イシュタリカという国
「えーっと。足、辛くない?」
若干の気恥ずかしさを隠すためにクローネを気遣う。
先程頑張っていった一言とは打って変わって、意気地がない言葉だったが仕方がない。
「……はぁ。いいえ別に大丈夫よ、そんなに長くしてなかったから」
「そ、そっか。うんならよかった」
それでも完全に恥ずかしいのを隠せたわけではない為、アインとしてはまだ少し戸惑っている。
そう思っていると、なにやら周囲から見られているように感じた。
「あれ?なんか俺たち見られてる?」
「そりゃこんな所でこんな事してるんだから当たり前でしょ?」
「確かにそうだ」
港の桟橋。それも大型船が停泊する場所であったため、主に騎士や船に関わる仕事をしている人間しか通らない。
そんなところで膝枕をしていれば目立つのも当然だった。アインが一人で昼寝をしていた時は対して目立たなかったものの、今ではまた別の話だ。
「無事に到着できたみたいで安心した」
「ええ、ありがとう。貴方が元気で私も安心したわ」
「昨日の遅い時間に出発したの?」
「えぇそうよ。本当に速いのねイシュタリカの船って、貴方はもっと速いのに乗っていたと聞いて驚いたけど」
「俺も同じことを思ってたよ。今でも新しいことばっかり」
彼らが話をしていたのは、一夜限りの短い時間だった。だがそんなことは全く関係ないと感じる程、二人は自然体でいることができた。ただ少しの緊張が心の中に存在しているだけだった。
「……王族って聞いて驚いたわ」
「俺も急に教えられて驚いたよ」
「別の大陸に行ったなんて聞いて、もう話せないと思った」
「でも今は話せてる」
話したいことなんていくらでもあった。だが話せる状況になっては、急に言葉が出てこない。
「ねぇその腕の宝石、プレゼントか何かで貰ったの?」
「王族を守るための物って言ってた。ウォーレンさんから貰ったんだよ」
「……そう、なら別にいいわ」
別にいいと言いながら髪をかき分けたクローネ。その腕で光るスタークリスタルを見て、アインは嬉しさを滲ませる。
「膝枕ありがとう。おかげで気持ちよく寝られたみたい」
「ふふ、それは何よりです」
若干の名残惜しさはあったものの、周囲からの注目を多少集めている現状。起きないわけにもいかなかったため、クローネに礼を言って体を起こす。
固い所で昼寝をしていたからか、体も少しだけ強張っているようだ。
「ねぇこんなところで昼寝する王族って、どう思う?」
「先行きが少し不安って思うかもしれないわね」
「だよね。まぁ今度からは控えることにする、あれ?そういえばクローネ一人だけ?」
自分に膝枕をしてくれたことに感謝をしていたアインだが、クローネが一人でいることを不思議に思った。
一人で海を渡ったのか?と考えるとクローネならやりかねないと感じたものの、現実味はない。
「お爺様とアルフレッド、ええと……護衛とか給仕が何人か一緒に来てるわ。ほらあそこ」
そしてクローネはウォーレン達のほうを見る。アインもそれに倣って同じ方向を見ると、そこにはウォーレンとクリスの傍に身なりの良い老人が居た。
「あの人がアウグスト大公か。ハイムの重鎮だけあって貫禄ある人だね」
「前・大公よ。もうお父様に当主を譲ってきたから」
「あー……イシュタリカに来るから、そういうのも必要か」
「必要な手続きはもうすぐ終わるからって、私だけ海を見てきていいって言われたのよ。それで桟橋に来たら貴方が昼寝をしてたってこと」
「なるほど。ウォーレンさんの差し金だったわけだ」
アインも納得した。都合よくクローネが自分のそばに来ていたことが不思議に思えていた。
「そうね。でもおかげで貴方と再会できたわ、ウォーレン様はもう一つ確かめていたのでしょうけど」
「どういうこと?」
「私が貴方に本当に害を成さないか。でもおかげで違うって分かってくれたでしょうから、私としても有難いわ」
「あーなるほど……」
結果的にウォーレンの見立ては正しく、問題はなかった。
クリスとしてはもう少し慎重にしたいという気持ちは否定できなかったが。
