。
だが、めんどうであるがゆえに、それを越える過程には、そして越えたさきには、アクアリウムをやらなかったら絶対に見えなかった景色が広がっている。

話は変わるが、日本人はむかしから女の子というものが大好きである。どれくらい好きかというと、男ばかりの職場だった浮世絵工房の職人たちを女性に置き換えてみた、という絵を江戸時代に歌川国貞が「今様見立士農工商職人」として制作するくらいである。

本作「アクアデイズ」では、華の女子高生たちが、アクアリウムという一個の小宇宙に魅せられ、熱帯魚を飼育している人――アクアリストの第一歩を踏みだす過程が、じつに瑞々しく描かれている。女の子たちが互いに影響を与えあい、アクアリウムの先輩として教える側も、初… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

熱帯魚なんて興味がない?
全く問題ありません。
もちろん知っている程に共感はあるもので、そういう楽しみ方は一つの理想。

しかしながら知らない、興味ない、そんな人でも楽しく読めてしまう要素がふんだんに盛り込まれているのがこの作品。
過度な装飾のないJK達の微笑ましい清涼感溢れるやりとり
ただの趣味の紹介に終わらない、ストーリーへの引きこみ方
魅力的な登場人物達の心の動き……そしてソフトな百合。

どれか一つでもハマれば、しっかりと引きずり込んでくれるでしょう。

ガッチガチのアクアリウム知識も目を瞠るものがあり、全然知らないものでも丁寧な説明でわかりやすく、
そのどれもが上手いことストーリーに組み込まれているので、目が滑ることもありません。
趣味開拓作品なら「漫画でないこと」がディスアドバンテージになりそうなものですが、
とくにそれを感じることもなく読み進められるのは作者様の技量によるものでしょう。
ただ魚への愛情をぶつけるだけでなく、趣味への導線として確かなものになっています。

読みながら熱帯魚の画像を検索したりすれば楽しみも更に倍増。
ほんの少し知ってたくらいの私には、「え、コイツめっちゃカッコいいじゃん」と絶句するヤツらが沢山いました。

個人的には新しいものに頑張る主人公、小清水の姿が一番好きです。
初めてのことに四苦八苦したり、予想外のことに動転したり、一つやりきった時の達成感、
完成に至るまでのワクワクと、未知への挑戦の醍醐味に共感できる部分が非常に多く、感情移入せざるをえません。

熱帯魚に興味がある方も、未だ全然知らない方も、この作品でまた青春を体験できることは間違いでしょう。