路地裏で。

 また一時間と少しの時間が過ぎるも、マジョリカが戻ってくる気配はない。

 ただ、アインは決して暇をしていたわけではない。彼の下を訪れる常識的な商人や富豪たちと、挨拶など、接する機会が多々あったからだ。



 もう何人目か分からないが、二人の男性が近づいてくる。

 テーブルを囲んでいたアインはその姿を見て居住まいを正して、顔を向けた。



(あの人は――――)



 一人には見覚えがある。ハイム戦争当時のバードランドに足を運んだ際、七人いたはずの町長の生き残りと言っていた商人、ガーヴィだ。

 彼は当時に比べ、より老いたように見える。

 杖を携え、隣に連れ添う壮年の騎士と共にやってきて、アインの前で深々と腰を折った。



「お久しぶりでございます、殿下」



 アインがガーヴィと会話をした機会は多くない。ハイム戦争の際、バードランドに駐留したときだけだからだ。



「こちらこそ。ガーヴィ殿もお元気なようで」


「勿論でございます。わが身は殿下にお救い頂いたも同然、たかが年波に追いやられるほど柔ではございませんぞ。――――さて、護衛官殿もお久しゅうございます」



 ガーヴィがアインの隣に控えたディルに語り掛けた。

 すると、連れ添っていた騎士もまた口を開く。



「ガーヴィ殿、今は将軍閣下とお呼びしなければなりません」


「なるほど、レンドル殿の言うとおりだ。グレイシャー将軍閣下、失礼致しました」


「私は護衛官殿でも間違いありませんので、どうかお気になさらずに。レンドル殿もお久しぶりでございます」


「ええ、戦後のハイムでお会いして以来です」



 会話を聞いていたアインはきょとんとして。

 横を向いてディルを見ると、俺が知らない話? と目線を送る。

 いくら考えても耳に入れたことのない話だったから。



「レンドル殿が仰ったように、戦後、ハイムでの仕事の際にお会いしていたんです」



 こうディルが説明をした後でレンドルが膝を折る。



「お初にお目にかかります。私はレンドルと申します。ハイム戦争以前よりロックダムにて将軍としての地位に付いておりまして、グレイシャー元帥閣下にお救い頂いた者でございます」