「オリビア様はお元気かしら」
「毎日のようにお婆様。王妃様とお茶したり楽しんでるよ、きっとクローネも今度呼ばれるだろうから一緒にお茶飲んであげてよ」
「私が妃殿下とオリビア様の二人と一緒にお茶……?」
「あ。あっちも話終わったみたい」
王妃ララルアとの茶の席に呼ばれるかもしれないと言われたクローネ、そんなことを急に言われて戸惑ってしまったが、そんな戸惑いを意にも介さず、アインは向かってきたクリスたちを見る。
「はぁもう少し気にしてよ。……アイン?こんなとこで寝てたからよ、せっかくの服が汚れちゃってるじゃない」
クローネはそう言ってアインの背中をぽんぽんと叩いてゴミを落とす。また気恥ずかしくなってしまったアインだが、感謝は忘れない。
「ご、ごめんありがと。いやあなんかお世話になりっぱなしだね俺」
「いいわよこれぐらい。はい綺麗になりました」
クローネと言えば、すでに自分についていた埃は既に綺麗に取り除いていた。
「アイン様。ご休憩は如何でしたか?」
「ウォーレンさんが仕事が良く出来る人なのを、再度確認することができました」
「それは何よりです」
アイン達の元を訪れたウォーレン。その後ろにはクリスにグラーフ、そしてアルフレッドが控えていた。
とりあえずウォーレンのした仕事を褒めておくことにしたアイン。
「アイン様。今日だけですからねこんな場所で昼寝だなんて」
続けてクリスが小言を口にする。昼寝することを見逃していたクリスとしても、念のための注意はしておいた。
「つい陽気に負けてしまいました。分かってますよ、今日は見逃していただけて感謝してます」
そんな会話をしているうちに、クローネはアインの元を離れ祖父のグラーフの隣に行く。
ウォーレン達が来た中で、アインの隣に立つ事が不敬と思われないようにとの考えだった。
膝枕を見られていた身としては今更感が強かったが。
「アイン様。ご紹介致します。こちらグラーフ・アウグスト様、クローネ嬢のお爺様で前・アウグスト大公でございます」
「お初にお目にかかります。私はグラーフ・アウグスト。つい先日までアウグスト家の当主を務めておりました。
イシュタリカの王族であるアイン様に、拝謁する機会を頂けたことを嬉しく思います」
グラーフからのアインへの挨拶。
正直グラーフのような目上であり、数多くの修羅場を潜り抜けて来た人からこう接されると、アインとしてもあまり居心地はよくない。
「お久しぶりでございます、アイン様。アイン様とまたお会いできた今日この日を、何よりも嬉しく思います。この度は私、クローネの不躾な申し出を受け入れてくださり感謝に堪えません」
続けてクローネが畏まった挨拶をした。アインという王族やウォーレン達と言った重鎮を前にしては、居住まいを正す必要があると考えていた。
「初めましてグラーフ殿。名高きアウグスト家の前当主とこうして話せることを嬉しく思います。長旅ご苦労様でした。本日はまだお忙しいかと思いますが、その後は是非ゆっくりとイシュタリカをお楽しみいただければと思います」
すでに王家の一員であるアインとしては、グラーフ相手だろうと様とつけることはよいことではない。
そのため敬称は"殿"とつけることにし、お疲れさまではなくご苦労様と口にした。そのあとの言葉は角が立たないセリフで茶を濁した。
「あと……クローネ。今更過ぎる気がするけど」
「くく、くくくっ……」
彼女が丁寧にふるまったこと、その理由を考えると納得できたアインだが。
それでも今更感が強すぎてついツッコミを入れてしまう。そのアインを見てウォーレンも笑いを必死に耐えているようだ。
「ア、アイン様。さすがにそのお言葉はクローネ様がお可哀そうでは……」
「え。だってさっき俺もう膝枕までしてもらってましたし、なんかこうして丁寧にされると少しの寂しさもあるというか」
クローネの気遣いや努力を無に帰してしまったアインを見て、クリスもフォローをしてしまう。
「さすがはアイン様だ、全く愉快ですな。さてアイン様、本日のご視察は終了ですので予定通りクリス殿を護衛に市場を見に行ってくださっても結構ですよ。私はもう少ししなければならないことや打ち合わせがあるので、グラーフ殿とそちらのほうを続けます」
「わかりました。じゃあえっと……」
今日のするべきことは終わったと言われ、アインとしてはオリビアへの土産を見に行く予定に移るつもりだった。
そのウォーレンはグラーフたちとまだ打ち合わせをするらしく、席は外せない。
クローネはどうするのだろうか?と思ったアインは、クローネのほうをチラッと見た後ウォーレンへと視線を戻した。
「クローネ嬢も、もしよろしければアイン様の御伴をしていただけますか?アイン様もより一層お楽しみいただけるかと思います」
「畏まりました。アイン様、私が伴をすることをお許し頂けますか?」
「え、うん……こちらこそお願いします」
先程のアインの言葉を受けて特別不機嫌になっているわけではないが。全くの緊張感を持たないアインに虚を突かれクローネは、そのままの話し方でアインに問いかけた。
「ウォーレン殿。私の執事のアルフレッドも伴に如何かな。クローネが何か迷惑をかけないかとも心配ですし、何よりアイン様の市場観覧のお手伝いもできましょう」
そして後ろにいたアルフレッドはアインのほうを向いて頭を下げる。
その所作はイシュタリカの給仕たちに見慣れたアインですら、洗練されたものを感じる見事なものだった。
「ふむ。仰る通りの方のようだ、ではアルフレッド殿。お願いしてもよいかな?」
「勿論でございます。お初にお目にかかりますアイン様。私はアルフレッド、グラーフ様が小さき時よりアウグスト家にお仕えして参りました。御伴をする栄誉を頂戴したこと、心より光栄に思います」
「初めましてアルフレッドさん。お世話になります」
アルフレッドが加わり、4人となる。
アインはその4人で港町マグナの市場を見に行くことにした。
*
「クローネを気遣ってくださったこと、感謝するばかりです」
「私の立場からすると、どちらかというとアイン様のためですな。あんなにもお喜びになっているアイン様を見てしまったのですから」
アインがクローネ達と市場に向かってから、ウォーレンとグラーフは話の続きをしていた。
「聞いていたよりも数段魅力的な方。そう思いました」
「それは何よりです。我々イシュタリカの宝ですからな」
グラーフとアインは初対面だ。
初対面だったものの、グラーフからみてもクローネがアインを気に入った理由が良く理解できた。
「さてグラーフ殿。いくつか質問があるとか」
「おおそうであった。ではまず一つ。この港町で宿を取らねばならないので、もしよろしければ紹介いただけないかと」
「……ん?宿ですか?それは必要ありませんからご安心を」
グラーフは住む場所の用意をしなければと考えていたが、まずはしばらく宿に泊まってからと思っていた。
王都へと移り家を探す必要があったが、まず初日はここ港町で宿泊の予定だった。
「必要ないとは一体?何処かここの施設を貸していただけるとかですかな?」
「いえいえ。さすがにここには貴族向けの宿泊施設は……ない訳ではありませんが、王族向けの部屋しかございません。すでに王都にて用意してございますのでご安心を」
「なんと。それはありがたい、してその宿の費用はどの程度で?宝石などを換金した後にお支払いしたいのだが」
「皆様方は城の客間に滞在して頂きます。なので特に支払いは必要ありませんな」
ウォーレンとしては決して監視のつもりで城に泊める予定ではなかった。
第二王女のオリビアが、クローネとゆっくりと話をしたいということからこれを望んだのだ。
「……まさかイシュタリカの王城へと、足を踏み入れる栄誉を頂けるとは」
「姫様が望まれたことです。クローネ嬢とゆっくり話をしたいとのご希望ですので、是非クローネ嬢に姫様のお相手をして頂ければと」
「クローネも喜ぶでしょうな。第二王女殿下に憧れているもので」
