油断禁物。
飛行船は山間に突き出た岩肌に止め、タラップを繋げて下船した。
こんなところにまで道が――――とアインはよく整備された環境に感嘆したが、聞けば、シルヴァードが行幸すると決まってからグラーフが造るよう命じたようだ。
アインたちが乗ってきた船の横に、一足先にやってきていたシルヴァードの飛行船が止まっている。
まだ市井に届いていない技術の粋を集めた二隻が、周辺の観光客らの注目を集めていた。
「アイン。行きましょ」
クローネに声を掛けられ、アインは頷いて歩き出す。
「ほら見て。あっちのお店のお湯が評判らしいんですって」
「あ、知ってますっ! 私の部下の子が行ったことがあるらしくて、すっごく良かったって言ってましたよ」
「あら、それなら楽しみね」
少し前を歩くオリビアとクリスは興味津々と言った様子で辺りを見渡し、数多の温泉宿や湯治場を眺めた。彼女たちは互いに普段よりも更にリラックスした様子で、これからの一週間を楽しみにしているのが見て取れる。
アインの隣を歩くクローネもそのようだった。
いつになく、ソワソワした様子で歩いている。
流し目で笑ったアインの視線に、彼女はすぐに気が付いた。
「……私がはしゃいでたら駄目?」
彼女は可愛らしくジト目を浮かべ、アインを不満そうに見上げた。
「いや、可愛いと思うよ」
「ありがとう。でも、そう言えば許されると思ったの?」
言葉と裏腹に彼女の手は伸び、想い人の手と重なった。
指と指を絡め、ぎゅっと力を込めて一ミリでも近づこうとしているようだった。
「許してくれてるように見えるよ」
「ふぅん……アインにはそう見えるのね」
「それで、実際のところはどうだろ?」
「――――秘密」
すると、可憐な笑みを浮かべて頬を綻ばせたクローネが人差し指を立てて、色艶の良い唇に押し当てる。そのまま「しー」と口にして、上機嫌に鼻歌を歌いだした。
それにしても――――。
「すごいなー」
自然と口から漏れた称賛の言葉は、この辺りの町並みに対して。
アインも温泉が数多く存在するとは聞いていたが、まさかこれほどとは思わなかった。なんでも温泉宿だけで百を超すそうで、即ち温泉の数は最低でも百を超すということだ。
宿に一つの温泉があるわけではないから、その数倍は存在していることは予想できる。
「ふふっ、たくさん見て回りましょうね」
「楽しみだよ。でもさすがに全部は――――」
「陛下とララルア様は全部回るのが目標だ、って意気込んでいらっしゃったわよ」
「…………」
此の程の旅行を誰よりも楽しみにしていた国王夫妻だから、本当にすべて回ってしまいそうな気もする。とはいえさすがに百を超す宿や湯地場をすべて回るのは……。
(お爺様たちなら本当にしちゃうかも)
そう思わせられるくらい、二人は楽しみにしていたことを思いだした。
◇ ◇ ◇ ◇
僅かに湯気が漂う中、宿についたアインを迎えたのは黒い大理石調の床だった。それが宿の店構え周辺に敷き詰められていて、他の宿ではあまりみない高級感を醸し出している。
入り口は想像以上に大きかった。両開きの引き戸は組子細工に似た技巧が用いられており、ガラス越しに届く橙色の灯りに照らされ雅やか。アインが来ることを知って待っていた従業員が両脇に控え、彼らの来訪を歓迎した。
「ようこそお越しくださいました。さぁ、中へご案内致します」
壮年の従業員が慣れた振る舞いで戸を開けて、一行を中へ手招いた。
エントランスも外と同じ床が敷き詰められている。
中には水場が設けられ、そこに植えられた植物から爽やかな印象を受ける。軽く呼吸をすると、嫌みのない花の香りが漂ってきた。
「お、やーっと来たのニャ!」
「――――カティマさん?」
エントランスに置かれたベンチの上に、遠慮なく横になったカティマの姿があった。すでに浴衣姿でくつろいでいた彼女はアインを手招き、隣に座るよう促した。
「聞いてもいい?」
「んむ」
「俺たちと同じ飛行船で来たはずなのに、どうしてこんな早くくつろいでるのさ」
「居ても立っても居られなかった私が急いできたからに決まってるニャろ」
「すっげぇ分かりやすい」
確かにアインはクローネをはじめとした女性人三人と共に、軽く辺りの景色を楽しみながらやってきた。
ディルは王都を発つ前からカティマの傍にいると決まっていたから居なかったが、まさか、こんなにも早く駄猫に振り回されていたとは。
「ディルは?」
「お父様たちの傍に行ったニャ。一応、私たちが到着したことを報告に――――って、話をしてたら見たみたいだニャ!」
するとカティマは身体を起こした。
アインはその後でエントランスの奥を見た。
そこには石畳を歩いてくる三人の男性と、その後ろに控えるように歩くディルの姿がある。
その三人の姿は、カティマと同じで浴衣に身を包んでいる。
「アイン! やっと着いたのだな!」
にこやかに笑みを浮かべ、腕を上げて孫の名を呼んだシルヴァード。彼の笑みは普段のそれと違い、リラックスしきっていた。
その姿を見ただけでもアインは達成感に浸ってしまう。
「――――お爺様。宿の方たちが見てますよ」
念のために小言を言ってみるが、シルヴァードはどこ吹く風で。
「何を言うか。このように振舞いたいがために宿を貸し切ってもらったのであろう? そうだな、ウォーレン」
「ですな。運営もオーガスト商会ですし、この宿は来客以外には戸のガラス越しに内部を見られることもないでしょう。ですからいっそのこと、エントランスで酒盛りをしても結構ですぞ」
「おお、それはいい!」
最後に同調したロイドを見て、後ろに控えていたディルが頭を抱えた。
アインから見ても普段と違いすぎる三人の姿に、思わず唖然としてしまいそうになる。だが同時に嬉しくもあった。彼ら三人が日頃の姿を忘れ、憩いの時を過ごせていいるのが嬉しくてたまらない。
(ウォーレンさんにも来てもらってよかった)
名目は行幸だが、実のところ家族旅行に違いはない。
だから当初、ウォーレンは同行することを遠慮していた。
『王都で何かあった時、私がいた方がよろしいかと』
誰しも納得する言葉であったが、感情がそれを許さなかった。
ただでさえ王家と縁を結んだグレイシャー家が王都を離れるのだから、猶更だった。
しかし、フォルス家が主体となってウォーレンを説得し、更にそこへロランが助力したことで、とうとうウォーレンも応じたのだ。
ロランはバハムートの存在とメッセージバードの存在を強く主張したことで、物事は一気に進展を見せたのである。
(それにしても緩いなぁ……)
皆、とんでもなく緩み切っている。
今こうしてアインが苦笑する間にも、三人はどこどこの温泉が良いらしいと語り合ったり、どこどこの店の料理が絶品であるそうだ、と存分に楽しんでいるのが分かる。
「ごめんなさいね。さすがに羽目を外し過ぎたら私が止めますから」
ふと、アインが座ったベンチの背後から声がした。
振り向くと、そこにいたのは王妃ララルアだ。
「あ、そうだわ! 私たちはこれから四人でお外に行ってくるけど、アイン君たちもいかが?」
「うーん……まだ到着したばかりなので、後でご一緒します。ですが護衛は大丈夫ですか?」
そう言うと、いつの間にか傍に来ていたシルヴァードが言う。
「何を言うか。ロイドがおろうに」
「アイン様、お三方のことは私にお任せあれ。既に外に女性の近衛とベリア殿を待たせてますゆえ、ララルア様が入浴される際も問題ありませんぞ!」
「すっごい準備が良い……」
よく見ればロイドは浴衣の内側に剣を携えているようだ。こんなときであっても抜かりがない。
襟元から覗く彼の逞しい胸板が、護衛は任せろと言っているように見えた。
「で、アインたちはどうするのだ?」
「俺たちは到着したばっかりなんで、今回は遠慮しておきます」
「むぅ……それは残念だ……」
「大丈夫ですよ。あと一週間くらいありますし、また何度でもご一緒させていただけると思いますので」
「それもそうだな。――――ではアインたちもゆっくりするといい。無論、我らも存分に休暇を楽しんでくるとしよう!」
シルヴァードは「ではな」と言い、最後にアインの肩を強く叩いて宿を出ていく。
どうやら、宿の者があんないとしてついていくようだ。先ほどアインを迎えた壮年の従業員が慌てて外に行くと、歩き出した一行と共に何処かへ去っていった。
「――――ん?」
ベンチに座っていたアインが受付をするカウンターを見ると、うきうきした様子のクリスと目があった。
隣に座るカティマもそれに気が付いたようだ。
「ほりゃ、さっさと行くニャ。嫁二号が旦那を待ってるニャろ」
「色々ツッコミどころはあるけど、二号って言い方は好きじゃないな」
「ニャらポンコツ嫁でどうかニャ」
「…………」
「何か言ったらどうかニャ」
「…………別に、ポンコツも悪いもんじゃないよ」
「ほっほー! よう言ったニャ! ちょろーっとカッコいいじゃないかニャッ!」
するとカティマがアインの背中を叩き、立ち上がるよう合図をする。
バシィン! と大きな音が響き渡り、彼女の上機嫌さを物語っているようだった。
「アイン様。申し訳ありません。後できつく折檻しておきますので」
「一か月おやつ抜きで」
「ニャニャッ!? そんなの受け入れられるわけが――――」「畏まりました」「――――ホニャアアッ!?」
愉快なやり取りを交わしたアインは笑い、歩いてクリスが待つカウンターへ向かった。そこにはクローネとオリビアも居て、三人は一様に紋様が刻まれた小さな板を手にしている。
「はい。アイン様の分です」
同じものをクリスに渡されたアインは小首を傾げた。
「お部屋の鍵なんですって。なくしたらダメですよ?」
オリビアの説明を聞いたアインは「なるほど」と頷いて板を見た。紋様と一緒に記された『302』の文字を見て、これが部屋番号だと思った。
「私たちは『303』ですから、アインのお隣の部屋ですね」
「あれ? 三人は同じ部屋なんですか?」
「そうよ。せっかくだから一緒の部屋にしませんか? ってオリビア様にお願いしたの」
「護衛の面から見ても同じお部屋だと都合が良いですからねー!」
仲睦まじく語らう三人も、先ほどのシルヴァードたちに負けじとこの環境を楽しんでいた。
「でもアインは一人でも大丈夫? 寂しくない?」
「――――そうだ。よかったら、アイン様も私たちと一緒のお部屋にしますか?」
「まぁ素敵! アインと一緒のお部屋で寝られるなんて!」
三人の美玉に強く提案されたアインは何度目か分からない苦笑いを浮かべ、「大丈夫です」と遠慮の言葉を発する。この三人にもゆっくり過ごしてほしい。自分がいれば気を遣わせてしまうと思ったのだ。
だが提案した三人は不満で、数分に渡りアインの説得を試みる。
しかしアインは一向に頷かず、誇示することを繰り返して彼女たちを諦めさせた。
「むぅ……じゃ、じゃあ、会いたくなったらお部屋に行ってもいいですか……?」
クリスの言葉も影響しているはずだ。
彼女の言葉をアインが快諾したことで、三人はそれなら――――と諦めたのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
部屋番号『302』というのは、単純に三十階の二号室と言う意味である。
随分と高層建築な宿だと思わなくもないが、オーガスト商会の最新型の宿だと思うと、あまり違和感を覚えることはなかった。
「広いなー……」
一人部屋に来たアインはその部屋の広さに感嘆した。
そうしていると、マーサがやってきて彼の荷物を部屋に置く。
「私は夫と。ディルはカティマ様と同じお部屋におりますので、何かありましたら何なりとお申し付けくださいませ」
「ん、ありがと。でもマーサさんもゆっくりしてよ」
「私は十分ゆっくりさせていただいておりますよ」
彼女は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「陛下の御希望で、お夕食は大部屋でとなっております。お時間などをこちらの紙にまとめておりますので、後程ご確認くださいませ」
「ん、りょーかい」
「それと、宿内の温泉もすべて貸し切りでございます。何時でもご利用いただけると聞いておりますよ」
「へぇー……何時でもいいんだ」
こうしている間にアインの荷物が運び終わり、マーサの仕事が終わった。
アインは彼女にもう一度礼を言い、この後はどうするのかと尋ねる。
「私はこの後、夫の下に参ります」
どうやら彼女もこの休暇を楽しんでくれるらしい。
アインは「楽しんできて」と言って彼女のことを見送った。
それからゆっくりと部屋の中を見て回る。
扉を開けると、黄白色を帯びた白木のフローリングが敷かれた居室に迎えられる。
左と右には寝室へ、そして部屋に備え付けられた温泉へつづくガラスの扉があって、中央の奥に見える大きな窓からは、ミスリス渓谷を一望できるバルコニーがある。
まずは備え付けの温泉を見に行った。
ガラス扉を開けると、そこには四角い木製の湯舟が鎮座していた。木の香りを楽しみながら湯舟を見ていると、片隅から流されるお湯の音を聞いて心が現れるような気分に浸れた。
朝、目を覚まして一番に入ると気持ちの良さそうな温泉だ。
つづけてここを離れて寝室に向かった。
中央の居室と同じフローリングが敷かれた寝室は、ベッドがいつもと違っていた。
寝室は片一方が広い小上がりで、そこに横になるような造りである。その広さはいつもアインが寝るベッドの倍はありそうだ。
天井から注がれる橙色の暖かな光りを見上げ、寝心地が良さそうな寝室だとアインは呟く。
それにしても、ベッド奥の造りが気になる。
飾りのような襖があって、珍しい造りだなーとアインを考えさせた。
――――さて、この後はどうしよう。
実は特に予定はない。誰かと約束をしているわけでもないから、強いて言うなら夕食まで暇な時間である。
それなら、せっかくだ。
「温泉いこっかな」
それは部屋に備え付けのではなく、大浴場のことだ。
アインはそれに決めると部屋を出る。カギとなっている板――――恐らく魔道具であろうそれを手にして部屋を出ると、離れた場所の扉が開かれて三人の女性が姿を見せた。
その内の一人、クローネがアイン傍に近づいた。
「どこかに行くの?」
「ああ、温泉に行ってみようと思って」
「あら、私たちもなの。良かったら一緒に入る?」
「あははっ……入らないって……」
「……残念。お二人も大丈夫って言ってたのに」
だとしてもアインが応じることはないだろう。
だが、大浴場まで一緒に行くことはできる。そこからは男女に分かれるが、これくらいなら構わなかった。
四人はそれから、共に大浴場へ向かった。
皆、入浴に必要なタオルなどは手にしていない。すべて用意されているからだ。
とりとめのない話に花を咲かせながら、四人は魔道具の昇降機に向かい下の階を目指す。聞いていた大浴場がある階層で止まると、そこは昇降機を出てすぐに二つの入り口が見えた。
当然、男女のそれだ。左側にある女湯は入り口の横に女性の像が置かれ、右側の入り口には男性の像が置かれている。
「お、来たのニャ」
と、ここでも一足先に湯を浴び終えていたカティマが居た。彼女は温泉への入り口が並んだ手前にある、サロンのようなスペースに置かれたソファの上でくつろいでいた。
「アイン、ディルが上がって来るまで暇ニャからちょっと付き合ってほしいのニャ」
「別にいいけど……」
「いや、やっぱりジュースが欲しいのニャ。部屋にサービスのジュースが置いてあるから、アインの部屋のを分けてほしいのニャ」
「なにそれ、持って来いってこと?」
「んむ!」
いつになく強引な話運びに四人は苦笑し、アインは肩をすくめる。
まぁ、カティマにも日頃世話になっていると言っても過言ではない。であれば、今日くらいその願いを聞いてやっても構わないと思った。
「ってか、部屋にそんなジュースあったっけ?」
「備え付けの温泉の傍にある魔道具に入ってるのニャ」
「……りょーかい」
「あの、アイン様。よければ私たちのお部屋から持ってきましょうか?」
「大丈夫。俺が行ってくるよ。クリスたちは寛いでおいで」
遠慮がちだったクリスの背を押して、二つのうち、左側にある女湯へとクリスを向かわせた。同じくクローネとオリビアも何か言いたそうにしていたから、彼女たちのことも背を押して温泉に向かわせる。
「ちょっと待ってて」
「うむ! 頼んだのニャ!」
アインは素直にこの場を離れて自室にとんぼ返りする。
部屋の鍵を開け、カティマに指示されたジュースを見つけるべく備え付けの温泉に向かい、そこの片隅に飲み物が淹れられた魔道具を見つける。
――――これか。
すんなり見つけられたことに喜んで、今度は大浴場にとんぼ返りだ。
貸し切りとあって昇降機はすぐに来たから、さっきから五分も経っていない。
戻って来たアインが手にしたガラスの器を見て、カティマは満面の笑みでアインを迎えた。
「アインは出来た甥なのニャ……っ! 褒めて遣わす!」
「はいはい。じゃ、俺も温泉に入ってくるから」
そう言ったアインは温泉の入り口に向かう。目印の男性の像が置いていた
「――――ふふん。油断しきってるのはアインも同じってことニャ」
ソファの上では、カティマがしてやったりとほくそ笑む。
数秒の間高笑いをしていたら、昇降機がこの階層に止まり、浴衣に身を包んだディルが降り立った。
「なんで楽しそうなんだ?」
「ふふっ。妹たちのために一仕事しただけですから、あなたはお気になさらず」
「何のことか分からないが……と、とりあえず私も湯を浴びてくるよ」
「お待ちくださいな。そちらは女湯ですから、右側の入り口からお入りください」
「こっちが女湯? 右の入り口には女性の像が立っているぞ?」
「ごめんなさい。つい数分前、私が悪戯で入れ替えていたの」
妻の含み笑いを見たディルは額に手を当て。
「誰かが間違えて入ったらどうするんだ」
小言を言い。
「ご存じですか? 間違えて入っても、相手が気にしなければ間違いではなくなるんです」
という妻の意味深な言葉を聞き、眉をひそめながら小首を傾げたのである。
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