「ああ、はじめまして。当時は俺も余裕がなくて挨拶する暇がなかったんだ。無断で国土を土足で走り回ったことは詫びたいと思っていた」


「とんでもない! 恩義を感じることこそあれど、当時のことに異を唱える者などおりません!」


「そう言ってくれると助かるよ」



 と、アインがレンドルに手を差し伸べた。

 握手をしよう、仕草からありありと伝わる思いは言わずとも。けれど、一介の将軍程度である自分にそれが許されているのだろうか。

 レンドルは迷ったが、最後にはその手をとった。

 向けられた寛大さへ応えぬことこそ、更なる無礼に当たると信じて。

 そのまま立ち上がってから、今一度頭を下げてから再度口を開く。



「こうしてご挨拶に参ることを、つい先ほどまで迷っておりました」


「えっと、どうして?」


「私はロックダム国家元首選定の儀に立候補しております。この場で殿下にご挨拶をすることは、イシュタリカにとっては歓迎できぬでしょうから」



 そうは言ったものの。



「邪推する者はいるだろうけど、俺は気にしてないよ」



 強くはっきりと言い切ったアインは頼もしく、将軍レンドルの心を虜にした。

 これで三度目だ。

 彼はもう一度頭を下げ感謝の念を露にした。



「情けなくも、私と宰相の二人ではない者が国家元首となるかと思われますが」


「レンドル殿……それを言うならば、私こそが情けない話でございます」


「ん、どうしてガーヴィ殿が情けないって?」


「殿下が疑問に思われるのも致し方ありませんな。理由を申し上げるならば、バードランドの商人が以前と比べて影響力を失ってしまった理由が私だからです」


「しかしガーヴィ殿!」



 食い気味にレンドルが言葉を投げかけるも。



「お気遣い頂けて喜ばしくもありますが、こればかりは変わりません」



 頬を悲しみに歪めながら。

 不甲斐なさに自嘲したガーヴィ。



「殿下はこのバードランドの成り立ちをご存じですか?」


「勿論、幼い頃に何度も学んだよ」


「光栄です。ではご存じかと思いますが、ここバードランドは百年以上昔、大陸中が戦火に包まれていた時代に終焉を告げた場所なのです。終戦の調印が行われ、この地だけはすべての中立であらんとするため、一度たりとも国家元首と言える者は生まれませんでした」



 アインは頷いて答えた。



「ですがまとめ役は必要です。そのため都市を町単位に区分けし、町長という形でそのまとめ役を設けたのです。しかしハイム戦争にてその均衡が一度失われた」



 ガーヴィは当時、奮闘したという。

 復興の最中、秩序ある体制を取り戻すために寝る間を惜しんで働いて、たった一人生き残った町長としての責務を果たしていたのだと。



 だが、均衡が失われたことが問題だった。

 故に――――。



(体制に、商人たちの意識に変化が訪れたのか)



 その変化を想像するのも難くなかった。復興の最中にあった商人たちが求めていたのは、町長というべきまとめ役では無かったのだろう。



 ようは明確な強者。

 それも、商人としての力に長けている者を欲していた。

 とは言え、元来、バードランドの町長というのは力ある商人たちが選定されてきた歴史がある。ただ問題なのはハイム戦争における傷跡の深さであり……。



「勢いと若さは金に劣らぬ価値がございます。新たな時代を欲した者たちにとって、黄金航路は救世主のような存在だったのでしょう」



 たとえば宮中における王位争いにように。

 このガーヴィという男は求心力を失い、権力闘争に敗北した貴族と同じような立場へと成り下がってしまったのだと。

 彼は今のバードランドが生まれてしまったのは、そのためなのだと口にした。



「とは言えこの町が栄えている事実に文句はございません。ベイオルフの手腕も認めこそすれば、一つだけ懸念している事実があるだけなのです」



 先ほど自分が情けないと言った理由へと戻るのだ。



「それがロックダム国家元首選定の件だと?」


「仰る通りです。今の私が何を言おうと所詮は負け犬の遠吠え。戦後、新たに選定された町長らと私には文句を言える筋合いもございません。ですのでこれは、老躯が漏らす警鐘とでも思って頂ければ」


「教えてください。ガーヴィ殿が懸念なさっている理由はいったい」


「…………時代背景もさることながら。バードランドだけは中立であらねばならんのです」



 耳にしたアインは「やっぱり」と短く言う。

 それからすぐに頷いて、老いたガーヴィと視線を交わす。



「バードランドで大きな影響力を持つあの男が選ばれたとき。その瞬間から大陸の均衡が失われると言っても過言ではございません」



 するとレンドルが。



「私としても、ロックダムが栄えるのであれば文句はないのです。しかしベイオルフは強硬的な一面もあり、彼がもたらす変化に皆が付いてこられるのかを私は危惧しておりました」


「ふむ、現宰相殿の件もですな」


「その通りでして……殿下、ここだけの話です。私と共に国家元首に立候補している宰相ですが、彼はもはやベイオルフと戦う気力がないのです。――――いえ、意図的に刃を収めたというべきでしょう」


「つまり手を組んだって?」


「分かりません。ただ――――」



 宰相とレンドルの二人は多くの支持を集めていたそうだ。

 状況に変化が訪れたのはベイオルフが立候補をした少し後で、時期を同じくして宰相は鳴りを潜めるかの如く勢いを失い、傍から見れば諦めているようにも思われる様子であるという。

 今では、義務感に駆られるように、怠惰に活動しているだけであるとのこと。



「マダムがいれば」



 ガーヴィが思わず漏らした言葉。

 ん? と、アインが眉を吊り上げた。



「あのお方は陸運の覇者と謳われたグラーフ殿が一度たりとも土を付けられず、幾度と交わされた金の刃による戦いにおいて不敗の女傑です。……戦後、何度も手紙を送ったのですが、いずれもご助力は断られてしまいました」



 しかし疑問である。



 相手は黄金航路、ベイオルフという男である。

 果たして名高きマダムと言えど相手になるのかと。

 アインがこう考えてしまうのは耳にしたマダムの情報による。彼女は息子のベイオルフとの権力闘争に敗北し、商会を乗っ取られるような形で追い出されたと聞いている。

 であれば、彼女が居たところで相手になったのだろうか。



(いや、影響力はあるか)



 ならば今のような状況には陥っていなかったかもしれない。

 こう考れば、頼るべき筋であるとも思えたのだった――――。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 パーティ会場ではグラーフと会えなかった。

 彼もこちらの知り合いと会うことに忙しく、また、彼なりに情報収集にあたっていたこともありそんな暇がなかったのだ。

 マジョリカもまた、アインが会場を去るときはまだベイオルフとの対談中。

 結局、ガーヴィとレンドルの二人と話をしてからは、早い段階で宿への帰路についた。



 ――――翌朝、とある商会の建物の外にて。

 建物を出たばかりの者たちが今、馬車へ戻ろうとしていたところ。



「いい土地が買えましたね」



 そう言ったアインの視線の先では、満足げにヒゲをさすったグラーフの姿がある。

 彼の手元には丸められた羊皮紙が握られており、これは権利書だ。ここバードランドの一等地、売りに出ていた大きな土地のもので、相応に費用が掛かっている。



「国土は力。それは我ら商人にとっても同じことですからな。このためにわざわざ馬車を何台も連れてきておりました」


「もう、お爺様ったら……」



 同行していた孫娘のため息交じりの声を聞き、グラーフは得意げに。



「クローネよ、そう呆れた顔をするでない。受付の男の顔を見たであろう? 私を見てすぐ驚いておきながら、すぐに見せたあの物憂いげな顔を。儂をオーガスト商会のグラーフと知って驚いてから、好ましく思っていない相手と分かり渋ったのだ。どうせこうなると考えて金を積んだのだぞ!」


「それにしても、良くあんな土地を売りに出してましたね」


「はっはっはっはっ! 殿下、あれは奴らが油断していたからですぞ!」


「油断?」


「儂が手にした土地は大通りに面した一等地。それも周辺の建物がそびえ立つ土地と比べても広く、黄金航路が欲しているのは明白でした。先ほどの商会は黄金航路と関係のないことは調べがついておりますが、奴らが黄金航路と縁を結ぶに最高の土地でしたな」


「ようは客寄せに飾ってたってことか。貢物を飾るのも趣味が悪いけどね」


「ですな。恐らく儂が払った金額より割り引いて、黄金航路へ売りさばこうと考えていたのでしょう」



 今回の購入にはグラーフも少しだけ策を弄した。

 一つは時間で、今は昼下がりの客が多い時間帯である。

 もう一つは彼曰く、商人の性質を利用することで。

 最後に現金即決をして、その場でサインをすることだった。



「儂の他に客が居たことが重要ですぞ。特に客は付いておらず特記すべき条件もない。そこで提示した金額で売らぬのもまた一つの道でしょう。だが、先ほどの商会は評判を選んだ。客に品を売らぬ商人に価値がなければ、似た商品を売る商会があれば、客は別の商会へと足を向けるでしょうからな」


「で、畳み掛けるように現金即決ってわけですか」


「会長である儂がサインをすれば、もはや逃げ場はございませんからな」



 故に満足そうな顔をしていた。

 土地の権利書でお手玉でもしてしまいそうなほど、今の彼は上機嫌で気持ちが良さそう。

 しかし、不意に背後から聞こえてきた声に立ち止る。



「お待ちください! グラーフ殿ッ!」



 振り向いた三人の視界に映ったのは壮年の男だ。

 豪奢なマントを翻して、息を切らして駆け寄ってくるではないか。



「どうされた。土地の件であれば」


「そ、そうではございません……ッ! 私は当商会の会長を務めている者でして――――」



 そう言って男が名刺を取り出し、グラーフに手渡した。



「どうせ儂に口添えを求めているのだろう? やはりあの土地は売り物では無かったのだな」


「…………いやはや」


「どうせ裏では黄金航路と商談でもしていたのだろうが、それでも商品を下げなかったお主らの不備。この儂が協力してやる理由はないのだが」


「そこを何とか、我らとしても死活問題でありまして」


「死活問題であればなぜ下げなかったのだ」


「それは…………あの土地を買えるような商会に心当たりはなく……まさかこのような時期に、それもグラーフ殿のような方が直々にいらっしゃるとは少しも――――」



 客寄せに欲をかきすぎたのだ。

 相手の商人も決して馬鹿ではない、グラーフはそう考えている。

 海を渡った先にある大陸、その地で名を馳せるオーガスト商会がわざわざ大枚をはたいてバードランドに拠点を構える必要は多くない。

 あったとしても、払う資金は今日ほど多くなくてよかった。

 どんな商人であろうとそう考えるはずで、相手の男が油断したのも無理はない。



 グラーフはそっとアインを見て、彼と目配せを交わす。



「数分ならば時間をとろう。実りあらば後程、儂が泊まる宿で話をしてもかまわんが」


「助かります!」


「さて、いくらまけてくれるのであろうな。土地はどうせ仲介であろう? お主らが得るはずであった手数料から幾分かは差し引いてくれると期待しておるのだが」


「はは……さすがは陸運の覇者ですな……できうる限り、勉強させて頂ければと存じます」


「結構だ。申し訳ありません、殿下。今少しお待たせしてしまいますが……」


「大丈夫ですよ。付いて来たいって言ったのは俺ですから、馬車でクローネと待ってます」



 そう言って、アインはグラーフから離れて馬車へ向かう。

 馬車の外で待っていたクリスがお帰りなさい、と声を掛けた。



「ただいま。何かあった?」


「お帰りなさい。こっちは静かなものでしたよ」



 ディルとマルコもいるし、他に騎士もいるのだ。他にもそうした富豪の姿はあるが、中でもアインが乗る馬車は目を引いていただろう。



「お店の方はどうでしたか?」


「やっぱりグラーフさんはすごいんだなって思った。豪快な買い物を見てきたよ」


「あははっ、イシュタリカでも頭角を現すような方ですもんね」


「そういうこと。取りあえずちょっと待つことになったんだけど……あれ」



 馬車に乗り込もうと、縁に足を掛けたその刹那。

 すぐ傍の路地に目を向けると、車体が傾いて停車した馬車があった。



「何かあったのかな」



 事故でもあったのかと思い気になった。

 目を細めると、一人の老女が馬車の傍で腕を組み、老戦士が車輪の傍でかがんで整備をしている姿が見えた。

 乗っていたのが老女とあり、手を貸したい気持ちに駆られる。



 すぐ傍だし、時間を持て余している。

 だからディルも駄目とは言わず、歩き出したアインの隣に控えた。



「大丈夫ですか?」



 声を掛けると老女と老戦士が振り向いた。



「……お恥ずかしい限りだが、車輪が破損したようでな」


「久しぶりに外出したらこうなるんだから、やっぱり家に引きこもるべきよね。まったく、パーティだって一日間違えて来ちゃったし、とんだ災難だわ」


「その間違いの原因は誰だったか」


「仕方ないじゃない。屋敷に引きこもってるんだから、曜日感覚が無いのよ」



 妙に豪快な会話が繰り広げられる横で。

 アインは頬を引き攣らせながらも車輪に近寄った。

 どうやら、車輪が割れているだけのよう。



「直します」


「しかし替えの車輪がなくば」


「気にしないでください、すぐに直しますから」



 するとアインは車輪に手をかざし、ドライアドの力を使い木の根を生んだ。

 車輪に纏わりつくと、瞬く間に修復していく。



「あっららー……すごいじゃない」



 老女がそう言って革袋を取り出すと、アインに何かを手渡す。



「飴あげるわ」


「……あ、どうも」



 お礼のつもりだろうか。

 車輪を直した礼が飴というのもどうかと思ったディルだが、老戦士も同じことを考えていたようで申し訳なさそう。

 頭を抱え、立ちあがったところで老女へ。



「それでは礼にならない」


「そうねぇー、癖みたいなものよ、癖。とりあえず坊ちゃん、お礼がしたいから連絡先とか教えて頂けるかしら」


「別にいいですって。飴、貰いましたし」


「あら? いい子じゃないの、飴の重要性を理解してるなんて将来有望ね」


「彼は気を遣ってくれてるだけだ」


「でもいい子じゃない。とはいえお礼が飴だけってのも私の気が済まないのよね」



 別に本当に礼なんてよかったのに。

 ただ偶然出会っただけで、何の気なしに使った力で車輪を直しただけ。少しも疲れてないし、時間を持て余していたからこそ足を運べただけでもある。

 どう断ろうか。

 迷っていたところへ、後ろから聞こえてきたグラーフの声。



「殿下、お待たせいたし……ま……」



 すると彼は老女と老戦士を見て立ち止り、目を見開いた。

 驚きのあまり、やがて言葉を失ってしまう。



「これは驚いたな、こんなところで会うことになるとは」



 老戦士は驚いていたが、グラーフと違い言葉を紡ぐ。

 つづけて。



「グラーフじゃないのよ。あんたちょっと待ってなさいな、私、この子と飴の重要性について語り合おうとしていたところなの」


「え」


「そうよね、坊ちゃん」


「いや……だから……え? 飴の重要性?」


「というわけなの、だからグラーフは少し待ってなさい」



 つい、二度も「え」と口にしたアインは戸惑った。護衛をしていたディルもそうだ。

 老女が口にした脈絡のない言葉に対して。

 そして、老女がグラーフの名を平然と口にしたことにもだ。



「甘いものって頭を働かせるのに大切なのよ。だから私は部下に飴を配ってたってわけね。昔、グラーフを弟子に取ったときだってたくさん飴を舐めさせたもんよ。そうよね?」


「その通りですが……マダム、、、、どうして貴女がここに……ッ!?」


「細かいことばっかり気にしてうっさいわねぇ、だから老いるのよ。あーもうほら、あんたにも飴あげるから大人しく舐めてなさいな」



 彼女がマダム? 急な事態で驚いたアインがディルと顔を見合わせる。

 そうしていると、マダムがグラーフに向けて飴を放り投げた。彼は器用に飴を受け取ると、古き記憶に従うように、自然と口に運んでしまう。

 甘さの中にスッとした清涼感が漂い、郷愁の念が心をよぎった。



「私が言いたいのは飴とお礼は重要ってこと。そうよね?」


「関連性は不明だが内容は間違えていないな」



 老戦士の返事を聞いた老女が満足した様子で。



「なら結構。だから坊ちゃんには連絡先を…………あら、あららら……?」



 マダムは途中から眉をひそめ、腕を組んだ。

 不思議そうに。何か見落とした様子で考え込むと、最後にはグラーフを視界に写す。

 十数秒、彼女はそのまま動きを止めた。



なんか変よねぇ」



 やがてハッとして。

 大きく目を見開くとグラーフの顔を見て大口を開け。

 唐突に驚きの声を上げるのだ。



「ッ――――微妙に不出来だった弟子じゃない!? グラーフあんた! いつの間に来てたのよッ!?」



 つい数秒前までのやりとりはなんだったんだとツッコみたくなる大袈裟な態度で、マダムの驚愕した声が路地裏に木霊した。


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