「それはよいことだ。姫様としては本日のご夕食も共にとのことですので、そのつもりでいてくださればと」
「……む?それは儂もですかな?」
クローネだけならまだ理解できた。アウグスト邸でもクローネとオリビアは会話をしていたし、クローネの憧れの女性がオリビアだったからだ。
「はい。グラーフ殿もご一緒にとのお言葉です」
そんな中自分までと言われて若干驚く。とはいえ感謝の言葉を伝える機会を頂戴したことは、グラーフにとってはありがたいことに違いは無い。
「それはそれは……ではその場で直接礼をさせていただくとしよう」
*
その後、アイン一行は市場を楽しみ多くの海鮮を購入した。
頃合いを見計らい、市場に出かけたアイン一行とウォーレン達が合流し、水列車に乗り王都へと向かった。
帰りの水列車の中、アインとクローネは別々の車両だったものの、二人とも水列車に乗ってすぐ寝付いてしまった。アインは視察や市場の見学、クローネは長旅と市場の見学で二人とも体力を使っていたためだ。
王都近くになって目を覚ましたクローネは後悔する。水列車での王都への道のりを楽しもうと考えたにも関わらず、すぐに寝付いてしまったことを。
だが王都近くからの光景も、彼女にとっては随分と刺激的な光景に映っていた。
夕方を過ぎてだんだんと暗くなってきた景色の中、王都は数多くの光が灯っていて美しく見える。
王都の大きさを見て気持ちが躍る。あんなにも巨大な都があるのかと思った。
近づくにつれてさらに大きさを増してくる王都キングスランド。ハイムの王都に住んでいたクローネだったが、同じ王都でもこうまで違うのかと驚きを隠し切れない。
「お爺様」
「ん?起きたのかクローネ。市場は随分と楽しかったようだな」
「えぇ。今までに無い程楽しむことが出来ました」
アインは気にしていない様子だったものの、クリスがそばにいたことからクローネは丁寧な態度のままだった。
だがまた会いたいと思っていたアインとの町歩きは、それでも格別だった。
「見えるだろうクローネ。イシュタリカ最大の都市、王都キングスランドが」
「えぇよく見えます。あんなにも美しく大きな都があったのですね」
「イシュタリカという国の象徴だ。昼間の港町でも驚きの連続だったが、王都ともなればそれを超える衝撃を与えてくる」
「お爺様。一つ、考えたことを口にしてもよいでしょうか」
「是非聞かせてくれ」
「ラウンドハートは、とんでもないことを仕出かしたのですね」
クローネは額に少しの汗を浮かべてこれを口にした。
乗った船や港を見ても感じていたが、イシュタリカの王都という絶対的な存在を目の当たりにして、その気持ちは確固たるものとなった。
「お爺様がオリビア様たちのことを口にしたとき、怯えるように汗を浮かべていた理由がよくわかりました。この国は何があっても敵対してはならない存在です」
「……あぁ、そうだろうな」
「イシュタリカの初代陛下のお言葉は耳にしました。今でもその言葉を守り続けてくれるイシュタリカに感謝すべきですね」
「今だから口にできるが、ハイム王家の処罰は甘いにも程があるのだ。ラウンドハート家の者達の首を送る、本来であればこれぐらいはしなければならないだろう。王家はイシュタリカの決まりに甘えたと言えるからな」
「ラウンドハートはハイムの軍にとっての重鎮、だからこその甘い処置であったと否定できませんもの」
「とはいえ、だ。儂は今安堵している、我々を受け入れてくれたことをだ。何があろうともクローネを守ることはできることがわかったからな」
このままいけば自分の家族は守れる。そう思ったグラーフは少し安堵していた。
これから何があるかわからないが、それでも最初の問題であったウォーレンとの会話はクリアできた。それがグラーフに大きな安心を与えている。
「それにしてもすごい乗り物ですね。とても速いのに揺れないで、こんなにもいい椅子に座れるだなんて」
クローネ達が乗っている車両はアイン達と同様、貴族向けの車両だ。
貴族向けの車両は個室の形となっているため、他に乗客はいない。
「まったくだ。これほどの乗り物が民生用として稼働しているのだから、驚くばかりだ」
「っお爺様!この列車はこのまま王都に入るのですか?速度が全く落ちませんが」
「あぁそうだクローネ。このまま水列車専用の道を通りながら、王都にある駅という停泊所へと向かう」
城壁近くになってきても速度が落ちないことに、クローネは不思議に思っていた。
普段は見ることのないクローネの年相応の姿に、グラーフとしてもイシュタリカへと来てよかったと考えさせる。
そして皆が乗った水列車は、無事王都へと入り込み、ホワイトローズを目指し進む。
「王都に入ってもすぐには止まらないのですね。こんなに走ってもまだ端が見えないだなんて」
「イシュタリカは王都の中であろうともこの水列車を使う。それほどまでに広いのだ」
「すごい。綺麗な建物がたくさん……」
「——ハイムが勝てていたことといえば、国の重鎮の馬鹿さ加減ぐらいだろうな」
ボソッとグラーフは自虐するが、それも仕方のないことだった。
そんな自虐を口にしているうちに、列車はホワイトローズ駅に到着する。
「こ、こんなにたくさんの水列車が」
「イシュタリカでも有数の巨大駅であるとのことだ。こんなにも水列車が多いのもそのためだろう」
「それに人があんなにたくさん。全員が水列車を利用しているのでしょうか」
「ここは駅だからな、もちろん水列車を使う者達が来るはずだ」
何から何まで新鮮なクローネにとって、巨大な駅というだけでも興味を抱くというのに、この人だかりだ。
こんなにも人が集まることなんて、ハイムの王都であろうとも年に数回程度だった。
そして列車が完全に停車した後、コンコンとドアが叩かれる。
「ウォーレン殿ですかな?」
「失礼します。到着致しました、どうでしたかな王都までの旅は?」
ウォーレンがグラーフとクローネを呼びに来る。
「数十年前とは何もかもが違う。それに驚くばかりでしたな」
「私は王都に近づくまで眠ってしまいました。ですが目覚めた後、近くから見る王都は今まで見たことのない景色で、今でもこの感動を抑えきれませんわ」
「アイン様と同じですな。アイン様もしばらく休んでいたご様子でした。とはいえお楽しみ頂けたようで私も嬉しく思います」
アインも寝ていたと聞いて、アインも楽しんでくれたのかな?とクローネは想像していた。
「では参りましょう。今日は馬車を用意してありますので、駅を出ましたらそちらに乗って頂きます。アイン様とクリス殿は先に城に向かっておりますので、我々も追って参ると致しましょう」
グラーフたちの持ってきた荷物は貨物専用車両により持ち込まれている。
それは後程城へと届けられることになっていた。
そのためグラーフたちは簡単な手荷物だけを持ってウォーレンの案内に着いていく。
アルフレッド達、グラーフの連れて来た者達も別の馬車に乗って城へと向かうこととなった。
「ウォーレン様。一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「どうしましたかなクローネ嬢」
「このホワイトローズという駅は、いつもこんなに混み合っているのでしょうか?」
「今日は空いておりますよ、学園も無い日ですから。ただ学園がある日の朝となりますと、これの10倍は覚悟して頂くこととなります」
「10倍、ですか?すでにこれほどの人数がいるのに、それが10倍……」
クローネは衝撃を覚えた。
これでもハイムにいた頃ならば、年に数回のイベント程度だった。それが10倍にも膨らむことがあると言われ、どれぐらいの人が歩くのかと想像ができない。
「さぁ参りましょう。馬車までご案内致します」
繁栄し成長を続けてきたイシュタリカ。
その王都の規模はまさにイシュタリカの強さを表していた。
ここまで来たら次は城だ。
自分が向かう城はどれほどの凄さなのか、クローネはそれを楽しみにしていた。
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