読書感想文
僕は「ルグフォッティキャの物語」を読んで彼の人生に夢中になりました。
彼女は生まれた時からすでに人とは違っていたのです。
あ、何かおかしいと思いましたか?
そうです、彼と言ったり彼女と言ったり、どっちなんだって思ったでしょ?
それはルグフォッティキャが男性であり女性であったからです。
彼は幼い頃に人質として敵国の将軍の家に預けられましたが、その変わった身体の存在が知られると神の使いとして崇められるようになりました。
しかも彼女はとても頭が良くて自分の立場をよく理解し求められる役割を演じていたのです。
そのため彼は人質でありながらその国の政治にさえ影響を与える存在になりました。
そしてそのことにより彼女はなんと実の父親に恐れられるようになってしまったのです。
それが原因となり両国の間で戦争が始まりました。
僕はこのことを知った時にとても悲しく感じました。
自分が同じ立場だったら耐えられないと思います。父親のために嫌々人質となった場所で自分の身を守るために頑張っただけなのに逆に裏切られるなんてひどいと思います。自分なら泣いてしまって何も出来なかったに違いありません。
ところがルグフォッティキャは僕の予想を遥かに超える行動を起こしました。
なんと戦争の混乱に乗じて自分の死を偽装し国を脱出したのです。
そして彼は遠く離れた地で生活を始めました。脱出時に持ち出した国宝を売り払った彼女はお金には困りませんでしたが、初めて経験する庶民の暮らしは正直とても退屈でした。
そんなある日のことです。彼は一人の青年と恋に落ちました。それは彼女にとって初めての恋でした。悩んだ挙句、彼は全てを青年に打ち明けました。すると彼は彼女の全てを受け入れてくれたのです。
青年には夢がありました。歌手になるという夢が。それを聞いたルグフォッティキャは一緒に夢を追い掛けようと提案しました。自分があなたを支えて一流の歌手にしてみせる、そう言ったのです。
彼は持っていたお金を惜しまず青年の売り込みのために使うようになりました。政治の世界で学んだ清濁入り混じったあらゆる手法を用いたのです。ところが彼はなかなか認められませんでした。
それがなぜなのか、ルグフォッティキャにはわかっていました。彼は致命的に歌が下手だったのです。
そこで彼女はこんな提案をしました。あなたが作った歌を私が歌っては駄目かしら、と。
そしてそれからわずか数年後ルグフォッティキャはこの国を代表する歌手になっていました。
毎日寝る暇もない忙しい生活が続きました。しかしそれは二人にとって決して幸せな時間ではありませんでした。
歌い手としての嫉妬、青年はそれを捨て去ることが出来なかったのです。
ルグフォッティキャが賞賛されればされるほど二人は些細なことで喧嘩するようになっていきました。
そして青年が彼女に手を上げてしまった夜に彼女は姿を消したのです。
突然現れ、突然消えた歌姫はこの国の伝説となりました。
他にも彼には凄いエピソードがたくさんあります。
ある国で悪王を倒し英雄になり、また別の国では海運業で成功し巨万の富を得て、次の国では巨大鮫を討伐したり、さらに他の国では眠っていた遺跡の発掘に成功し学者として名を馳せる、といった感じです。
しかも彼はその成功をいつも迷いなく捨てて次の活躍の場所へと移るのです。
僕には真似できないことだと思いました。
もちろん自分には彼女のような凄い能力はないのですが、もしあったとしても折角掴んだ成功をあっさり捨てる勇気が持てないと思います。
年老いた彼が多くの友人たちに囲まれながら最期に発した「さて、あっちでは何をやろうか……」という言葉には驚きと感動を貰いました。
これからはちょっとだけでも彼女のポジティブさを見習いたいと思います。
最後に一言だけ。
先生は「ルグフォッティキャの物語」という本をご存知でしたか?
知っている訳ありませんよね。なぜならそんな本はこの世に存在しないからです。
そう、「ルグフォッティキャの物語」は僕が考えた架空の本のタイトルです。
あ、「ふざけるな。課題を何だと思っているんだ!」と思いましたか?
でもアカシックレコードというのがあるじゃないですか。
そこには未来のことさえ書いてあるというでしょう?
ひょっとしたら「ルグフォッティキャの物語」も誰かの手によって未来に書かれる物語で、僕がアカシックレコードを通してそれを読んだということなのかもしれませんよ?
だから怒らないでくださいね。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます