ハロウィンSS2020『猫のアレ、再来』

 というわけで、恒例のハロウィンSSです!(フライングですが許してください)


 またいつもながらで恐れ入りますが、

 書籍版最新7巻と、コミックス3巻(予約受付中です)もどうぞよろしくお願いいたします!

 原作は冬に8巻も出ます!


 SSは例によって、細かな箇所は気にしない方向でお楽しみくださいませ!



◇ ◇ ◇ ◇




 グレイシャー大公家、次期当主ディル・グレイシャーが住まいは王都にあった。

 父であるロイド・グレイシャーとは別の住まいを構えたのも、第一王女を娶ったからであり、今は貴族が居でもひときわ目立つ屋敷を構えていた。

 城の庭園も整えた経験を持つ庭師が生み出す景観は、訪れる人々が一様に唸る仕上がりである。



 ――――その屋敷へと、二人の女性が足を運んでいた。

 一人はサファイアと銀を混ぜたような色の髪を靡かせて、もう一人は、どんな金細工も霞むであろう金糸の髪をした佳人である。



 客間の通された二人へと、屋敷の夫人が言うのだ。



「私は警戒されてるのニャ」



 と。



 それを聞いた二人は笑みを繕いきれず、唖然とした様子である。

 しかし、夫人――――カティマはつづけて言う。



「去年したことのせいなのニャ。騎士の数が多かったのも、すべてはこの私を屋敷から外に出さないためなのニャ」



 あの花火は見事だった。

 王都に花を添え、民を喜ばせた催しで会ったことは間違いない。

 しかしながら、それで許されるかは別問題なのだ。



「どうかニャ! クリスには打開策はないのかニャ!?」


「ありません。自業自得です」


「……じゃ、じゃあクローネはどうかニャッ!?」


「心苦しいのですが……私も、今年は大人しくした方がいいと思います」


「馬鹿なことを言うもんじゃないニャ! 二人を呼んだのは他でもニャい! 私を何とかして外に出してもらうためだってのにニャッ!?」



 すると、客間へとマーサが足を運ぶ。



「フニャァッ!?」



 カティマは彼女の笑みを見て身体を震わせ、ソファに置いていたクッションを抱きしめた。



「ようこそお越しくださいました、二人とも」



 普段はマーサも別の、ロイドと共に住まう屋敷に居る。

 今は仕事があるからここにいた。

 仕事内容は言うまでもなく、駄猫を警戒するためであった。



「マ、マママ……マーサ!?」


「はい、マーサでございますよ」


「私は別に何も考えてないのニャ! そんな様子を伺いに来なくてもいいと思うのニャッ!」


「とんでもない。私はカティマ様を疑ってなどおりませんよ。今はお客様が二人もいるのですから、こうしてお茶をと思い足を運んだ次第でございます」



 相も変わらず、マーサには体格のわりに迫力があった。

 彼女が番をしていればカティマは動けない……と思えなくもない。



「しかし、何やらお二人に頼まれていたようですが」


「ッ――――いやだニャ~! ほりゃ、私は二人に例のアレを託そうと思ってただけなのニャ!」



 すると、今度は来客した二人が疑問符を浮かべた。

 アレとは一体? 何を託されるというのだ?

 警戒したが、カティマがソファの裏に隠していた紙袋を渡され、二人の身体から力が抜ける。



「三人に合わせて作ってあるニャ」


「まさかカティマ様、私とクローネさんにコレを着ろっていってるんじゃ……あれ? 三人ってことはもしかして……」


「んむ、オリビアもなのニャ。ってわけで、今年はそれで我慢してやることにするニャ」



 溜息をついたクリスの横で、クローネは紙袋に入っていた服を見てクスッと微笑む。



「私は上の階でだけなら構いませんよ」



 上の階。

 これが差すのは、城における王族が住まう階層のことである。別に露出が多いわけではないが、あまり見せびらかす服装でもなかったのだ。



「はぁ……クローネさんがそう言うのでしたら仕方ありませんね。私もお付き合いいたします。でも! カティマ様が大人しくしてくれるのが条件ですよ!」


「わ、分かったのニャ……! ほんっと、信用されてないニャー」



 カティマは力なく応じて、肩をすくめた。

 やがて――――。



「今日はありがとニャ! それで城の中を賑やかにしてきてくれニャ!」



 夕方を過ぎ、そろそろ帰ると言った二人がソファを立った。



「マーサ、二人を見送って来てくれるかニャ?」


「かしこまりました。お二方、本日はご足労いただきありがとうございました。外までお送りいたします」



 去り行く三人を見送って、カティマは笑みを絶やさず手を振った。

 上機嫌に揺らしたヒゲはピンと伸びて、喜色を表していたが。



「…………ふっ、皆まだまだ甘いってことニャ」



 彼女の笑みはやがて、ニヤリとほくそ笑むように変貌した。




 ◇ ◇ ◇ ◇




『は、話が違うと思うんですっ!?』



 城内にクリスの声が響き渡ったのはこの日、夕食を取り終えたアインが自室に戻る最中のことであった。

 供をしていたディルもいつの間にか隣にいなかったし、もう訳が分からない。



「――――何が違うんだろ」



 こういうとき、大概カティマが裏で糸を引いている。

 そして、今はディルが居ない。

 彼はカティマと共謀することはないし、逆に、共謀するならアインが常であった。

 とは言え、今回は何か事情を知っていそうである。

 だからいなくなったのだろうと思いつつ、アインは声聞こえてきた自室の前へ足を進めた。



 秋と冬の間に差し掛かった夜空を見上げてから、一度苦笑いを浮かべてから。



『クローネさん! 私と交換してください!』


『えっと……採寸が違うのでさすがに……』


『で、ではオリビア様! 私の服と交換しましょう!』


『私となら身長も近いけど、私のも似たようなものよ?』


『うぅ~~……っ!』



 部屋に入っていいものか迷ってしまう。

 クローネからは夕食前に部屋に入る許可を求められていたが、まさか、許可したことでこのような状況になているとは……。

 中に入らずとも、多少の察しは付く。

 今日という日付に加え、服という言葉から答えに至るのは容易であった。



(…………)



 自分の部屋をノックするのもどうかと思うが、ここでいきなり入ることがまずいことは確実だ。

 アインが恐る恐る扉をノックしてみるも……。



(聞こえてないのかな)



 結局、静かにドアノブに手をかけ、ゆっくりと開けていく。

 まさか自室に対し、覗き込む経験をするとは思いもしなかったが、幸いにも、少し開けたところでクローネが気が付き近づいてきた。



「ご、ごめんなさい……アインが来てたことに気が付かなくて……」



 彼女に手招かれたことで部屋の中に足を踏み入れる。

 しかしそこで、アインは思わずクローネの姿に気を取られた。



「どうかしら、似合ってる?」



 背中で手を組み、身体をくの字にして見上げて来る彼女の姿が新鮮だった。

 一言で言うと猫である。

 上に着た服は長袖に加えてフードがついており、被ると猫の耳が頭の上で存在を主張する。下に履いていた服は太ももの多くが露出されていて、足元に猫の足をあしらった靴を履いていた。

 生地はどれもフワフワしていて、肌触りが良さそうだ。

 全体の色は薄い紫色で統一されており、可愛らしい。



 よく見ると、肉球をあしらった手袋まで用意されていた。

 というか、尻尾もある。

 隣に足を運んだクローネの腰元から現れた尻尾だが、何故かピンと立ってアインに引っ付いていた。

 ……猫が喜んでいると、尻尾を立てると聞いたことがある。



「この尻尾は魔道具なんですって」



 彼女はそう言うと、くるっと身体を回転させた。



「へぇー……こんな魔道具があるんだ……」


「それよりも、返事を聞かせてくれないと、さすがの私も不安になるのだけれど……」


「ごめんごめん、すごく似合ってるよ。着心地も良さそうだね。肌触りもいい感じみたいだし」


「ふふっ、ありがとう。――――今年は三人で猫の仮装をしてみたのよ」



 すると、クローネは微笑みを浮かべて手を伸ばした。

 どうやら服を触ってもいいらしい。遠慮なく触れてみると、想像通り心地良い手触りである。

 彼女は上機嫌に「にゃあにゃあ」と珍しくじゃれついてくる。

 それを見たアインはクロー猫の頭を撫でて、更に引っ付いた尻尾も軽く撫でたのだが。

 こうしているところへと……不意に。



『わ、私は用事を思い出したので帰りますねっ!』


『ちょっと、クリス!』



 ふと、寝室の方から飛び出してきた二人の美玉。



「――――アイン、様?」



 それを見たアインはつい、きょとんと立ち止ったクリスに目を奪われた。

 思えば、クロー猫が三人で仮装したと言っていた。

 同じ服装なのだろうと思っていたのだが、違ったらしい。



「…………やぁ、こんばんは」


「あ、はい……こんばん……こんばんはっ!?」



 彼女は勢いよく身体をねじって、手に持っていたシャツを使い身体を隠す。

 しかし、所詮シャツだけでは全身を隠すことは不可能なのだ。



 クリスはクロー猫と違い、服の方向性がまったく別であったのだ。



(用意したのはカティマさんだな。間違いない)



 一見すれば生地が少ないワンピースのようで、色は黒で露出が多め。

 生地はクロー猫のそれと同じでふわふわしているものの、白磁の肌にその服装はあまりにも似合っていて、何処か神々しさすら漂わせていた。

 ついでに尻尾と耳もついており、これは猫の仮装なんだということを主張して止まない。



 長い手足も、そして艶やかな金髪だって。

 クリスが持つ魅力のすべてを引き立てるがために、用意された服のようであった。



「目に毒だから、せめて上着を着てもらった方がいいかもしれないね」



 肩なんかは全部見えるし、足だって下着が見えないギリギリを攻めている。

 アインはそっと視線を外して口にしたのだが、これが逆にクリスをむっとさせた。



「め、目に毒ってなんでですか!? 見るに堪えないってことなんですか……っ!?」


「いやあの、そうじゃなくて――――」


「尻尾だって動くんですからね! 今日の私は立派な猫で――――って、あれ? 私は何を張り合っているんでしょう……?」


「俺も聞きたい感じだけど、とりあえずこうしよう」



 アインはポンコツっぷりを発揮したクリスの面前まで進み、自分が着ていた上着で肩口を覆わせた。



「これで平気?」


「へ……平気、です」


「良かった。それと遅れちゃったけど、似合ってるよ」



 はにかんだクリスはそっぽを向いてしまうが、尻尾がそれはもうピンと立っていた。

 喜んでいるのが分かったところで、アインはオリビアのことを見る。彼女もまた仮装しており、猫を意識した服に身を包んでいた。



 一目見て、オリビアの服が一番手間が掛かっていることが分かる。



 ドレスと言うにはカジュアルすぎるし、かといってワンピースでもない。

 言うなれば、中間だろうか。

 スカートは膝の上で、いつもより短めだ。上半身を包み込む服はレースがふんだんに用いられ、腕やへそ周りが透ける。

 ――――婀娜っぽさの中にも清楚さを漂わせた純白には、聖女と謳われるオリビアらしさが垣間見えていた。



「月並みですが、すごくお似合いです」


「ふふっ、ありがとうございます」



 首を軽く傾げながらの微笑みには品があり、普段目にしている駄猫とは大違い。

 尻尾をピンと立たせているのは二人と同じだが、耳がツン、ツンと動く姿が可憐であった。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 ちょっとした茶会は和やかに、三人という華に囲まれてしばらくつづいた。

 何故かアインの分まで用意されていたので、彼もまた猫の服装に身を包んでいる。



(なんで俺のだけ普通の猫なんだ……)



 別に服装そのものに文句があるわけではないのだ。

 単に、昨年のカティマと同じ服装……色違いなことが少し不満なだけなのだ。

 だが同時に、少し気になってしまう。



「アイン、どうかしたの?」


「なんでもないよ。俺も猫だなーって思っただけ」


「可愛くて素敵だと思うわ。また近いうちに着てみてね」


「…………それはどうかなー」


「いいじゃないですか。私も見たいです」


「クリスもその服を着てくれるならいいよ」



 別に下心は少しもなくて、対抗手段として口にしてみた。



「うっ……アイン様のお部屋の中だけなら頑張れると思いますが……」


「…………」



 期待していた応えじゃないし、これでは後から駄目と言えない。



「私にも見せてくださいね」



 オリビアにも言われ、逃げ場が消失した。

 まぁ、たまにならいいだろうか。アインもアインで、着心地の良さには寝間着のいいのでは? という気持ちを抱いていたのもある。



「分かっ――――」



 分かった、この返事を口にしようとしたと同時のことだ。

 アインの着ぐるみの尻尾が光って、大きな声を発したのである。



『ニャハハハハッ! 私が静かにすると思ったのかニャッ!?』


「カ、カティマさん!?」


『さーて、今年の宴もそろそろはじまるのニャ!』



 この後も尋ねてみるが、会話がかみ合うことはなかった。



(まさか、録音!?)



 魔道具に声を封じ込めているとすれば、しっくりくる。

 問題なのはうるさいことだ。

 この音量では、たとえ防音性に富んだ王城といえど声が響く。



『カティマ様ッ! いつのまにアイン様の部屋にいらっしゃったのですかッ!?』



 扉を慌ただしく叩いたマーサ。

 そして、部屋の中で頭を抱えたアイン。

 彼の傍にいる三名の女性たちは一様に苦笑して、やはりこうなってしまったか、と分かり切っていた様子で座っていた。



「別に服を見てもらえばいいし、このまま待ってようかな」



 アインは動じずにマーサを待ったのだが、彼女が来室してすぐに自体は急変してしまう。

 尻尾がマーサの来訪に合わせて揺れ、服の中に異変をもたらす。

 何と、アインの服が膨れ、まるで何か別の人間が入り込んでいたように見えたのだ。

 たとえば、カティマが隠れたような……。



「…………おいおい」



 アインを強引に仲間に引き入れるかの如き仕掛けである。

 しかし、大丈夫だ。

 これでもまだ、服を見てもらい潔白を証明すれば……。



 ――――と思ったのに、港の方から轟音が響き渡って来たのである。

 窓を見ると、巨大な花火……駄猫のドヤ顔を模した花火が放たれていた。



『アインッ! 逃げるのニャッ!』



 ふざけんな。

 膨らんだ服の中が蠢いて、マーサの目に火をともさせてしまう。



「誤解なんだ。俺は何も関与してないんだよ」


「はい、アイン様ならと信じております。とはいえ、すべての頃合いが良すぎますので、一度お話をお聞かせ願えないかと」



 なんて狡猾な仕掛けなんだ。

 花火が上がってしまった今となっては、一言「無罪です」と言っても遅すぎる。

 ……選択肢は二つだ。

 素直に尋問を受けるか、逃走を試みるかである。



「よし」



 アインは立ち上がり、仮装した三人の姿を目に焼き付ける。



「みんなすごく似合ってた。また見られる日を楽しみにしてるね」



 そう言って、バルコニーへと駆け出した。

 窓を開け、制止の声を背に受けながら外に飛び出す。

 外壁を駆け上がって、城の屋根を目指したのだ。



「待つのだアインッ!」



 窓を開け、声を掛けてきたシルヴァード。



「お爺様! 俺は無実です!」


「ほう! 幼き日からの振る舞いを思い返し、信じてもらえると思っての言葉であるな!?」


「…………今日は無罪なんです!」



 更に駆け上がること十数秒。

 屋根にたどり着くと、彼女はそこに居た。夜風を一身に浴びながら腕を組み、自慢の着ぐるみ(猫)に身を包み、仁王立ちで。



「王都に漂う静謐に一計を講じるべく。叡智を手に居た猫は暮夜に現れ、夜を照らす光をもたらすのニャ」



 何をカッコつけているんだコイツは。

 唖然として頬を引き攣らせたアインが近づく。

 屋敷に軟禁されていたはずだが、アインの服に仕込んだ装置や、花火の騒ぎに乗じて逃げ出していたのだろうか。



 アインは双眸を鋭く尖らせ、腰を低く構えて呼吸を止めた。

 絶対に逃がすまい。強い意志を以て立ち向かったのだが。



 ――――しまらない。

 そう、しまらないのだ。



 片や屋根の上に立っていた着ぐるみを着たケットシー。もう一方は背丈と体格は雄々しくも、その前身はカティマと同じ着ぐるみに身を包まれている。

 いうなれば、どちらも猫だ。

 大きな猫が屋根の上で相対しても、傍から見れば訳が分からない。



(…………もう寝たい)



 第三者がこの様子を見たらどう思うか、考えたくもない。

 途中から頬が赤くなってきたのも、寒さのせいだと思いたかった。



「さぁ、開幕なのニャッ!」



 アインが自嘲している間に一斉に花火が打ち上げられる。

 王都中から、城の裏手にある砂浜からも一斉に打ち上げられて、あっという間に王を花火で彩っていったのだ。



 特に、城の周囲から打ち上げられた花火は昨年同様に猫を模している。

 まるで、城が駄猫に占拠されたようでもあった。



「ニャーッハッハッハッハッハッ! 私の勝ち! 私の勝ちなのニャッ!」


「くそ、傍から見たらって気にしたばかりに……!」


「ここまで来たら一緒に楽しむのニャ! ふっふっふ! さぁさ――――」



 諦めて愉しもうとした。

 というか、アインも本気で止めようとしていたかと言うと言葉に詰まるのだが。

 そこで、高笑いをつづけようとしたカティマの声が途切れたのだ。



「ムムゥ!?」



 次の瞬間には一瞬で簀巻きにされたカティマが居て、彼女は金の鬣を揺らすケットシーに担がれている。



「こうなると思っておりました」



 ディルは大きく大きくため息をついて、カティマを担いだままアインに頭をさげる。



「私も今日は屋敷に帰ります。母上にも色々と伝えておきますので、ご安心ください」


「あ、うん」


「ムムニャアッ!?」


「私としましては、アイン様が積極的に止めなかったことは見ていないということに致します。最後の最後に共犯者になりそうだったようですが、実際は巻き込まれたようですから」


「…………お願いします」



 そう言って、ディルはあっという間に屋根の上を去って行った。

 微塵も遠慮しなかったディルは惚れ惚れするほど手早くて、カティマに付け入るスキを与えていなかった。

 あの姿には学ぶべき点もあるかもしれない。

 アインは花火を見上げながら、先ほどのカティマと同じく屋根に立つ。

 普段なら凛々しいはずだったのに、やはりしまらない。



「隣、いいかしら?」



 近くの窓を開け、足を運んだクロー猫。

 そして。



「危なくないところからお二人をお連れしました!」



 クリスと。



「いい景色ですね、アイン」



 オリビアの合計三人がアインの傍にやってきた。

 三人は花火を見上げて愉しんでいたが、着ぐるみを着て立つアインを見て笑う。

 しまらないが、可愛らしい。

 くすくすと笑っていると、アインが唇を尖らせて振り向くのだ。



「な、なにさ!」



 その声を聞いて、三人はもう一度笑ってしまう。

 でも、いつもは凛々しい彼のこんな姿も愛おしい。声に出さずとも同じことを考えて、三人はアインのことを座らせると、自分たちも傍に腰を下ろす。



 こうして花火を見るのも悪くない。

 カティマの行動に何だかんだと感謝して、冬に近づく空を彩る花を楽しんだのである。

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